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おろち2 プレイ中です。

ネタバレ全開なので、ごりょーしょーください。







(No Subject)

どうも莉緒です。なんか色々言いたいなってことがあったはずなんですけど、ぽーんって抜けちゃったみたいで。


とりあえず、穴あきだらけの景幸の続きです。




「風が出てきましたね」
 そろそろ戻る刻限だろうか、と話していた合間だった。出掛ける時はあんなにも気持ちよく晴れていた青空に分厚い雲が覆いかぶさろうとしていた。夏ももうすぐ終わりを迎える時節である為、風が冷たいわけではなかったが、生ぬるい湿気をはらんでおり、雨のにおいが色濃くかおった。
「一雨来るかもしれませんね。早く戻りましょう」

 けれども、二人が城へ到着するより先に雨が降り出してしまった。大気の状態が不安定になるこの時期に通り雨は珍しくはなかったが、その雨脚の激しさは視界が利かなくなる程で、不慣れな道を走らせる幸村はもちろん、景勝にも不便を強いた。景勝は幸村の隣りに並び、道からそれた林を指し示した。
「あちらに小屋がある。そこで雨が止むのを待つ」
 こっちだ、と景勝は先に馬を進めるのだった。

 旅人の休憩所として設置された小屋に人の姿はなかったが、頻繁に使用されているようで、必要なものが揃っていた。上着が吸った雨が滴るのも気にせず、景勝の背後に回り彼の上着を脱がせる。景勝も着物に手をかける幸村の意図を察したようで、すっと上着から腕を抜いた。何か言いたいことがあったのか、景勝が首だけをひねって幸村を見た。上背のある幸村だが、それよりも更に上の位置にある目を見て、幸村は反射で微笑んだ。景勝が少し慌てた様子で再び前を向き、消え入りそうな声で、すまんな、と礼を言ったことが、幸村の心を温かくした。口下手だと言われているが、こういった細かな気遣いをしてくださる人なのだ。
 幸村は手慣れた様子で景勝と己の上着を絞り、設置されている衣文掛けへと吊るす。幸い灯台まで完備されており、暗闇でつまづくこともなかった。火を焚いて乾かした方がいいことは分かっていたが、まだ夏の名残が強く、気温も高い。焚けば蒸し風呂状態になってしまうことは想像に難くなく、横殴りの雨のせいで戸を開けて風を入れることも出来なかったので、そのまま自然に任せるしかなかった。御曹司として育った景勝は幸村のやっていることを見守ることしか出来なかったが、こういった状況に慣れている幸村はせっせと小屋の中を歩き回った。遠駆けや領地の中に湧いている温泉に行ったきり、そこで一晩を過ごすこともままあった幸村なのだ。

「兼続どのの予想は外れてしまいましたね」
 持参していた水を差し出しながら、幸村は景勝の隣りに腰掛ける。景勝は相変わらず難しそうな顔で、うむ、と頷くだけだった。
「すぐ止むといいんですが…。ここで夜を明かすとなれば、城の方々も心配なさるでしょうし」
「…兼続が、うまくやる」
「それもそうですね。もしかしたら忍びが探しに来るかもしれませんし」
「それは、」
 景勝がそっと目を伏せる。幸村は景勝さま?と無意識に先を促したが、景勝はそれ以上の言葉を発しなかった。

 場に静寂が落ちた。簡素な造りの小屋には、雨がたたきつけられる音だけが響いていた。不規則に紡がれる音の嵐につい幸村は目を閉じ、うとうととしていた。湿った袴や着物が不快ではないとは言い切れなかったが、戦場では更にひどい状態だ。そこまで気に留めはしなかった。ただ景勝にもその不便を強いているのだと思うと、途端申し訳なくなった。文句一つ言わない我慢強さを好ましく思う反面、もっと我慢をしなくてもいいのに、と幸村が思う程だった。景勝からしてみれば、人質として上杉家へ送られたとはいえ、小姓の仕事をさせていることに少なからぬ負い目があったのだが、幸村は欠片も気付いていないのだった。

