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川人外科内科掲示板

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鍼灸新聞(vol.13) ツボ特集?B百会 / 森西誠(鍼灸師) [四国]
今号では、鍼灸治療でよく使われるツボの特集の3回目として、『百会(ひゃくえ)』についてご紹介したいと思います。
百会は、頭頂部のほぼ中央にあるツボです。左右の眉の間の中央からまっすぐ上がった線と、左右両耳を前に折り曲げその最上端から頭のてっぺんに向かって上がった線の交差する点を取れば、正確に頭頂部の中央を見つけることができます。
「百」という数字は、もろもろの・たくさんの・数が多いという意味をあらわします。すなわち、からだの働きに関係するもろもろの道筋が一堂に会する場所という意味になります。
したがって、百会はさまざまな疾患に効果があり、鍼灸治療でもよく用いられるツボの1つです。
効能?@頭顔部の症状緩和:頭痛や頭重感のほかにも、眼精疲労、耳鳴り、めまい、鼻づまりなどの頭顔部の症状に効果があります。
効能?A頭全体の血行の改善:睡眠を充分に取っているのに眠気が取れない、なんとなく頭がボーッとするという症状は、頭部全体に充分な血液が行き渡っていないことが原因といえます。百会はこれを改善する効果があります。
効能?B精神を安定させる効果:イライラなどで頭に上がった血を引き下げる働きがあります。東洋医学的には「安神鎮驚」といって、精神を安定させ驚恐(気の乱れ)を鎮静させる、という働きがあります。自律神経失調症に効果があり、応用として全身調整や疲労回復の目的で治療を行うことがあります。
効能?C痔疾患に対する効果:全身の血液やエネルギーの流れを改善することで、痔疾患による肛門付近のうっ血も改善でき、痔核、脱肛などに効果があります。
このように、百会はさまざまな病気が原因で起こる頭のぼんやりとした感じをスッキリと取り去ることができます。ご家庭では、頭のてっぺんからまっすぐ身体の芯に抜けるように指圧するとよいでしょう。

次号は不眠症特集の予定です。   

No.16 - 2007/06/30(Sat) 13:56:00
鍼灸新聞(vol.12)足のむくみについて / 森西 誠(鍼灸師) [四国]
人間の体には、体内に沈殿した老廃物を排泄するためのリンパ管があります。このリンパ管が詰まってしまうと足のむくみが現れます。ちょうど配水管にごみがつまって流れが悪くなった状態といえます。
足のむくみが現れる原因としては、次のようなものが挙げられます。
原因?@ふくらはぎの筋肉の緊張:筋肉は血管やリンパ管を収縮させ循環させるポンプの役割をしますが、特にふくらはぎの筋肉が硬くなっていると、ポンプ機能が十分に働かないので、老廃物がたまりやすくなります。
原因?A骨盤や膝、足首が歪んだ場合:骨盤や関節の歪みは、循環を悪くさせます。
原因?B体液が濃くなっている可能性:配水管に泥水を流すのと水を流すのでは、当然水のほうが流れやすいのと同様に、リンパ管の中を流れる体液の濃度が濃すぎると老廃物の排泄がうまくいきません。秋から冬にかけて足のむくむ人が多いのですが、中には夏にむくむ人もいます。それは、夏になると汗をたくさんかくために体内の水分が不足し、体液が濃くなってしまうためです。
足のむくみを解消するには、ずばり、循環をよくしてあげればよいのです。
まず、水分の摂取を怠らないようにしましょう。目標は1日2リットルです。夏では1.5リットルは汗となるし、もし水分を多く摂りすぎても尿として排泄されるので問題ありません。こまめに摂取するのがコツです。また、ふくらはぎなどの足の筋肉にストレッチやマッサージをすると、筋肉のポンプ作用が高まるので、循環もよくなります。治療のツボとしては、足三里(あしさんり)、承筋(しょうきん)、承山(しょうざん)、湧泉(ゆうせん)などが効果的です。足三里はむこうずねの外側で、膝蓋骨の下のくぼみから下に指幅四本分のところにあります。足三里は骨盤や関節の歪みによる痛みにも効果があります。承筋・承山はふくらはぎ(腓腹筋)の中心線上あり、湧泉は土踏まずのやや上で足の指を曲げたときに最もへこむところにあります。これらのツボの刺激により、足の循環を改善することができます。

