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おろち2 プレイ中です。

ネタバレ全開なので、ごりょーしょーください。







(No Subject)

蜀でお世話になってる間に、何かしら可哀想な目にあって、女の子になっちゃう幸村さんの話、とか妄想してるんですけど。ギャグです。全力でギャグです。シリアス?なにそれおいしいの?な感じの付きぬけたギャグです。
のっけからおかしいね、莉緒さんは女体化が大好きです。元から女の子!もいいけど、男の子→女の子へのシフトも好きです。女の子になっても、根っからのもののふなので、性格から言動から行動からイケメンのままです。
そこにムラッとする趙雲と、乙女化する政宗さんと、セクハラ魔からフェミニスト調の対応に変化する孫市、とかね。
寝て起きて変化してたんで、持ち前の能天気さを発揮して、そのうち治るだろうと放置してたら、その筋の人から、え、もう一生そのままだけど。宣告を受けて、表面は笑顔を保ちつつも、心の中ではorz状態の幸村さんとか。そのうち開き直ります。うちの幸村さんは抵抗する、ということができないので、なっちゃったもんは仕方ないけど、恨み言ぐらいは言うよ。って人。
で、周りの視線に静かに臨界点を突破して、おねね様直伝の説教(もちろんギャラリーは全員正座)とかするよ。

ちなみに、朝起きて、自分の身体が変化してることに気付いて、静かに天井見上げてしばらく佇んでたと思います。表面上は平静で、動揺してる風にも見えないし、叫んだりもしない。けど、かなりびっくりしてます。何を考えたらいいのか分からない程度に、動揺してます。見た目分からないけれども。
で、ご飯の時間になっても起きてこない幸村を心配して、政宗と孫市が覗きに来て、幸村の変化に気付いて、三人無言で見つめ合っちゃったりして、「・・・」な空気が流れてーの、政宗・孫市の絶叫で大騒ぎになります。「なにごとだ!」ってみんなわいわい幸村が寝泊りしてる幕内に駆け込んできて、やっぱり数秒静止して、幸村が一言「朝起きたら、こうなってました」とか至極冷静に言うもんだから、余計に騒ぎが大きくなって、収拾が付かなくなって、な一話。

折角幸村の武器にすさのお(漢字が分からん!!)があるので、そこら辺から色々捏造してます。あのすさのおが幸村の武器の化身というか、元々はあっちが本体だったんだけれど、武器として身を隠してたというか。んで、遠呂智のてんやわんやがあって、復活せなー、でも力足りひんねん。ご主人、ちょっと悪いけど、力貰うなーって感じで、幸村女の子になりました!無理があるね!でもある程度ならOROCHIだから、仙人とかいるしな!で片付くと思うんだ。うん。
だから、すさのおは幸村には逆らえません。幸村は、正直こいつのせいでわたし女性になってしまったんだよなあ、ってなるので、まあいい気分ではありません。なら、すさのおが槍に戻ったら、わたしも元に戻るんじゃ!と淡い期待を抱いてみたものの、いやこの姿に戻る時にそのエネルギー使ったから、もう無理ちゃん、ってなる。残念だね!

っていう下地での趙幸なんですが。私的に、趙雲は遊び人ではないけれども、関係を持った女の人は多いと思ってます。でも誠意はあるし、真面目だし、清潔感ある人。ちなみに、信幸兄さんもそんな感じ。明らかに真田さん家の太平記の影響を受けてます。

莉緒
No.1928 2013/02/28(Thu) 01:10:33


っていう話が読みたい。

さよポニ聴いてます。こういう雰囲気好きだし、こういう雰囲気の話が書けるといいな、って思うんですけど、暗くて苦しい話を書いてる時が一番テンション上がってるかもしれない。。。や、みんな幸せ!は好きなんですけどね!様式美というものなのです。未亡人ってなんかいいよね...と同じなのです。だから、しゃーないんです。