 小屋の空気は決して冷たくはなく、むしろ湿気を含んで生ぬるかったが、雨に打たれた身体は本人が思っていた以上に冷えてしまったようで、思いがけず幸村の口からくしゃみが飛び出た。決して大きなものではなかったが、雨音ばかりがこだまする室内では悪目立ちしてしまい、景勝も思わずと言った様子で幸村を見ていた。幸村は照れた様子で、すいません、鼻がむずむずして、と誤魔化したが、景勝は笑顔で流そうとする幸村の目をじっと見つめ、一言、
「寒いか?」
 と、訊ねた。いいえ、と言うべきだった。けれども幸村は迷った。一瞬だけだったが、確かに言い淀んだ。
 その動揺を見て取ったのか、景勝は心配そうに表情を顰めながら、幸村から目をそらさずに、もう一度、同じ言葉を繰り返した。

「寒いか?」

 ほかの一切に目もくれず、景勝には幸村しか写っていない。今、この方の世界には己一人しか存在していないのだ。そう思った。思わせてしまう程、景勝の目は真摯だった。寒いのか、暑いのかなど、もう幸村には関係がなかった。ただ景勝の目を見、幸村は僅かに躊躇うように目をそらし、そして消え入るような声でようやく一言を絞り出した。

「、はい―――」

莉緒
No.1991 2014/04/21(Mon) 00:07:11

      
(No Subject)

もうちょい続きます。誤字とか脱字とか、明らかに文章がおかしくてもいいんです。や、本当はよくないんですけどね、一発打ちでOKな文才が欲しいんですけどね、現実は残念ながらそううまくはいかないわけで、うん。

世に兄上×幸村が広がりつつある(とぴくしぶの様子を見る限り思いますが)今日、わたしは!あえて!流れに抗います!ゲーム中に清々しいくらいに会話がないのなら、むしろ好都合、好きなように捏造することこそオタクの幸せなのです。

あ、今更ですけど、景勝さまの口調がでたらめでごめーんね。自分でも迷子っぷりは分かってるんですけど、ど、調べるよりも先に書きたい衝動が抑えられない。大人の落ち着きってどこ行けば習得できるの?


ってな感じで、いちお、続きです。。。。多分。







 景勝は、己の感情が幸村に見透かされてしまったのではないか、と、咄嗟に彼の行動を疑った。疑ってしまってから、兼続のあの朗々とした声が己を窘めた言葉が脳裏を過った。
『幸村は善い男ですぞ』
 兼続の言葉はいつも景勝の心を後押ししてくれる。幸村に抱く想いとは異なれど、兼続の存在もまた、景勝にとってなくてはならないものなのだ。

「幸村、」
 呼びかければ、幸村はびくりと身体を震わせた。それが寒さのせいではないことは分かっていたが、どう彼を気遣えばいいのか分からなかった。怯えるな、拒むな、儂はただ。
 声に出来ればよかっただろうに、景勝の喉は閉じられたまま、口許は固く引き結ばれたままだった。
 景勝の手が幸村の手首を掴む。寒いと頷いたことは嘘ではなかったようで、彼の身体は随分と冷えていた。雨を吸い込んだ上着を脱いだとはいえ、着物も湿り気を帯びているのだ。体温を奪われるのも当然だ。
 幸村は景勝の目を見上げていた。まるで子どものようだな、と思ったのは、あまりに真っ直ぐに見つめてくるからだろう。景勝の目だけを、幸村は見つめている。そこに鏡のように映る己を覘き込もうとでもしているかのようだった。

「近う幸村。近う、」

 幸村の大きな目が、更に見開かれる。景勝自身、己の口からそんな言葉が出るとは、出せるとは、思いもよらなかったのだ。拒絶されるだろうか、あまりに必死に求め過ぎているだろうか。縋るように、幸村を見る。その目に己はどう映っている。そなたしか見ていないわしの目を、ただ無心に眺めるその目に、