次号はツボ特集?Bの予定です。   

No.15 - 2007/05/30(Wed) 13:24:09
鍼灸新聞(vol.11) 顎関節症について / 森西 誠(鍼灸師) [四国]
顎関節症(がくかんせつしょう)で、大勢の人があごの痛みや口が開けられない事に悩んでいます。顎関節周囲の痛み、口が開きにくい、口を開閉するとき音が鳴る、といった3つの症状を顎関節症の3大徴候といい、このうちどれかが当てはまる場合、顎関節症が疑われます。
顎関節症の原因はさまざま考えられます。(私は以前顎関節症の臨床的な研究をしていましたが)最も多い原因は噛み合わせの異常です。例えば、虫歯の治療で歯を抜いてそのままにしていると歯並びが崩れ、顎関節などに無理な負担がかかるため顎関節症を引き起こします。また、夜間睡眠中の歯ぎしりなどの悪習癖や、精神的な緊張やストレスも顎関節症を悪化させてしまう要因の1つといえます。それらは、口腔周囲の筋肉が長時間緊張して硬くなり、顎の動きが制限されるので、症状を悪化させてしまいます。
 これらの要因により自律神経が乱れ、めまいや吐き気、頭痛、肩こり、腰痛などの身体症状を引き起こすこともあります。
治療法も病状によってさまざまですが、歯科では一般的にスプリントといってマウスピースに似たものを口腔内に装着し、口腔周囲の筋肉の緊張を緩和させることがよく行われます。これにより、顎関節にかかる負担を最小限にし、症状の進行を防止できる効果があります。鍼灸治療でも同様に、口腔周囲や首、肩の筋肉の緊張を緩和させる治療を行います。これにより痛みを和らげ、顎関節にかかる負担も軽減することができます。ツボとしては、下関(げかん)、太陽(たいよう)、頬車(きょうしゃ)などに治療をします。鍼治療では、外側翼突筋(がいそくよくとつきん)という皮膚から少し深いところ(約1cm)の筋肉にも治療ができます。この筋肉は顎関節のすぐ近くで、ツボでいうと下関にあたり、顎関節症になると必ず異常が現れるところですが、少し深いところにあるのでマッサージなどでは十分に治療することができま
せん。しかし、鍼治療ではこの筋肉に届くので直接治療ができ、ここに治療するとかなりの症状の改善が期待できます。

次号は足のむくみ特集の予定です。   

No.14 - 2007/05/01(Tue) 14:02:03
鍼灸新聞(vol.10)ツボ特集?A足三里 / 森西誠(鍼灸師) [四国]
今号では、鍼灸治療でよく使われるツボの特集の2回目として、『足三里(あしさんり)』についてご紹介したいと思います。
足三里は、膝を立て、膝蓋骨(膝関節の皿状の骨)の直下にできるくぼみのところから下に指幅四本分下がったところにあります。ちょうどすねの中心を通る太い骨(脛骨)のすぐ外側に位置しています。
足三里の「三」は東洋医学でいう「天の数」で、大切な幸運の数を意味します。「里」は分解すると「田」と「土」になり、稲という意味も含んでいます。それから転じて食べるものと関係すると考え、胃腸のことも示します。つまり、胃腸の症状に深い関係がある大切なツボ、という意味になります。
足三里は、胃痛、胃腸虚弱、胃もたれ、食欲不振、消化不良などの消化器系の症状に効果があります。足三里に鍼灸治療や指圧などの刺激をすると、例えば胃酸がよく出すぎる人は胃酸を抑え、また胃腸の運動が弱い人はその働きを助ける役目もします。つまり、自律神経が作用し、胃の調子を整える効果があります。
また、足三里に刺激すると足の毛細血管などの循環が改善する効果があり、その結果、腰や膝の痛み、足のだるさ・むくみ・冷えなどの症状の改善が期待されます。
また、足三里は健脚のツボとしても知られています。松尾芭蕉が奥の細道を起稿していて長旅で疲れた時に、この足三里にお灸をして疲れを癒し、旅を続けた、という話があります。これは、足三里が病気予防・回復、体力増進の効果もあるためです。
このように、足三里は広い範囲にわたって効果が期待できる大切なツボの1つといえます。