で、幸村が女の子な話なんですが。
小田原後、おねね様付きになって、幸村のお婿さんどうするー?って感じで話が持ち上がって。豊臣と真田との結びつきを強める為に子飼いの面々なんてどうよー、な感じで話が大きくなって。おねね様がこっそり、三成・清正辺りに、幸村お嫁さんにするのどう?的なことを訊いたら、案外色よいお返事だったんで、今度は幸村の方に、うちの子たちはみんな結構乗り気だから、好きなの指名しておくれよ、みたいなこと言って。

「わたしは、正則どのが良いです」

っていうところから始まる、正則×幸村。こういう変化球が好きなので。ぶっちゃけ、おねね様も子飼いの美形の二大代表を想定してただけにびっくりして、ついでに正則にも実は訊いてなくって。まじでかー、でもまあ、正則だったら断らないでしょ、棚ぼた、とか思ってたかもしれない。
ただ、ちょっと面倒な感じに食い違ってしまうんですが、正則は、豊臣の二大美姫では、甲斐姫派だったので。穏やかに家を守ってくれそうなタイプより、男勝りだろうが、少々男よりも男前だろうが、明るくて表情豊かな甲斐の方がいいな、って思ってた正則。
ただ、断るほどの理由もないんで、とんとん拍子で結納まで進んで、あっと言う間に夫婦になって。ちぐはぐな二人がちょっとずつ歩み寄って、最終的にラブラブカップルになるのが理想です。三成の屋敷襲撃事件も起きません、というか、幸村が起こさせません。

(既に武装済み幸村さんと裏口から抜け足差し足忍び足状態の正則)
「…どちらへお出でですか?」
「や、うん、ちょっと、な、」
「そうですか、てっきり三成どののお屋敷へと参られるものとばかり。前田様が亡くなられた矢先だというのに、どうにも厭な噂ばかりを聞くものですから」
「……」
「して、ご用向きは?」
「…や、まあ、大したことじゃねぇし、」
「夫の後ろを黙って歩くのが良妻と言いますね。確かにわたしは、良妻とは言えますまい。ただ、夫の不義を見過ごすことはわたしには出来かねますゆえ」
「……」
「どちらへ、お出でに?まさかとは思いますが、守るべき家族を討ちに行くと言うのであれば、その前にこの幸村と一戦交えてくださいませ」
「……」
「それで、さあ、どちらへ?」


…ラブラブカップル通り過ぎて、幸村恐妻化してるんですけどー。正則の奥さんと言えば恐妻なので、しゃーないかもしれません。




っていう話のやつと。

今度は三幸なんですけど、っていうか三幸と清正×甲斐なんですけど。

W結婚式を挙げたかったおねね様の思いつきから、それぞれ評判の美男美女組み合わせて、いい感じの雛人形出来るっていいよね!とおねね様超ハイテンション。ここでは、野郎サイドと女の子サイドとの面識はほぼありません。遠目でちらっと見かけた程度で、会話したことはない。
で、とりあえず婚約っていう形で。
清正は決まったとなればマメな男なので、ほぼ屋敷から出られない甲斐のところに何かと理由をつけて通ったり、手土産持って行ったり、そこそこの贈り物したりして点数稼ぎします。甲斐も言葉では、もー大袈裟なんだから、どうせ政略結婚でしょ、って言ってるけど、めっちゃ喜んでるよ。ここでは幸村と甲斐は同僚みたいな。おねね様のお屋敷で世話になってて、あんまり外出の自由はないけど、屋敷内は自由に使ってます。人質としてやってきた、まだ幼い女の子たちの教育係りを楽しんでやってます。なので、おねね様の屋敷は女の子いっぱいで華やかです。

