元々スクラップ用に書いてみたんですけど、なんかうまいこと文章が繋がらなかったので、ここでリサイクル。
バサムソでダテサナで幸村が女の子です。 色んなパターン考えてるので、これは候補その1です。 っても、幸村はまだ出てきてません。出てくるまで書けませんでした。小十郎に歳相応の言葉遣いする政宗様って可愛いなって思って書いたので、ダテサナ要素は皆無です。
強い女が良いと思う。己の言動や雰囲気がきつい印象を与えることは分かっているので、己の一々に怯えたりめそめそと涙するような女では無理だろう。けれども、あの母のような、男すら裸足で逃げ出す程の、度胸を持った女も厭だ。女が政に口を出すなとは言わないが、我が物顔で踏ん反り返られても困る。この国は己のものであり、あの女は、結局はただの女でしかないのだ。
可愛げのある女が良いと思う。己は見栄っ張りであるから、やったプレゼントに一々喜んでくれるような、もちろんそれが本心であれば万々歳なのだが、どこか頭の足らない女であっても良い。可愛がられることに素直に喜び、けれどもそれに驕らない飾り物のような女が良い。
ああだけれども。出陣の一々に心配するような姫は厭だ。そんなことで心配していては心の臓がいくつあっても足りないだろうし、何より己が鬱陶しい。留守はお任せください、と笑顔で送り出してくれる女が良い。多少の薙刀の心得があれば頼もしいではないか。
政宗の理想像を聞いた小十郎は、しばし頭を抱えた。理想が高いというわけではないが、そんな姫は特殊だと思ったからだ。政宗の母であり、鬼の異名を取る義姫のような女は早々いない。その点はご安心くだされ、と言えるのだが、精々それだけだ。ただ、主の口から女の美醜について言及がなかったことは、少しばかり小十郎の意識を引いた。美意識の高い主であるから、そのことに触れるものとばかり思っていたのだが、己の世継ぎを生む女の顔には興味がないようだった。いや、それを言うのであれば、女の素性や家柄についても全くどうでも良い様子であった。主は主なりに、政治の道具にされる女を憐れに思っているようだった。
「で、だ」 小十郎に背を向けて胡坐に肘を立てていた政宗が、ちらりと小十郎を振り返った。強面だの、幼子が見たら泣き出すようなおっかない顔だの言われる小十郎だが、政宗は彼の顔が好きだ。いい男だと思うんだけどなぁ、と政宗が思っていることなど知らない小十郎は、生真面目そうに顔を顰める。確かに、眉間に皺を寄せてこちらをじっと見つめるその視線の強さにたじろぐこともあるが、迫力があるということは、それだけ整っているということではないだろうか。 「俺の条件を聞いた上で訊くけどよ、お前の手に持ってるもんの中に、そういう女はいたか?」 ぐ、と小十郎が顔色を曇らせる。条件をあれこれと言ってはみたものの、そんなあべこべな女がこの世に存在しているとは、政宗だって思っていない。ただ、嫁を娶ることに積極的になれないだけだ。何故かと言われれば、幼少期のトラウマが起因しているだろう。女は母になった途端化けるから厭だ。あんな厄介な生き物を近くに置くなど、面倒で厄介で、なによりおそろしいと思う。
「残念ながら、小十郎が見ましたところ、政宗様がお求めになるような姫君はおりませぬ。ただ、」 「ただ?」 「甲斐武田からの縁組の提案でしたので、耳に入れておかねばと思いまして」
あー、と深くため息をついて、政宗はがしがしと頭を掻き毟った。確かに、それは政宗に伝えておかなければならない。甲斐武田と言えば、今となっては天下人に一番近い存在であり、現在の同盟国だ。邪険にするわけにもいかず、ましてや無視するわけにもいかない。断るにしても、丁寧な対応をしなければならない相手である。面倒な相手だな、と言外に訴える政宗に、小十郎も咳払いをしてそれを窘める。分かってはいるのだけれど、
「で、あの甲斐の虎は、どんなお姫様を差し向けようとしてんだよ」 あの真田幸村が聞けば、無礼が過ぎますぞ、と拳の一つでも食らいそうな言葉だが、生憎とこの場にはいない。まああちらも、政宗の口の悪さは知っているだろう。 「それが、信玄公のご息女のようでして」 政宗の脳裏に、武田信玄の巨体がそのまま女になったような、虎というよりは熊のような女が浮かんだ。仁王立ちをして腕を組んでこちらを見下ろすその巨体の影は、己どころか小十郎の姿まですっぽり覆ってしまう程の大きさだった。 小十郎も同様だろうか、と思ってちらりと見やれば、彼は神妙な顔で佇んでいるばかりだ。ああ彼はそういう想像力が乏しいのであったか、と政宗は失礼なことを思う。 「甲斐の虎に娘がいたとは初耳だな。きっと逞しい姫君に違ぇねぇ」 「いえ。血の繋がりはなく、家臣の娘を養女にしたそうです。なんでも、日ノ本一の美姫であるから、そこらの男にやるには惜しく、光栄にも政宗様を見初められたようで。よかったですな、この小十郎、政宗の容姿が抜きん出ていることは重々承知しておりますが、それが他国の国主に認められたとなれば、鼻高々でございます」 「勝手に感動するな。そのせいで厄介事が舞い込んできたじゃねぇか」 大体、養女だろうが、娘になった存在だ。親の贔屓目がどこまで信用できるものか、政宗にとっては甚だ疑問だ。 「ではお断りするので?」 「断れる相手でもねぇだろ。あー、どうすっかなあ」 「では、一度お会いしては?甲斐の国への招待も兼ねての文でしたので、そのようになさっては」 「気が乗らねぇなあ」 適当な嫁を娶らなければいけないことは、政宗も分かっている。別段、その姫に不満があるわけでもなし、他に候補がいるわけでもなし、もちろん、娶りたい女がいるわけではなかった。だからこそ、決定打がないのだ。適当に手を打つと諦めているのであれば、武田との縁も出来て、確かに良い選択ではあるのだけれど、まだもう少し、その問題については放っておいてほしかったのかもしれない。女を抱いたことがないわけではないが、未だ女に心を許すことができないでいたからだ。 「真田からも文が届いておりますぞ。歓待役を仰せつかったそうで、是非とも出席してほしい、と」 「真田幸村も居るのか。なら、別にいいかなあ」 「常々思っておりますが、政宗様は少々真田に心を傾けすぎなのでは」 「だってよぅ、この前折角甲斐くんだりまで行ったってのに、あいつは不在だったじゃねぇか。あいつの造形は気に入ってんだよ。それに、別に心傾けてるわけじゃねぇって。あいつ、未だに警戒心が強いだろ?どうやって懐かせようかって、企むのも、案外楽しいぜ?」 はあ、と額を押さえて小十郎がため息をつく。政宗はそれを楽しげに見やって、ぽつりと一言零す。小十郎はため息を更に深くして、すごすごと退室して行ったのだった。
「せめて真田の縁者だったらなあ。甲斐国一の美姫って言われても納得すんだけどよ」 |
莉緒 No.1936 2013/04/17(Wed) 21:45:22
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