 幸村はふわ、と微笑み、はい、と先よりも大きく頷いた。幸村が腰を上げ、景勝との距離を詰める。もっと近くに、触れ合う程近くに。景勝は握ったままの彼の手首をぐいと引っ張った。思った以上に力がこもってしまったようで、幸村の体勢が崩れてしまった。わっ、と咄嗟に手をつこうとする幸村の身体を、両腕を広げて抱き留めた。
「す、すみません、」
「いや、」
 幸村の顔を抱き込むような恰好になってしまった。こういうつもりでは全くなかったのだが、と、景勝が必死で言葉を探している最中、幸村はくすくすと笑い出した。
「あたたかい、です」
 幸村の頭が己の胸にこてんと転がる。景勝が抱き締めている両の腕の力を僅かに強めれば、幸村もそれに応えるように、景勝の着物を握り締めたのだった。

2014/04/21(Mon) 00:39:53


(No Subject)

どうも莉緒です。パチパチありがとうございます。近いうちに返事させて頂きます。


っていうかね!書きたいことが全然書けてないわけですが。書きたいとこだけ書くのコンセプトのはずが、どうしても前振りが長くなってしまうのはどうにかならないだろうか。。。

流浪の方で4武器集めてます。我ながら邪道だなあ、と思いながらも、楽なんでついつい。ミッションコンプも難易度下げてたので、やってやったぜ!とか、ハラハラ感がどうにも物足りない感じ。"難しい"からしか発生しないミッションとかあっていいと思うなあ。OROCHIの鬼のような難易度に比べると、なんか生ぬるく感じてしまって。
あ、流浪のやつで、忠勝さんメインにした時に信之さんサブにしたら、義父上って呼んで、びくんっ!てなりました。そ、そうだよね、そう呼んでいいんだよね。違うことばっか気にしてて、全然そこまで気が回らなかった。なんか幸せな気分になりました。忠勝さんを父上って言えるのいいな。
あ、あと、今更ですけど、高虎サンと秀長様との蜜月はどうなったんですか?豊臣時代スルーして徳川さん家のわんこになってて、なんかザワっとします。別にいいんだけど、いいんだけど。個人的に藤堂高虎って言ったら、秀長様と超らぶらぶのイメージがあったので(…)、なんていうか寂しいです。くろにくるでは超番犬してたと思うんですけどね。尺の関係でしょうか。
あと、特に設定公表されてなかったのに勝手に捏造しといてなんですが、幸村下戸設定なのかああああ。どうにか別解釈出来ないかうんうん唸ってます。別に寝ちゃっただけで下戸とは言ってないし。あれだよ、焼酎と見せかけて強烈な睡眠薬だったとか、、、うーん、強引。





という、全く関係のない話の下に、書けるだけ景勝様×幸村書きます。展開のレパートリーが少ないのがよく分かるね!明らかに白い鬼とかぶってるね!わたしは気にしない!(…)





 馬のたてがみを撫でながら、幸村は息を吸い込んだ。空気が少し湿気を帯びているような気がしたのだ。はっきりとした確信があったわけではなかったが、もしかしたら、という予感はあった。己一人ならば大して気に留めなかっただろうが、今日は景勝と遠駆けを共にすることとなっている。雨に降られては、と思い幸村は口を開こうとするが、それよりも先に、見送りに出ていた兼続が、あの朗々とした声で、幸村、と思わず背筋を伸ばしたくなる声音で呼ばった。
「今日は一日晴れるよ、快晴だ。楽しんでおいで。景勝様を頼んだよ」
 景勝様は支度がお済みだ、と、既に馬に跨っている景勝の姿を視線で示されて、幸村も慌てて足をかける。
「晴れですか?」
「ああ晴れるとも。私の勘はよく当たるよ。かの諸葛孔明のように天候を操ることは出来ないが、天候を読むのは私の仕事の一つだからね。心配せずに、存分にはしゃいでおいで」
 幸村は思わず空を見上げた。確かに、雲一つない快晴だ。澄んだ青が広がっている。ならば己の勘違いだろうか、と腑に落ちないものを抱きつつも、兼続がそう言うのならば、と簡単に兼続に礼を取って、待っている景勝の横に並ぶ。景勝からの言葉はなかったが、いかにも彼らしく深く頷くものだから、幸村もついつい口許を緩めたのだった。





その頃の真田家

(第一次上田合戦後。稲姫は既に嫁いでいますが、今回は不参加です。人質として再び戻った後で、上杉領の一揆鎮圧に幸村も参加した、とか、ご都合主義な下地があります。…多分、書かないけど)


