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lunatrium/carmen forum

管理人・シュウの詩置き場です。投稿は自由です。
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時折、共通のお題に沿って詩作を試みるキャンペーンを行ないます。
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※時折背景色を変えて催しをするために、字が潰れている箇所があります。
お手数ですがそれと思しき作品は、反転をした上でご覧ください。

Triste / シュウ
悲しいことを言って
酷い死体のこと
使われない避妊具のこと
音楽でかき消せないほど
ここに敷き詰めて
泳ぐ練習をしよう

退屈は一番いけない
みどり児に一番良くない
それなら涙の方がまだいい
悲しい方がまだ楽しい

骰子の目が踊りを作って
いくつも何かが始まっていく
悲しいことを言って
花が枯れた日のこと
星座が欠けた日のこと
悲しくても信じられるはず
生まれることは美しいということ
No.851 - 2011/07/27(Wed) 21:03:45

解説 / シュウ
これも睡魔と闘いながら書いたものですが、割と好きな詩です。二段落目が投げやりな割に整っていたりとか。

「使われない避妊具のこと」というのはアフリカ支援の問題でたまに槍玉に上がるアレです。
日本独特なのかは知りませんが、「アフリカの子どもたちに比べてお前等は恵まれてるんだから、好き嫌いするな/勉強しろ/現状に感謝しろ」みたいな教育は、ぼくは大嫌いだし無意味だと思います。
福祉の充実や死に瀕していないことへの感謝は必要だと思いますが、自分たち独自の恐怖や苦悩を度外視して、かけ離れた生活を想うのはナンセンスです。自分たちの持ち物と結びつけて想像力を使わなければ、《恵まれない人たち》を想ったことにはならない。苦しいのを無理に忘れて「自分は幸せだ」と本気で思えるなどと、信じられるもんでしょうか?

「酷い死体のこと」にもモデルがありますが、本当に胸が悪くなるほど残酷なので言及はしないでおきます。

「骰子の目が踊りを作って」は、想田監督が書かれた『なぜ僕はドキュメンタリーを撮るのか』で知ったマース・カニングハムのことです。小説など書きながら、ぼくはやはり偶発性とかカオス理論みたいなものに惹かれます。

全体に、悲哀を昇華させようという奨励みたいなもんですが、「悲しいことを言って」というフレーズが自分にハマってしまって二度も使ったのは、たぶんCharaの『ボクのことを知って』か、Fayrayの『Tears』のサビで微妙に脚韻のようになっている"E"の発音が影響しています。

タイトルは、フアナ・モリーナの動画を観ていて、暖かい歌声だなと感動していたところ、コメントにただ一言「Triste.」と書かれていたのが胸に響いたことに由来します。
No.882 - 2011/08/03(Wed) 12:38:07
夏の鳥瞰 / シュウ
腕に抱いた缶と同じに
君も汗をかいている
No.850 - 2011/07/26(Tue) 08:23:57

解説 / シュウ
以前、太郎さんに言っていただいた言葉ですが、ぼくの詩の原型になっているイメージは映像で、言葉がポンと出てくるのは稀です。

そのため、自分が見ている映像と、他の方がぼくの詩を読んで見ている映像との差異というものがいつも気になっていて、「完全な詩を書いた時、全く同じ映像を見られるのではないか?」とかいう夢想までしたものですが、この詩はむしろ読んだ人が個人的な映像を展開できるよう、意図的に空虚にしたものです。
No.881 - 2011/08/03(Wed) 12:19:32
Cryptid! Cryptid! Cryptid! / シュウ
通り魔のような声
誰かのソロ
聞こえた先にいる

血走った目で誰を愛でる
愛らしい円形脱毛
発酵する毛布
可燃の皮膚を垢が飾る

カウンターで飲む葡萄酒の味を
知っているのか?
一晩部屋を借りて抱く女の
肌の甘さは?

学生のデオドラントも貪る
茸のようなあいつに
安い投げキッスを贈る富裕層
値札代わりにハンバーガーを恵め
誰かの小銭が歩道を駆けて
排水溝へ踊り込む前に
誰かの嫌悪が走り出して
あいつの顔を顰めないように

夜に溶け
朝に浮き立ち
七輪で肉を炙り
休むべきでない処に休み
入るべきでない処を歩き
また七輪で肉を炙る
「炭は如何」と切り出してみようか

腱を喰われた動物たちよ
地面の底から何が聴こえる
No.849 - 2011/07/25(Mon) 09:04:19

解説 / シュウ
(またも)キリンジの『ダンボールの宮殿(パレス)』に衝撃を受けて、別の視点からホームレスを描こうと試みたものです。タイトルには特に元ネタはないんですが、強いて言うなら、ぼくのシナリオに出てくるバンドのデビューシングルのタイトルが『Lockout! Lockout! Lockout!』というだけです。
実際、出先で見かけるホームレスというのはUMAのような存在感を覚えます。