次号は顎関節症特集の予定です。 

No.13 - 2007/03/31(Sat) 13:49:29
鍼灸新聞(vol.9)頭痛ついて / 森西誠(鍼灸師) [四国]
頭痛は、大きく3つに分けられます。
(1)二日酔いの場合などの原因がはっきりしている無害な日常的な頭痛。
(2)片頭痛や緊張型頭痛のような慢性的に繰り返す頭痛。
(3)脳腫瘍、脳出血などのように危険な脳内の病気による症候性頭痛。
 (3)症候性頭痛は、今までに経験したことのないような激痛が走るのが特徴で、至急、専門医の診察を受ける必要があります。今回は、(2)慢性頭痛について詳しく解説したいと思います(下表参照)。
 
       片頭痛                   緊張型頭痛
   特徴  頭の片側が痛む               しめつけられる痛み
        拍動性(ズキンズキン)           圧迫感    
        遺伝することが多い             重い感じ
        チカチカする                 後頭部(両側)が痛む 
        音がやけに響く               首や肩のこりを伴う 
        体を動かすと悪化

   原因  血管が拡張して神経を圧迫するため  肩こりなどで筋肉が緊張するため

   対処  安静(暗く静かな部屋で)          痛い部分を温める
        痛い部分を冷やす              指圧・ストレッチをする  
        血管を圧迫する               姿勢を正しくする

片頭痛は通常片側のみですが、まれに両側のこともあります。片頭痛は、収縮していた血管が拡張するときに神経を刺激し、拍動性の痛みを起こします。一方、緊張型頭痛は、肩こりが慢性化し、肩の周辺、特に首の筋肉が緊張したときに発症します。
このように、同じ慢性頭痛でも症状は異なるので、その対処法も異なります。
片頭痛は、血管が拡張しないように安静にし、痛い部分の血管を冷やしたり圧迫したりする必要があります。反対に、緊張型頭痛は肩こりと同様に血行が悪い状態なので、痛い部分の保温やストレッチなどで筋肉をほぐすことが必要です。
鍼灸治療は、どちらの頭痛にも効果はありますが、緊張型頭痛の方がより効果が出やすいといえます。頭痛の鍼灸治療では、百会(ひゃくえ)がよく使われます。頭の最も高いところにあり、治療や指圧をすると頭のもやもや感などをスッキリと取り去ることができ、頭痛の解消につながります。また、緊張型頭痛のときは頭蓋骨の下縁で後頚部の最も高いところにある天柱(てんちゅう)や風池(ふうち)、そして耳たぶの後ろの丸い骨の下縁にある完骨(かんこつ)などを指圧すると、症状を和らげることができます。

次号はツボ特集?Aの予定です。 

No.12 - 2007/02/28(Wed) 14:07:33
鍼灸新聞(vol.8)眼精疲労ついて / 森西誠(鍼灸師) [四国]
単なる疲れ目の場合は一晩ぐっすり眠ると治りますが、眼精疲労は休んでも治らない状態をいいます。目がかすむ、乾く、充血する、ショボショボする、目が重い、目の奥が痛いといった目の症状だけでなく、肩こり、頭痛、吐き気などの症状をきたすことがあります。
眼精疲労のほとんどは、パソコン、テレビ、読書などで目を酷使することによって起きたものと考えられます。最初は目の症状だけですが、眼精疲労を放置していると次第に肩こりや頭痛といった体の症状が現れ、さらにストレスなどの精神的要因が重なるようになります。ストレスにより自律神経のバランスが崩れ、交感神経優位となるために目の乾きや不眠を引き起こし、さらに眼精疲労を悪化させてしまいます。
眼精疲労の治療は、眼球とその周囲の滞った血流を改善し、眼球周囲の筋肉を柔軟にする目的で行います。これにより、疲労を回復させる効果が期待でき、上に示した悪循環を断ち切ることができます。
家庭では、蒸しタオルを使って目の周囲を温める方法があります。水でぬらして絞ったタオルを電子レンジで温め、手で温度を調節してから目の上に置きます。すると、血行がよくなり疲れも解消できます。目の充血がひどい場合は目の周囲を冷やします。水でぬらして絞ったタオルをビニール袋に入れ、冷凍庫で1時間冷やしたものを使います。
また、目の周りのツボをマッサージするのもよいでしょう。太陽(たいよう・こめかみの中央)は、皮膚に対して垂直に指圧します。攅竹(さんちく・眼窩の上際の内側で眉毛のすぐ下側)、魚腰(ぎょよう・眼窩の上際中央)は上向きに、四白(しはく・眼窩の下際中央)は下向きに指圧します。1ヶ所を5秒ずつ指圧し、2〜3分続けると疲れた目をリフレッシュできます。