清正とは反対に、三成はホント何にもしない。無視してんの?ぐらい気に掛けない。冷徹で鉄面皮な三成様なんですが、ちゃんと理由があるんです。実は小田原の戦前に、一度だけ兼続に連れられて大坂に来たことがあって、それを遠目で見た時から一目惚れしちゃって。なので、究極の照れ隠しなのです。
清正も三成が照れてるだけなことに気付いてるんで、三成をけしかけたり、甲斐に会いに行ったついでに幸村とちょっとおしゃべりして、三成に教えてあげたりするんです。んで、幸村の方にも色々アドバイスしたりしてます。三成って寒がりだからーって言うと、幸村が半纏縫ってくれたり。ただし、それを届けるのは清正だけれども。近い距離にいるのに遠距離恋愛みたいな感じ。ただ、みっちゃんは貰った半纏を汚してしまうのでは、と思って、部屋に飾ったきり、使わない。夜、自室に戻って寝る前にそれを眺めて、癒されての就寝。朝起きて、それ眺めてほわっと和んだり、もだもだしたりしてからの出勤、というスタイルに変わりつつ。それを左近から聞いた清正が、今度は幸村に、小袖とか仕事着に出来るようなものにしてやった方がいいって言って。幸村が喜んでせっせと作って。清正が届けて。というループ。いっぱい物貰ってんだから、そろそろお前もなんか送れよ、と言われて、渋々お菓子を清正に託したり、ちょっとした帯留めや筆や簪を送ったり、送らなかったり。こっそり屋敷まで言って、屋敷前にこっそり置いて行ったり。三成はシャイボーイなだけなんです。

そんな感じで、甘酸っぱい系の三幸と、いつの間にやら仲良くなってる清甲斐。ゆるゆると結納までの話になるかと思います。


まあ、書けないんですけどね!

莉緒
No.1927 2013/02/24(Sun) 00:21:37


"めでたしめでたし"で終わる話 つづき その2のおまけ

パチパチありがとうございます!
やっぱり明るい話の方が読んでてもいいですよねー。わたしもよそ様の幸せな話読むたびにほわほわしますし。
だからといって、そういう話ばかり書けるというわけではないのです。残念ながら。
ただ、このタイトルのは地雷なしですので。基本明るいよ!


↓の話のおまけ

※ベースは三幸
※幸村は病欠
※外野ががやがやうるさいのは、二人に幸せになってもらいたいからだよ、きっと。
※でもあんまりお上品な話じゃないよ。男連中が集まってちょっとお下品な恋バナしてるよ。
※最終的に、みんな仲良し!が目標



 幸村と長い間話し込んでしまい、幸村を寝かしつけて三成が宴の席へと顔を出す時刻は、随分と遅くなってしまった。既に場は無礼講の様相で、おそらく開始直後は親しい者や、元西軍・東軍などで分かれていただろう各々の輪は、くじ引きでもしたのかと三成が思ってしまう程、きれいにばらけていた。何より驚いたのが、兼続・左近の隣りには、清正・正則の姿もあった。政宗がどこか居心地が悪そうにしているのは、こういった席での緩衝材でもある孫市が欠席しているためか。兼続に丸め込まれたのか、彼の隣りにあぐらをかいて、ちびちびと酒を舐めている。高虎が不機嫌そうにしているのは、政宗に巻き込まれたからだろう。すぐにふらふらとどこかへいなくなってしまう宗茂も輪に加わっており、西軍・東軍もごった煮ならば、交誼のあるなしすらもごちゃ混ぜ状態だ。これが葬式のような空気であるのなら三成も多少納得できただろうが、兼続がやたら喋るせいなのかそこそこに盛り上がっていたし、なにやら皆が皆、親しげに見えるのだ。ただ、正直その輪に入って行く気にはなれず、適当な者に幸村と己は先に休むことを告げてさっさとお暇しよう、と思った三成を、目敏いというべきか、兼続が見つけてしまった。

「なんだ三成!遅かったではないか!むっ、幸村は一緒ではないのか!」

 と、がやがやと賑やかな場でも聞き漏らしようのないはきはきと通る兼続の声が、三成を手招きする。お前の為に席をちゃんと作っておいたぞ、とでも言いたげに、腰を少し移動させて、左近と兼続の間に三成分の間を空ける。何だかんだと兼続に甘やかされることに弱い三成は、その間に腰を落ち着けてしまうのだ。