「小銭」は最初「クオーター」だったんですが、そうすると一気に舞台がアメリカになって、「七輪」が使えなくなってしまうので止しました。
なぜそうまでして「七輪」を使いたかったかというと、想田監督の『Peace』を観た日、ちょうど渋谷で七輪を使うホームレスを見かけたからですが、『キーチ!!』の2巻に出てきたホームレスが印象的だったことも大いにあります。
「「炭は如何」と切り出してみようか」は完全にキリンジを意識したフレーズ。

このBBSで唯一不満なのがルビをふれないことなんですが(当たり前ですね)、「富裕層」にはルビをふりたくてたまりません。「ブル」が良いでしょう。
No.880 - 2011/08/03(Wed) 12:15:00
弄れば富 / シュウ
雲も寝乱れて
宇宙が透けた空
鶏は卵を隠して帽子を啄む
叫べば壊れてしまいそうな町に
札びらを撒けば
哀れみの花も咲き誇る
反吐の中のオニキス
癌のように拵えられた
身体の誤ち
No.848 - 2011/07/24(Sun) 19:16:51

解説 / シュウ
「雲も寝乱れて」というフレーズを思いついて、そこに言葉を継ぎ足していったものです。言葉を凝らして「不毛」というものを描こうと思いました。オニキスが何を象徴してるのかと問われると答えに詰まるのが情けないんですが、これも多分「体内で結晶した鬱」みたいなものを(そしてそれを吐瀉したい願望を)意識していたんだと思います。

タイトルは椎名林檎の『ありあまる富』から、と言えば言えるのか。楽曲として大変好きな曲です。ぼくはあの歌詞をストレートに読んでいて、物質主義への一種のアイロニーだと思ってるんですが、このタイトルもまあそういう意味合いです。周囲にくだらないものが満ちても、大事にできるものはどこにでもある、というか。
No.879 - 2011/08/03(Wed) 11:59:55
Full Time lover / シュウ
キッシュの中の腕時計
あいつの仕業さ
腹持ちのいい悪意は
僕への愛なのだろう

油のようにあいつは
全てをまとめ上げて
忌まわしい混沌まで
一つの何かにしてしまう

ビニールを破れば
夢が築かれる
いつも何度でも
恋してしまうよ
オカリナの穴から
覗く生き物
爪弾きにはできない

キッシュの中の腕時計
あいつの仕業さ
煮詰まったミルクに
ムーブメントの毒がよく合う

ヘドロに立ち向かえば
損なわれるのは愛
みすぼらしい技術で
補填できるはずもない

瑣末な秘密が
一国を台無しにする
今や何処ででも
罷り通っているだろう
だから死ぬまでに
抱きしめ合える人を
探さずにはいられない

コーダでも今一度言いたいよ
抱きたいと
 
No.847 - 2011/07/23(Sat) 15:33:05

解説 / シュウ
久しぶりに歌詞の形式を意識して書きましたが、出来自体は悪くないかなと思います。主題を一言で言えば「愛憎」でしょうか。この言葉は相反する二つの感情の並列にも用いられますが、愛情と憎悪がないまぜになった感情を表すときにも使われるもので、この詩で意識している意味合いは後者です。

本当に好きな人というのは、だいたいが憎たらしさを伴う人です。それが「付き合いづらさ」ではないのがミソで。そういう人には打算のない愛を示したい、というモットーみたいなものがあって、まあそういう詩です。

「コーダでも…」というちょっとしたおふざけは、スピッツの『恋する凡人』のパクリと言えばパクリですね。あの曲とは違って、最後のラインに来るまでの間奏が長いイメージで書いてます。その後にサビを二回繰り返す感じ。

タイトルはスティービー・ワンダーのナンバーのもじり。兄が子供の頃、その曲でよく踊っていたそうです。アレは遊びの歌ですが、正反対の愛を歌っているのでフルタイムになってます。
No.878 - 2011/08/02(Tue) 19:23:35
青春は古米のように / シュウ
夏服を焦がす排気音
国道には卑猥な落書きが
月の火に炙られている

どこかの家で
コーヒーが点てられた
夜気にクレマが融けて
匂いが汗を汚す

隠し持ったライターで
何を葬ろうというのか
夜道にワイシャツは瞬き
野良猫もせせら笑う
「隠れられない」
独りごちて願う
物語が起こらないことを

朝ぼらけ
眠らなかったことを誇るたび
神が自分に呆れていると思う
あの便利な精密機械の
シャットダウンのような死が
この手に落ちてこないか?
寝汗も乾かぬうちに

この季節 朝露だけが冷たい
No.846 - 2011/07/22(Fri) 21:16:54

解説 / シュウ
詩に限らず、文章をたくさん書いていると、自分の感覚が自分の文学的想像力に即した形に情報を処理し始める傾向があります。これを「勘が鋭くなってきた」と思うべきなのか、典型的な文章、つまり「ブンガク」に陥る兆しなのかは注意すべきところです。

例えば遠くから聞こえてきた、改造マフラーのものらしいエキゾースト・ノートに「熱を感じさせる音だな」と思ったり。マフラーが熱を帯びるのがよく分かる音だったんです。だから「夏服を焦がす」。

一つの情景や心象を描くというより、寓話を作ろうとして出来たものです。夜から朝へのジャンプは気を使って書きましたが、唐突かもしれませんね。
No.877 - 2011/08/02(Tue) 19:16:34
値打ちをつけたら / シュウ
フルテンでは迷惑だ
パワフルと呼ぶな
事故と言え
翻訳したつもりか
お前と同じ気持ちで
皆が笑うと思うのかい
戯曲を読めよ!