次号は頭痛特集の予定です。 

No.11 - 2007/01/31(Wed) 13:48:43
鍼灸新聞(vol.7) ツボ特集?@合谷 / 森西誠(鍼灸師) [四国]
今号では、いつもの鍼灸新聞とは思考を変えて、鍼灸治療でよく使われるツボについての特集をしたいと思います。今号では『合谷(ごうこく)』というツボについてご紹介したいと思います。
合谷は、手の親指と人差し指の間で、少し人差し指側に寄ったところにあります。第二中手骨の付け根で、骨に沿ってたどると心持ちくぼんだところに当たります。合谷という名称は、そのくぼみがまるで谷のようであり、そこからからだの中をめぐる活力となるエネルギーが湧き出ていることをあらわしています。
合谷に鍼を刺し、弱い電流を流すと麻酔薬と同じように感覚が鈍くなる、という現象が起こります。ひとむかし前、『鍼麻酔』といって、この現象を利用して麻酔薬を使わずに奥歯を抜いたり、脂肪腫を切開して摘出したり、ということが行われていました。当時は麻酔薬にアレルギーのでる人が多くいたため、麻酔薬の代用として行われていました。現在では麻酔薬が発達したため、以前ほど鍼麻酔は行われていませんが、痛みをとる治療が必要な場合に有効な方法といえます。
この他にも、合谷は幅広い症状に活用され、効果をあげるツボです。
頭痛、眼精疲労、鼻炎、歯・歯茎の痛み、口内炎、のどの腫れ・痛み、耳鳴り、肩こり、五十肩、手のしびれ、腹痛、便秘、下痢などのさまざまな症状に効果があります。これらの疾患があるとき、合谷を指圧すると痛みがでたり、合谷の部分だけ少しふくらんだり、へこんだり、また湿っていたりします。鍼灸治療では、これらのツボの反応を診て、症状に応じた治療を行います。それにより、頭痛や肩こりなどのいろいろな症状を治すことができます。

次号は眼精疲労特集の予定です。   

No.10 - 2006/12/29(Fri) 13:59:50
鍼灸新聞(vol.6)しびれについて / 森西誠(鍼灸師) [四国]
よく正座や腕枕でおこるしびれは少し経つと自然に治りますが、何もしていないときにおこるしびれもあります。今回は、身近におこる『しびれ』がテーマです。
しびれは、神経に行く血行が悪いときや、神経が圧迫されて神経の通り道が狭くなったときに起こります。道路が崖崩れで片側交互通行(=神経が圧迫される)になり、車が渋滞する(=血行が悪い)するのと同じことで、神経の働きが悪くなり、結果的にしびれが起こるのです。
人の神経が感覚として伝わる経路をたどってみると、皮膚で感じた刺激は、まず末梢神経(体のすみずみの神経を結ぶ連絡網)を通って、神経根(神経が脊髄に入るところ)を経て脊髄に伝わり、最終的に大脳で感覚として受けとめられます。この経路のどこかが障害されると、『しびれ』が現れます。また、神経が障害されている場所によって、しびれの部位や特徴が異なります。つまり、しびれの部位や特徴によって、どこの神経が障害されているか、ということをおおよそ把握することができます。