「ご報告でーす」
 と、くのいちの忍びらしからぬ明るい声から始まる、軽く十は超えている、上杉家での幸村の暮らしぶり報告会が今日も始まった。幸村は世渡り上手だ。計算しているのではなく自然体であってそれをこなしているものだから、最早才能の域だろう。幸村のそつがない性格をもちろん家族は重々に知っているが、それでも心配なものは心配で、人質として上杉家預かりになった手前忍びを付けるわけにもいかず、こっそりひっそり様子を見に行くくのいちの報告を聞くのが、習慣になりつつあった。上杉家の名物宰相である兼続と親しくなるだろうな、というのは大よそ予想通りだったとはいえ、まさかあの上杉景勝や綾御前といった一癖もふた癖もある上杉家の重鎮にも気に入られている、という報告は、信之を喜ばせるやらなにやら不安にさせるやら、だ。どうにも人に好かれ過ぎるきらいがある、ということに、信之は最近になって少しの不穏さを覚えている。

「今回はすっごいですよ。いっぱい情報仕入れて来ましたから。もう大漁大漁。ちょっと信之様には刺激が強いかもしれないですけど」
 意味深げににししと笑うくのいちに、信之は早速こめかみを押さえる。
「まずはですねー、あの上杉景勝から刀を賜ったとかなんとか。一揆鎮圧で大活躍しましたから」
 上杉景勝は刀の収集に熱心だ。有名な話でもあるので、信之もそういうこともあるだろうな、と軽い気持ちで聞いていた。
「んでお次は、お屋敷と禄を賜ったとかなんとか」
 ん?と信之は父と顔を見合わせた。聞き間違えたのかな?言い間違えたのかな?と、くのいちに視線で訴える。その反応は想定されていたようで、くのいちはにんまり笑いながら、
「お屋敷と禄を賜ったそうですぜい、旦那」
 と、いかにも楽しげに笑った。
 どういうことだい?と信之の追及に、諸事情は不明です!とさっさと天井裏に姿を消したくのいちだったが、あ、言い忘れてました!と再び天井から顔を出した。逆さまにぶら下がっているので、いつもきれいに束ねている髪の房も垂れ下がっている。

「好きな人が出来たみたいです。相手は、」
「相手は?」
 くのいちが信之を見、父の昌幸を見、先ほどとは比べものにならない程にんまりと、むしろ意地の悪いと言いたくなる程の悪ガキ面で笑ったくのいちは、
「秘密でっす」
 と、再び頭を引っ込めた。分からないならまだしも、秘密となれば相手を知っている可能性が高い。町娘や家臣の娘、出入りの者から熱をあげられることのある幸村だが、幸村本人からそういった類の話を聞いたことはない。これはいよいよ、と無意識に腰を上げていた信之は、くのいちの最後の報告に見事に打ち砕かれた。

「あ、ちなみに男ですぜ」

 蝶よ花よと育ててきた、少々天然過ぎる弟が。大事に大事に、変な虫がつかないように、変な方向に進まないように慈しんできた弟が。男、よりによって男に惚れたのか。あの武田家の中ですら守り切った可愛い可愛い弟が、そちらのアプローチ(おおっと南蛮語だ)から必死に防御してきたあの弟が。物腰が柔らかすぎるせいで、女性的とは言わずとも、安らぎを求めて男に惚れられることもあった弟だが、一度としてそれに応じることのなかった、健全の中の健全、健全の代表を行くような弟が。あの格式高い上杉家で何を覚えてしまったというのか。

 ぶつぶつと一定の調子で呟く信之をよそに、昌幸はのんきに言い放った。
「衆道の気はなかったはずじゃがのう。あったらとっくに、信玄公に食われておったろうに」
「父上!そのようなことは、言わないでください!考えないでください!私たちの源二郎が、」
「もう子どもではないぞ。よいではないか、何事も経験じゃ」
「そのような経験せずとも、立派なもののふに育ちます!」

