| 舞台「盲導犬 −澁澤龍彦「犬狼都市」より−」大阪公演(2013年8月5日(月)13:00開演 シアターBRAVA!)を観ました。作は唐十郎。演出は蜷川幸雄。 本作は蜷川幸雄が結成した「櫻社」のために、唐十郎が1972年に書き下ろした作品。蜷川が初めて演出した唐作品で、1973年に初演されました。1時間半の1幕で、休憩なし。短い演劇でした。登場人物は少ないですが、「不服従の精神」のテーマが少し難解で分かりにくい。観ているときには古い感じはしませんでしたが、パンフレットなどを読むと時代性を感じます。また、「め●ら」という差別用語や下ネタ(包●、ま●こ)がセリフで出てくるのも前時代的でしょう。
ステージにはコインロッカーが一列に並んでいるだけのシンプルなセット。後々にはコインロッカーの扉が一斉に開くなど細工が仕掛けられています。 ストーリーは難解で、後からパンフレットを読んでようやく理解できました。騒音歌舞伎(ロックミュージカル)「ボクの四谷怪談」もそうでしたが、蜷川幸雄演出作品は初心者にはなかなか難しいですね。 冒頭は本物の盲導犬(シェパード)が5頭登場。吠えたりせずにおとなしい。それぞれ名前がついています。中島来星(天井からの声)の問いかけで、盲導犬(人間に服従するようしつけられた犬)の説明がなされます。本物の犬が出てくるのは最初だけで、途中からブリキの犬になります。影破里夫(古田新太)が自身の盲導犬ファキイル探しをフーテン少年(小出恵介)に依頼します。銀杏(宮沢りえ)のかつての恋人タダハルが登場。男(木場勝己)によってトハの存在が明らかにされます。最後にファキイル(の影)が姿を現し、銀杏を倒します。 「カナダの夕陽」(1956年 エディ・ヘイウッド作曲)が何度も流れます。最後はベートーヴェン「第九」第4楽章が高らかに鳴り響きます。
キャストはマイクを使わずに話しました。影破里夫(えいはりお)役の古田新太はホームレスのような服装。盲人でサングラスをかけていますが、目が見えていないような演技はしません。銀杏(いちょう)あるいはトハ役の宮沢りえは、赤いワンピースドレス。想像よりも声が高かったです。ただし少し早口でした。終盤には男(木場勝己)に銅輪をはめられて犬のようによっつんばいになります。名前が2つある理由は、パンフレットの解説によると、銀杏とトハが同一化したとのこと。古田新太と宮沢りえはほとんど出づっぱりで舞台袖に下がることが少ないので大変だったことでしょう。それぞれ歌も1曲ずつ披露します。 フーテン少年役の小出恵介は金髪。先生/男役の木場勝己は初演でも同じ役を演じたとのこと。婦人警官サカリノ役の大林素子は、蜷川幸雄曰く「パンツ見せ要員」。研修生役で出演している大鶴佐助は、唐十郎の息子とのこと。
副題にある澁澤龍彦著『犬狼都市(キュノポリス)』(1960年)を読みましたが、今回の演劇とは内容がほとんど別物です。ファキイルも盲導犬ではなく、登場人物の名前も違います。よって、本演劇はほとんど唐十郎もアレンジということでしょう。ちなみにファキイルとは断食僧という意味があるようです。 |
No.703 - 2013/08/24(Sat) 12:51:06
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