障害部位   しびれの部位     しびれの特徴        原因
  末梢神経  体の片側の一部    ものが張り付いている   糖尿病、リウマチ 
           (手袋・靴下状)   ようなしびれ         脚気
  
  脊髄    両側の手足の一部   一瞬、電気が走るよう   脊髄損傷
  神経根   (初期には片側でも  な激しい痛みを伴う     椎間板ヘルニア
           後に両側になる)  しびれ            変形性脊椎症

  脳     体の片側ほとんど   感覚は麻痺し、舌の     脳出血
          (右または左半身)  もつれ、ふらつき、     脳梗塞
                       めまいなどを伴う      脳腫瘍

鍼灸治療では、しびれている付近やそれより中枢側(脳に近い方)に鍼を刺し、弱く電流を15分程度流します。決して痛いものではなく、むしろ気持ちいい程度のものです。それにより、しびれている場所の血行の改善や、異常な感覚を正常に戻す効果などが期待されます。継続して治療を行うとその効果が徐々に現れてきます。

次号はツボ特集?@の予定です。

No.9 - 2006/11/30(Thu) 10:29:10
鍼灸新聞(vol.5)五十肩について / 森西誠(鍼灸師) [四国]
例えば、セーターなどの服を着ようとした時、手を後ろにまわしてエプロンのひもを結ぶ、などの動作で肩が痛む。就寝中に肩が痛くて目を覚ます。これらは、五十肩の典型的な症状です。五十肩は、加齢によって肩のさまざまな組織が老朽化することで、肩関節周囲の炎症や痛みを生じます。

五十肩の起こるしくみ
1)加齢による関節周囲の老朽化
2)筋肉や靱帯の柔軟性がなくなる
3)血液の循環が悪くなる
4)関節周囲に炎症が起きる
5)痛みが起きる
6)関節が動きにくくなる
7)腕が上がらなくなる

五十肩は、急性期と慢性期で症状が異なるので、それぞれ対処も異なります。
急性期は、痛みや炎症が強く、特に初めの数日は肩を冷やして炎症を抑えます。慢性期に入ると痛みは鈍くなります。入浴やカイロなどで肩を積極的に温めます。また、肩の動きを回復させるために、アイロンや棒を用いた体操を行います。慢性期に肩を動かさないでいると、筋肉を使わないので筋力低下を招き、五十肩が悪化・長期化する危険性が高くなるので、なるべく肩を動かすようにしましょう。五十肩になると、肩関節周囲の痛みのために、腕が上がらなくなります。
以下に、慢性期の五十肩のときに行う体操をご紹介します。これにより、肩関節が柔軟になり、腕が上がりやすくなります。(右の五十肩の場合の説明です)
1.コッドマン体操(アイロン体操)
基本姿勢:左手を机の上に置き、前かがみになり、右腕は力を抜いて下にたらします。足を開いて安定した体勢をとります。
1)右腕を前後に振ります。このとき、上半身全体を前後に揺らし、その反動で肩を動かすようにします。
2)同様に、右腕を左右に振ります。
3)同様に、右腕を時計回り、反時計回りに円を描き、徐々に大きくします。
※できるだけ肩に力が入らないように注意して行いましょう。肩の力で腕を動かすのではなく、あくまで体の反動で行います(肩に力が入ると痛くなります)。それぞれの運動は2分ずつ行います。初日は手に何も持たずに行い、2日目から1kg程度の砂袋、またはアイロンなどを持って行います。
2.棒体操
1m程の長さの棒を使用します(杖でも可)。
1)順手で棒を持ち、肘を伸ばしたまま頭上に持ち上げます。
2)棒を頭上から首の後ろへまわします。
3)右手を逆手に持ちかえ、左手で棒を右に押し上げ、右手を外へ高く、真横へ押し上げます。
4)腰の後ろで棒を持ち、肘を伸ばしたまま後方へ上げます。
5)棒を背中で上下に持ち(右手は腰、左手は頭の後ろ)、左手で棒を上に引っ張ります。
※これらの運動をそれぞれゆっくりと10回ずつ行います。痛みが起きるようであれば無理をせず、動かせるところまで動かすようにしましょう。
以上の体操を1日2〜3回行います。運動はゆっくりと行い、翌日に痛みを残さない程度にしましょう。また、日頃から患部の腕もよく使うように心がけてください。