 温度差のある家族会議に、高みの見物とばかりに天井裏から見下ろすくのいちは、もう一度にししと笑みを作ったのだった。





***
恋するくのちゃんもかわいいですけど、ほもカップルに矢印向けるのが可哀想だったんで、無印仕様です。
でもって、やっぱり肝心の景幸が薄いです。
明日!明日頑張る!

莉緒
No.1990 2014/04/16(Wed) 00:14:24


景勝×幸村 その1

どうも莉緒です。
景勝様×幸村がずっと書きたかったので、行き当たりばったりですが、書きたいと思います。創作戦国の時から、景幸のイメージは、初恋で、胃もたれするぐらい甘くって、叶わない恋なので、まあ多分そんな感じになると思います。
景勝様とのラブラブ春日山生活をとると、兄上と稲ちんとのほのぼの家族計画が実現しなくなりますよね。ただ、作中でも、稲と幸村が一緒に生活してたっぽくなってるので、景勝様との親睦を深めよう生活はなかったことになってるんでしょうか。アニメでは一応人質になってたのに、第一次上田合戦終了後、そのまま真田さんちで暮らしたっぽいですね。そこんとこ、どーなってんの?こーえーさん。





 景勝が、真田家から人質としてやってきた幸村を気に入っていることを覚るなど、常に景勝の傍らにある兼続には容易なことだった。一日の雑務の予定を聞き、その最後に、そう言えば真田の、と言葉少なに幸村のことに触れる。始めの頃は幸村の、予定とも言えぬ些細な日程を告げていた兼続だったが、気になるのならば側に置いてはどうか、と、今では小姓の代わりを務めさせている。武田家でよくよく教育されていたようで、勝手は違えど細々としたことに気が付く幸村にはぴったりの仕事のように思えた。どうしても多忙で細かなことは後回しにしてしまう兼続の代わりに、景勝の部屋の面倒をよく見てくれた。花が枯れかけていれば新しいものに、誰もが放置していた部屋の掛け軸は季節にあったものに取り換えてくれる。景勝の機微は他人には難しいらしく、兼続が息を吸うのと同じように覚る景勝の言葉も、余人には手に余るものらしい。女中に世話をさせてもどこかしっくりこない有り様であったので、兼続は幸村の才能に密かに喜んでいた。

 景勝は、家臣たちにはわかりにくく、兼続にとってはこれ以上分かりやすい方法はない程に明瞭に、幸村を気に入っていた。残念ながらここ上杉に、兼続のように景勝の短い言葉から真意を読み取れる者はいない。その全てを兼続に任せている状態で、どちらかと言えば、景勝と家臣たちとの間には距離がある。それは威厳を保つ為の距離でもあり、いざという時の鶴の一声に効果をもたらす隙間だ。だが幸村は、景勝が、そして家臣たちが最早諦めていた距離を容易に飛び越えて、景勝の傍にあった。決して全てを理解しているわけでもなく、勘違いも確かにある。だが幸村はそれでもめげずに景勝の傍にあって、その一つ一つを丁寧に読み解こうとしている。景勝が気に入ったのはそこだろう。

 では幸村はどうだろうか、と兼続は思う。父は人を謀ることの名人であったが、その息子であり確かに血を引いているはずの幸村には、その片鱗すらない。誠実な好青年というのが概ねの感想であり、おそらくそれは正しい。ただ、それだけかと言えば、そうではない底の深さを感じるのだ。決して打算ではないだろう。上杉に取り入らなければという下心ではないだろう。確信に近いものがあったが、だが全く計算していないとは言い切れない、どっちつかずの曖昧さが幸村にはあった。ただ、どれをとっても誠意があるのだ。真っ直ぐなのだ。厭らしさだとか、妙に意識をしている風でもなく、彼はあくまで彼らしくあって、自然体のままであるような、そんな雰囲気なのだ。