アジテーターの爪を剥げば
誰もがシャンパンを開けたがる
ミモザの塔を上から崩せば
救急車も四輪ドリフト
スリップマークの後を追えば
いつでもクラッシュ現場に出くわす
スーパーフラットに笑うか
まだ待ち焦がれているキュレーション

躁じみたロックンロール
第三のビールにも似て
無知なドライバーをCENSORED
No.845 - 2011/07/21(Thu) 23:28:44

解説 / シュウ
最近、新進のバンドを聴くと、他のミュージシャンと代替可能じゃないか? と思ってCDを買う気が起きないことが多いな、というところから出来たものです。

「戯曲を読めよ!」は富野由悠季氏が、いいアニメを作りたければアニメじゃなくて戯曲をたくさん体験しろ、とどこかで仰ってた記憶から。感嘆符がつくのはキリンジの『ハピネス』の影響か。佐野元春氏の朗読がかっこよかった。

村上隆は別に好きではありません。
No.876 - 2011/08/02(Tue) 19:11:01
アセトアルデヒド・デュナーミク / シュウ
月の名を呼べば
巷に降る雨も甘く
きらきらしい切子に
酒が湧くように
素面の人がまた一人減る
No.844 - 2011/07/20(Wed) 20:55:24

解説 / シュウ
夜勤明けの後の日の夜、ということでものすごく眠い中で認めて、そのあとすぐ寝た記憶が。その割に出来は悪くない気がします。
雨の夜の、線路沿い辺りの赤ちょうちんのイメージです。
No.875 - 2011/08/02(Tue) 14:38:35
優しいテクノ / シュウ
巧妙に刳り抜かれたアイスクリーム
サルビアの味がした
鬱は噛みほぐせなくても
誰かに溶かしてもらえるはずさ
いくつかの悲しみは
きっと永遠に僕たちを泣かせて
頬にまで爪を立てるだろう
それでも生きていけ

眼差しが流血だけを捉えても
その傷を癒す生理を
生まれつき僕たちは持っているはずだ

雷は落ちるだろう
惜しみない略奪があるだろう
どうせ福祉は滅ぶ
だからといって
凶器を揃えてばかりいられるか?

汗をかけば腹は減る
本を読めば朝になる
それさえ分かれば本当に誰もが
いつしか一パーセクを越えて誰もが
祝福に近づける誰もが

凶器を揃えてばかり
いられるか!
No.843 - 2011/07/19(Tue) 15:52:45

解説 / シュウ
この前日に想田和弘監督の『Peace』を観て、少しポジティブな気流をつかめたからこそ出てきた詩です。全体にエネルギッシュです。姿勢が前向きということもありますし、「誰もが」を無意味に繰り返してみて、些少ながら実験を試みているのもその一端です。

「どうせ福祉は滅ぶ」は、今回の震災を経ての国家に対するあきらめとか不信感もそうですし、俺達の世代は年金もらえねえだろうな、みたいなもはや一般的な諦念から来てますが、そこで立ち止まらないようにはしよう、とこの詩では決意しています。そのとおりにずっと生きていけるかは不安ですが、肝銘の意味で書いておこうと。
No.874 - 2011/08/02(Tue) 14:34:45
街はペットボトルの中 / シュウ
百貨店が熱を吐けば
げにおぞましいモデルの笑顔
緑化のバイオレンス
浮浪者も過ごしやすい日陰

夏の陽の下
版にされる僕たちは
全てを増産できるはずだ
腐食剤も芳しい

ケバブ屋が旗掲げ戻るそばで
回転寿司が自沈を始める
何食べようと泣く老人
早いとこ拿捕させろ

モヒートは風邪薬
しばらくすれば回りだす
酔いと背徳が体のなか
別のカクテルに変わる

大通りにも
海が侵食してきている
塩水の溜りに鼠がたかる
皆そこで死ぬつもりだ

食券は翡翠より高価
引換に飢えを失ってなお
喰おうというのか
絵を買う代わりに胃も売ったのに
 
No.842 - 2011/07/18(Mon) 09:15:49

解説 / シュウ
渋谷をイメージして書いてはいますが、色んな都心駅近辺の様相に馴染むよう意識しています。成功しているかは別として。「いろいろな言葉を使えた」というか、関係ない言葉同士をひとつの詩の中に盛り込めたかなという気はしています。

二段落目だけは、ちょっと前にレンブラント展に行ったのが元ネタ(?)です。情報社会においては人間なんて版でしかないのでは、などと時々思います。

宝石の名前で悩んだ挙句「翡翠」が出てきたのは、『BANANA FISH』のアッシュのミドルネームが浮かんだためです。
No.873 - 2011/08/02(Tue) 14:26:29
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