五十肩は、1〜2年くらいで自然に痛みは軽減しますが、それまで長い間苦痛にさらされる上、肩の運動制限は必ずしも
元通りに回復するとは限りません。鍼灸治療などを行うと、肩の痛みや運動制限を改善することができます。

次号はしびれ特集の予定です。

No.8 - 2006/10/31(Tue) 13:26:52
鍼灸新聞(vol.4)膝痛について / 森西誠(鍼灸師) [四国]
年をとると、からだの節々の痛みが出やすくなります。なかでも、膝の痛みが起こりやすいといわれています。それは、膝は日常生活において使用頻度が高く、全く使わずに過ごすことがほとんど不可能であるためです。また、ある程度は使いながら治さなければならないという条件下にあるので、どうしても治るまでに長い時間がかかってしまいます。
膝痛のほとんどは、いわゆる高齢者が使いすぎで起こす『変形性膝関節症』というものです。このとき、膝関節は膝の酷使や体重に負けて軟骨がすりへり、関節周囲に炎症が起こった状態になっています。ひどいときには関節に水がたまってしまいます。

膝痛の原因:1)使いすぎ     
        2)筋力低下  
        3)体重増加      
        4)冷えによる血行不良        
 →これらの原因により→1)軟骨がすりへる
               2)靱帯に負担がかかる
               3)筋肉は硬くなる     
               4)関節に炎症が起きる   
               5)関節に水がたまる

治療としては、これらの原因を取り除きながら、関節周囲の筋緊張・硬結などをとることに尽きます。
また、日常生活上での注意も必要です。例えば、重いものを持つことや階段を上り下りすることは、膝に負担がかかるため、できるだけ行わないほうがよいです。座り方にも注意が必要です。膝が痛い人にとって、正座やあぐらはあまりよくありません。特に、正座をしていると、O脚といって膝の関節が外側に曲がりやすくなります。また、膝が冷えると筋肉が硬直し、痛みが悪化しやすいので、サポーターなどで保温をするとよいでしょう。

また、膝周囲の筋肉を鍛え、痛みが出にくくする体操も効果的です。以下にご紹介します。
1.仰向けになり、ひざの下にバスタオルを巻いたものを入れ(枕でも可)、それを押しつけるように力を入れます。力を入れた状態でゆっくりと5つ数えます。これを10回行います。
2.仰向けになり、片方のひざを立て、もう一方のひざを伸ばしたまま少し上げます(足先が見える程度)。ゆっくりと5つ数えておろします。左右5回ずつ行います。
3.椅子に座り、太ももを片足ずつ持ち上げます。上げた状態でゆっくりと5つ数えます。左右5回ずつ行います。
4.椅子に座り、ひざを片足ずつまっすぐ伸ばします。伸ばした状態でゆっくりと5つ数えます。左右5回ずつ行います。
5.椅子に座り、足首のところで足を組み、前側の足はひざを曲げるようにし、後ろ側の足はひざを伸ばすようにし、足同士で力比べをします。力を入れた状態でゆっくりと5つ数えます。反対も同様に5回ずつ行います。
※2、3、4の運動は、楽にできるようになれば、足首に1kgの砂袋をつけて行うとよいでしょう。痛みが起きるようであれば、砂袋は使用しないで運動を行いましょう。
以上の体操を1日2〜3回、決して無理をしないように行ってください。最低3ヶ月続けることを目標にがんばりましょう。