「幸村は先に休ませた。体温が下がっていたからな、大事をとらせた」

 兼続にそう返しながら、結構な大所帯になっている輪をぐるりと見回した。先程まで、張り詰めた空気の中で評定をしていた面子だ。だというのに、今ではどこか緩んだ雰囲気でゆるりとそれぞれに寛いでいる。つい先日まで敵味方となって戦っていたというのに、なにやら妙な心地だった。処刑も切腹も取り潰しもなし。そう方針が決定した今だからこそ、このような雰囲気なのかもしれない。甘い決断をしたな、とは三成自身思う。ただ、三成が提案した結論に、反対の声はあまり上がらなかった。まだ幼い秀頼君も賛成に同意した一人である。この場にいる兼続も、そして幸村も、素晴らしいご決断です、とそう言って諸手を挙げて喜んでいた。時には、主を思って厳しい顔をしなければならない左近は反対していたが、心からのものではなかった。

「そう言いながら、お前が無理させたんじゃないのか?」

 清正の言である。確かに、清正から幸村を預かった際は、多少手足の自由が利かない程度で、体調を悪化させる前兆などはなかった。当然、三成に原因を求めるだろう。最後に幸村の姿を見た人間ならば尚更だ。それについては否定しきれぬところがあって、思わず三成は口を噤む。三成や兼続程ではないにしろ、ここに集まっている面々は、多かれ少なかれ幸村と面識のある者ばかりだ。自然、不在である幸村の話題に視線が集中した。

「ようやく本懐を遂げたのか、三成。いかにも機嫌が良いじゃないか」

 清正の、どこか揶揄した言葉に、今度は宗茂が乗っかる。機嫌が良い、とは多少自覚はあれど、そのように言葉にされてしまっては少しばかり居心地が悪かった。勘繰るように宗茂が三成の顔を覗き込み、兼続などはそれはよかったなあ、といかにも嬉しげに頷いている。幸村との間に何かあったと邪推されるのも御免だが、皆に機嫌が良いと筒抜け状態だというのも勘弁して欲しかった。そんなに己は分かりやすいだろうか。三成が墓まで持って行くしかあるまい、と覚悟を決めていた想いが多くの人間に露見してしまっているような気がして、なんとも釈然としない。

「本懐を遂げるのは結構じゃが、そのせいで幸村が迷惑を被るというのもどうかのう。治部どのもまだまだお若いことじゃ」
「ははは、若くて結構ではないか!三成はいつまで経っても青くさいからな!可愛いものだ!」
「そろそろ歳相応になってもいいと思うんですがね…。まあそれが殿の長所でもありますかね。そういう御仁だからこそ、幸村も変わったんでしょう」

 順に、政宗・兼続・左近だ。政宗と兼続が犬猿の仲だと言ったのはどこのどいつだ。この二人は、時折感心してしまう程、息が合うのだ。

「貴様ら!黙って聞いていれば勝手言いおって!確かに少々幸村と話し込んではいたが、貴様らの妄想するような事態にはなっていない!この俺が、幸村に無体をするわけなかろう!」

 殿、その弁解もなんかずれてます、と、すかさず入った左近のツッコミなど、誰も聞いてはいなかった。場のやり取りを面白そうに聞いていた正則が、ずいと身を乗り出して、

「えっ、幸村、押し倒したんじゃねぇの?」

 と、この場の誰よりも大きな声を発した。あまりの大音声に、各々雑談をしていた輪の外の者たちですら、三成たちを振り返った程だ。あー、と頭を抱える清正に、やれ面白いと性質の悪い笑みを浮かべる宗茂、他の面々も表情は様々だが、正則と三成を生温く眺めていることに違いはない。この馬鹿はいつまで経っても馬鹿だ。あんな大戦があった。敵味方と分かれて、もう語る言葉すらもなくなってしまったと思った瞬間が確かにあった。だと言うのに、この大馬鹿は相も変わらず大馬鹿だ。幸村は、あの大戦を境に変わる事が出来たが、変わらぬものがあるのもまた良いものだな、と、つと思った。