『おそろしくはないかい?』
 その日、兼続は少し意地悪な質問をした。滅多に表情を緩めぬ景勝のその形相は、見慣れている上杉の者ですら、時折びくりと肩を震わせる程なのだ。
 幸村は最初、何を問われたのか分かっていない様子だった。兼続が苦笑交じりに、景勝様のあのお顔だよ、と告げれば、ますます首を傾げていた。人の目をじっと見て話す癖がある幸村だが、案外に人の顔全体は見ていないのかもしれない。
『……そのように思ったことはありません。ただ、』
『ただ?』
『いつも厳しい顔をなさっているので、少しは肩の力を抜かれてはどうかと、微笑まれたらきっと可愛らしいだろうにと、』
 すいません、不遜を申しました。と、幸村はお手本のような礼をして、その会話を打ち切った。少しばかりあっけにとられた兼続だったが、次の瞬間には膝を打っていた。これは面白なことになるぞ、と、予感を抱かせるには十分だった。





***
とりあえず触り。果たして続きは書けるのだろうか。というか、続きになるのだろうか。。。景幸って言っておきながら、二人とも出てきてないし。。。

莉緒
No.1988 2014/04/14(Mon) 23:44:18

      
景勝×幸村 その2


 兼続が景勝から、書簡の署名を指示している時のことだった。景勝の自室に二人以外の人影はなく、景勝が筆を滑らせる音だけが響いていた。
「兼続、」
 と、景勝が常と変らぬ平坦な声で話しかければ、兼続は心得たもので、
「はい、幸村は今日はこちらには参りませぬ。御前の供をしておりますれば」
「……母上の、」
「本日は天気もよく、舟遊びをされると。お前たちばかりが幸村を占領してはいけません、と、早くに出掛けられました。幸村は山国育ちですから、舟と聞いてそれはそれは楽しみにしているようでした。先を越されてしまいましたな」
「……」
 景勝は押し黙り、さらさらと花押を描く。兼続は横目でそれを眺めつつ、固く結ばれた景勝の口許の力強さに、少しばかり笑みを浮かべる。悔しがっておられる、と兼続は珍しい感情を浮かべる主の新鮮な姿に嬉しくなった。
「近いうちに遠乗りに連れて行ってやりましょう。海も良いでしょうな。寒くなる前に、少し都合を調整してみましょう」
 景勝は決して顔を上げなかったが、小さく「うむ」と頷いたことを兼続は見逃さなかった。
「随分と気に入られたご様子。私も日々楽しいです」
「…分かるか」
「はい」
「儂は幸村を好いておるのやもしれん」
「それも良いことでしょう。幸村は善い男です」
 景勝は筆を置いて、今書き終えた書類を兼続に手渡した。ああ言葉を探しておられるな、と兼続は景勝が言葉を見つけるまでじっと待つ。
「儂が求めれば、あやつも応えざるを得ん。だが、権力で言うことをきかせたいとは思わん」
「それこそ杞憂と言うものです。幸村はそのような不誠実な男ではありません」
 景勝が、どこか縋るような眼で兼続を見つめる。本当にそうだろうか?そう言い切れるだろうか?儂もお前も忘れているが、あれは人質だ。真田家から送られた、真田との細い細い繋がりをどうにか繋ぎ止めるためだけに送られた、人身御供だ。

「景勝様」

 景勝の思考を察知した兼続は、柔らかくけれどもはっきりとその妄想をさえぎった。

「それこそ心配無用。幸村はそれを含めて、まこと善い男ですぞ」

 幸村は常に自然体だ。綾御前が気に掛けるのも、そこに起因するのではないだろうか。人質という負い目も、権力という圧力にも、幸村は屈しまい。幸村がそれを求め、是とした時にしか、景勝の想いに応じないに違いない。それでは本当に欲しいものが手に入らぬ、と権力者は言うだろうか。けれども景勝は、そんなもので手に入るものなどいらないのだ。
 水のような男だと思う。するりと人の心に溶け込み、けれどもそこに不自然さはない。烏滸がましさはない。
 火のような男だとも思う。上田での戦振りは、まさに炎のような攻めと形容するのに相応しく、苛烈であり鮮やかであり、痛烈であり容赦の欠片もなかった。
 ああだけれども、空気のような、とも言えるな、と兼続は思う。そのどれもが当てはまるようで、そのどれもが幸村の全てを表現しきれていないような気がするのだ。幸村の本質は見えにくい。輪郭がぼやけていて、その姿は曖昧だ。それこそが本当の、幸村の真意なのかもしれない。