次号は五十肩特集の予定です。 

No.7 - 2006/09/30(Sat) 12:29:28
鍼灸新聞(vol.3) 肩こりについて / 森西誠(鍼灸師) [四国]
〜最近、思うこと〜 世の中、便利になりましたよね。
便利になったことで、肩こりの人も増えてしまっているのです。
自動車や便利な家電などの普及により、人間の最も基本的な運動である手作業や歩行をも不足がちにし、自らの身体の重量を支持することで精一杯の筋力しか持ち合わせない人がかなり存在します。このような人が、何らかの日常生活にはない作業を強いられたときに、筋肉疲労による肩こりを引き起こしやすくなっている、という背景があります。
他にも肩こりの原因はいろいろあります。例えば、猫背などの悪い姿勢があると、頭が肩よりも前に出てしまいます。すると、頭を保持するのに必要な力は、姿勢が正しい人より姿勢が悪い人の方が大きくなり、首や肩にかかる負担も大きくなるので、肩こりになるのです。また、几帳面な性格の人や、ストレスを受けやすい人も肩こりになりやすいといわれています。どちらも肩に力が入った状態が長く続くため、あまりよくありません。
また、肩こりが慢性化すると、頭痛や眼精疲労、鼻炎・鼻づまり、耳鳴り、めまいといった症状を引き起こしかねないので、注意が必要です。
では、どのような対策をすればよいのでしょう。
肩こり解消には、1)正しい姿勢、2)温める、3)肩こり体操、の3つが重要です。これにより、筋肉がほぐれ、血液の流れがよくなるので、肩こりを予防できます。
そこで、首や肩の筋肉をほぐすストレッチ体操をご紹介します。

1.首の運動 
1)首を左に傾けて3秒間止めます。首の右側の筋肉が伸びていることを意識して行います。
2)同様に、首を右に傾け、左側の筋肉を伸ばします。左右交互に5回ずつ行います。
3)首を前に曲げて3秒間止めます。首の後ろの筋肉を伸ばします。
4)天井を見るように首を後ろに曲げます。両手であごを軽く押すとよいでしょう。前後交互に5回ずつ行います。
5)1)〜4)の運動に慣れてきたら、それぞれの運動に手の重みを加えてストレッチします。痛みが出るようであれば、この運動は行わないでください。
6)最後に、頭を左回り・右回りでゆっくりと大きく回します。交互に3〜5回行います。
2.肩の運動
1)腕をぶらりとたらした状態から、両肩をゆっくりと持ち上げ、力を抜いてストンと腕を落とします。これを10回行います。
2)肩甲骨を意識して大きく旋回します。ひじを90度曲げ、腕を45度上げて、ひじを大きく回します。前回し・後ろ回しを交互にゆっくりと5回ずつ行います。
以上の体操を1日2〜3回行います。ゆっくりと大きな動作で行うようにします。個人差がありますので決して無理はしないで、回数や強さを加減してください。

以上1.2.の体操で肩の痛みがとれてきたら、以下3.4.の肩こり体操をしてみましょう。ここで紹介するのは、首や肩の筋肉をきたえる運動です。これにより、肩こりになりにくいからだを作ることができます。
3.首の抵抗運動
1)両手を額にあてて、首に力を入れて頭と手で押し合うようにします。
2)反対に両手を後頭部にあて、首を後ろに力を入れて押し合います。
3)右手を側頭部にあて、力を入れて頭と手を押し合います。
4)反対(左)も同様に押し合います。
※それぞれの動作は1回3秒間で、5回ずつ行います。
4.肩の抵抗運動
1)手のひらを胸の前で合わせて、力をいれて押し合います。1回3秒間で、5回行います。手は、片方は握り、もう片方は開いて行うと力が入りやすくなります。
2)両手の指先を曲げて引っかけ、左右にひっぱります。この運動も1回3秒間で、5回行います。
痛みが強い時期にこの体操を過度に行うと、かえって痛みを悪化する可能性があるので、1.2.のストレッチ体操である程度痛みをとってからにしましょう。また、3ヶ月くらいは続けないと首や肩の筋肉をきたえられないので、効果があがりません。毎日の習慣として行うようにしましょう。

また、肩こりの予防として、“長時間同じ姿勢を取り続けない”ということが重要です。例えば、30分〜1時間でチャイムが鳴るようにしておき、チャイムが鳴れば仕事の途中でも立ち上がって背伸びや深呼吸などをする、ということをすると、肩にかかる負担を軽減できるので、肩こりの解消につながります。

次号は膝痛特集の予定です。   

No.6 - 2006/08/30(Wed) 13:54:58
鍼灸新聞(vol.2) 腰痛について / 森西誠(鍼灸師) [四国]
腰痛はだれもが一生のうちに何回かは経験する症状であり、腰痛で悩んでいる方は非常に多いと思われます。そもそも、なぜ腰痛になるのでしょう? 腰痛は、他の哺乳類にはなく人間特有の症状なのです。ご存知でしたか?
人間は直立二足歩行をするために、背骨は緩やかに曲がった構造になっています。これは、直立姿勢のバランスを取るのに優れていますが、同時に曲がった部分に上からの負荷が集中し、構造的に弱いという欠点があります。腰部には、上半身の体重が加わり、腰部周辺の筋肉や靱帯等にも負担がかかるため、腰痛になりやすいといわれています。
他にも、腰痛になる原因はいろいろあります。悪い姿勢(猫背・円背など)、加齢による骨の変形や、腹筋や背筋などの不足(衰える)などが挙げられます。姿勢が悪いと、腰にとって無理な体勢になり、筋肉を疲労させやすくなります。骨の変形や筋肉の不足があると、筋肉にかかる負担が増加し、痛みを引き起こしやすくなります。
では、どのような対策をすればよいのでしょう?
効果的な方法の1つとして、腰痛体操があります。腰をひねる運動、両膝をかかえこむ運動などを行うことにより、腰やその周辺の筋肉を伸ばし、痛みを起こしにくくします。また、腹筋・背筋などの増強にも効果的です。
また、日常生活上での注意も必要です。特に、胡坐(あぐら)を長時間続けていると、腰には無理な姿勢となるためよくありません。定期的に座り方を変えるなどの対策が必要です。
一言に腰痛といっても、軽い筋肉痛のようなもので1回の治療でよくなるものから、下肢のひきつりやしびれなどを伴うようなものまでさまざまあります。治療においては、腰痛の原因を正確に把握し、それぞれの症状にあった治療をすすめております。
 次号は肩こり特集の予定です。  

No.5 - 2006/07/31(Mon) 14:11:23
鍼灸新聞(創刊号) / 森西誠(鍼灸師) [四国]
こんにちは。川人外科内科の鍼灸師の森西と申します。
当院では、皆様に鍼灸に関する話題を、月1回で提供させていただいておりますが、この掲示板においても連載させていただくことになりました。
さて、初刊となります今号では、東洋医学と西洋医学の違いについてわかりやすく解説しようと思っております。
みなさまは、「東洋医学」と聞くと、どのようなイメージを持たれますか?
 『神秘的』『なぜか治る』『あやしい』などと、いろいろあると思います。
『神秘的』といわれる理由として、東洋医学は、先人達の幾多の経験の積み重ね、つまり経験医学として発達しているものであることが挙げられます。なぜ治るかの説明がなされていないものは多数あり、現代医学でも解明できない部分があります。例えば、東洋医学では、腰痛治療に手の甲のツボを使ったり、不眠症にはかかとにお灸を行ったりします。
  一方、西洋医学は、科学的・理論的な見地から発展した医学であり、特に近代の発展はめざましいものがあります。精細な検査を基に病気を分析し治療にあたります。また、西洋医学は外科的処置においても優れており、東洋医学と異なる点が多数存在します。
  全く違った見地から独自の発展を遂げてきた両医学でありますが、互いに長所もあれば短所もあります。つまり、病気により西洋医学的な治療が適合しているものと、東洋医学の方が適合しているものがある、ということです。
当院では、従来のように西洋医学的な治療のみではなく、病気や患者様の個々の状態により、適合する方の治療、もしくは両者を併用した治療を行っております。これにより、より高度な医療を提供し、患者様の健康を保持する手助けができればよい、と考えております。
鍼灸治療は、主に東洋医学的な治療が適応と考える患者様に対して治療を行っております。鍼灸に関する疑問・質問等がありましたら、お気軽にご相談下さい。
          
次号は腰痛特集の予定です。 

No.4 - 2006/07/07(Fri) 17:23:49
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