「明日にでも遠駆けに行かれてはどうでしょうか。きっと晴れます。晴れるに違いありませぬ」





***
なんか色々ぶつ切り状態ですけど、今日は眠いんで、見直しはまた明日。うん、するよ、するったら、うん。。。

2014/04/15(Tue) 00:58:20


(No Subject)

真田兄弟の話。
明るくはないです。
あと、大坂の陣を捏造してます。例によって、相変わらず、懲りもせず、です。





 幕府軍と豊臣軍との和議もなり、大坂に仮初めの平和が訪れていた。敵味方と分かれていた信之と幸村が顔を合わせるには外聞が悪かったが、誰かに仲立ちを頼んだとて、こっそりと面会したとて、悪評が立つのは確実だった。信之は面倒な前者より、普段ならば避ける後者を選んだ。関ヶ原の戦から約十五年。信之の徳川の忠誠は揺るがぬものと言われ、徳川からの信頼も厚い。世間がなんと言おうとも、信之が一言家康と秀忠に詫びれがそれで済んでしまうだろう。それぐらいの余裕はあった。関ヶ原の戦いの折、弟と刃を交えてまで秀忠を守り切ったその功績を、誰よりも秀忠が重く受け止めているようだった。信之としては、打算のない行動であったのだが、今の己が当時を振り返れば、どう考えても下心を抱かせる選択だった。その打算が現在に繋がっているのだと思うと、信之の心も暗くなった。

 思えば、己の守りたかったものはなんであったのだろうか、と。幸村のことは私が守るよ、とそう言っていたこの口で、せめて幸村のことは私が討ち取る、討ち取らねば、と、己に強く強く言い聞かせている。初めから分かっていたことだったのだ。あの強い弟は、己では到底守り切れまい。守らせてはくれまい。常に私の先へ先へと行って、息を切らせて追い付いたと思えば、汗ひとつ掻いていない涼しい顔で信之に笑いかけるのだ。最初から分かっていたことだ。誰よりも信之が、そして幸村が。分かっていたのに口に出さずにいられなかったのは、少しでも幸村を繋ぎ止めておきたかったからだろう。幸村は、どう感じていたのだろうか。出来もしないことを口にする兄を、内心で憐れんでいたのだろうか、煩わしく思っていたのだろうか。そのどちらでもないと確信があるからこそ、信之はどうすることも出来なかった。
"私がお前を守るよ"
 そう告げた時の幸村は笑んでいた、喜んでいた。
"はい。わたしも兄上を守ります"
 幸村は心から笑っていた、嬉しいと感じていた、幸村に重りをつけようとする信之の情を幸村は誇りに思っていた。分かるのだ、それは、それだけは。


「兄上、」
 と、思考の中に落ちていた信之を、幸村の声が引き上げる。久しぶりに聞く声だったはずなのに、昨日の夜もその声を聞いて眠ったような気がして、信之の反応は緩慢になった。

 他愛もないことを語った。九度山での幸村の暮らしぶり、麓の村の者たちとの交流や家臣たちとの日常は、信之の心を温かくさせた。どこでも簡単に馴染んでしまう幸村が、不便にしている様は想像出来なかったが、本人から聞くことで安心を増大させた。
 信之は政治の話には一切触れず、稲との日常は語った。相変わらず一本気で、相変わらず猪突で、それゆえ愛しいと。子も随分と大きくなった。何故かお前に似ていて、稲も流石に苦笑していたが、幸村の母になったような心持で最近では嬉しいです、と、明るい笑顔を見せていた。

 幸せだと思う。それでも、己の望んだものが手の内にあるかと言えばそうではないのだ。欲の深いことだ、と信之は思うが、いやいやこんな些細なことを手の平に掴もうとしているだけだ、とも思う。頼りになる家臣がいる、可愛らしい妻がいる、将来が楽しみな子もいる。そこに、仲の良い弟とのひと時を加えたいと思っているだけだ。

「幸村」
 先の和やかな空気とは違う、張り詰めた声になってしまった。幸村もそれに気付いているだろうに、警戒せずに、身構えずに、信之の世間話に柔らかく相槌を打っていたその声と寸分変わらず穏やかさで、
「なんでしょうか」
 と、返事をした。
 すっと距離を詰める。幸村の手に触れる。鍛錬で出来た手の平のでこぼこは信之のよく知るもので、見た目に反して低い温度の手の平も、信之のよくよく知っているものだった。お前は変わらないな。変わることを強いと呼ぶ者もいるが、お前の変わらないことを貫いたその決意も強さだと私は思うよ。

「帰っておいで。名前も自由もなくなってしまうけど、また私と一緒に暮らそう。稲もそれを望んでいる。なに、心配はいらない。幕府に文句は言わせないよ。秀忠様は話の分かる方だし、家康様もお前のことを気にかけてくださっている。絶対にうまくいくとも」

 幸村はじっと信之の目を見つめる。どんなに人の死を見ても、どんなに醜い戦を眺めても、どんなに絶望を知っても、曇ることを知らない澄んだ目だ。

「私の幹で咲いてくれ。散っても次の年にはまたを花をつけ、また散って、咲いて。共に生きよう、共に老いていこう。幸村、幸村、」

 まるで懇願するように幸村の手を握り締める。幸村はただ穏やかに笑っていた。分かっていたことだ、分かっていたことだ!幸村はこの手を掴まない、縋らない。そうするのであれば、それを望むのであれば、十五年前のあの日、己の前を去ることはなかっただろう。己に刃を向けることはなかっただろう。変わることをついぞ選び取らなかった幸村は、

「兄上の想いは嬉しく思います。けれど、やはりわたしは兄上の元に帰ることは出来ません」

 何故、と問うことはなかった。理由などあるだろうか。信之が真田の家を守るように、幸村は幸村しか守れないものがあるのだ。ただ、それだけだ。それだけのことが、自分たちをこんなにも隔てている。

「兄上の元で咲ける者たちは幸せ者です。そこにあるだけで、兄上の情が頂ける。どのように咲いても、いえ、咲かずとも、兄上は慈しんでくださる」

 それならば、と信之は視線で訴える。
 けれども、と幸村は視線で応える。

「人の一生のうち、一番輝いている瞬間が、散るその刹那であるのなら、」

 幸村は言う。信之は彼の言葉を封じる術を持たない。

「その一瞬を、わたしは兄上にこそ見て頂きたい。この幸村が一等輝いている瞬間を、誰よりも兄上に知っておいて頂きたいのです。兄上の幹にあっては、咲いたことを知ることは出来ても、見て頂くことは出来ませんから」

 花は何度も枯れ、何度も咲きます。散るのは次の生の為、次の己の為だと聞きました。わたしは、そんな生き方は出来ません。次の生へと繋ぐ為の力すらもわたしは使い切って散りたい。

「お前はまったく、強情な弟だ」
「お恨みくださいませ。馬鹿な弟だと、呆れてください」
「そんなこと、」
 出来るのなら、当にしているよ。

 そう心の中で呟きながら、そっと幸村を抱き寄せた。お前がどのように散ってしまっても、私の大事な大事な弟であることに変わりないのだよ。その事実は。神様だって仏様だって、覆せやしないのだよ。




***
…私はこういう話を書こうとしていたのだったか。
思った以上に話が長くなってしまったので、見直しは明日します。誤字してますが(多分)、心の目で読んで下さい。

莉緒
No.1987 2014/04/14(Mon) 00:51:20


(No Subject)

どうも莉緒です。
4はとりあえず一段落しました。無双でプレイ時間が100時間超えたの久しぶりです。やったったで!感がすごいある。発売日から今日まで無双のことばっか考えてたからなあ。
ミッションとイベントと、プレイキャラも全シナリオで使ってトロフィーもらえたので満足です。まだちょこちょこトロフィー残ってるので、珍しくコンプ目指してあとはのんびりしようかな、と思います。

で、あれやらなきゃ、これやらなきゃの楽しい圧迫感から解放されたので、そろそろちょいちょい何かしら4キャラで書きたいな、と思います。
まあ、近いうちに。多分、おそらく、きっと。

莉緒
No.1986 2014/04/13(Sun) 20:58:45

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