「……そのような真似、するわけがないだろうが!」
「にしちゃあ、遅かったんじゃねぇの?」
「だから、それは少し話し込んでいて」

 顔を真っ赤にして反論する三成に、皆もそろそろ期待していた事態になっていないことに気付いたのか、正則があっさりと身を引いた。こんな弁明で息を切らしている自分は何なのだ!と自分に憤りながら、まるで宥めるように横から左近に差し出された盃を受け取る。そうだ、酒の席なのだ。酒に強いやつらは、話をせずに酒を飲んでいればいいのだ。

「ま、三成にそんな甲斐性はないか」
「色恋に関しては、とんだヘタレだからなあ」
「慎重なんですよ、強引よりはいいじゃないですか」
「慎重を通り過ぎて、臆病なだけにも見えるがな」
「まあまあ。三成とて男だ。もしかしたら、告白の一つでもして、色好い返事がもらえたのかもしれませんぞ」
「そうなのか?告白ついでに、口吸いの一つでもやってきたのか?」
「三成にそんな度胸ねぇって!せいぜい一緒にいて、夕焼けがきれいですねー、月がきれいですねー、星がきれいですねーって言う幸村にうんうん頷いてただけだろ?」

 左近が満たした杯を一気に飲み干して、三成はじろりと一同を睨み付けた。ああ弱いんだから、一気はよしてくださいよ、とたしなめる左近の声など聞こえてなどいない。ははは三成、見事に目が据わっているぞ、と兼続が指をさして笑っている。誰のせいだ、誰の!

「貴様ら、好き勝手言いおって!俺とて、接吻の一つや二つ、」
「一つや二つ?」
「なんだ、したのか、したのか?」

 確かにあの時、あの瞬間、この唇は幸村のそれに触れたのだ。今更ながら事の重大さに気付いて、再び三成の顔が真っ赤に染まった。それも、先程の比ではない。顔から火が出るのではないか、という程だ。もちろん、ああこれは何かあったと察してください、と言っているようなものだ。

「なんだ、ようやくくっ付いたのか。それはめでたい!ほら三成、飲め飲め。今宵は本当にめでたい!幸村も共に祝ってやれぬのが残念だ!」

 そう兼続が言いながら、どばどばと酒を注ぐ。正直、先の一杯で既に酒の許容量はぎりぎりで、ぐわんぐわんと視界が揺れ始めている。零さぬように支えているのが精一杯だ。

「いらぬ世話だ。第一、その、まだ、想いを、告げて、いない」

 そうだ、まだ何も言ってはいないのだ。その事実に打ちのめされそうになりながら、何とか言葉を振り絞った。元々の融通の利かない真面目さが、兼続には嘘偽りなく知っていて欲しい、と主張したせいだ。本当はこそりと兼続にだけ告げたかったのだが、地獄耳と言おうか、そこは歴戦の猛者たちと言おうか。単純に三成をいじって楽しんでいるだけなのだが、見事に全員に届いてしまっていた。酒が入って、三成自身、感情的になっている。ついつい声が大きくなるのは仕方がなかっただろう。

「想いも告げておらぬのに、接吻したのか。三成、それは不義だろう。そういった行為は、愛が通ってこそのものだ。独り善がりでするものではないぞ!」

 もっともらしく兼続が説教を垂れる。確かに、兼続の言は正論だ。だがしかし、三成自身、己ばかりが責め立てられるのも不公平、と、酒の入った頭がそう意地を張った。己に近しい人間であるからこそ、兼続の言葉も真摯に受け止めるが、三成の本質を言えば、人にあれやこれやと忠告されたくはない性質なのだ。ついついそちらの本質が、酒精が入ってゆらゆら揺らいでいる境界線から顔を覗かせる。俺は別に、悪いことをしたわけではない。俺ばかりが悪いわけではない、はずだ。

「俺ばかりをそう怒るのは、それこそ不義だぞ兼続。幸村とて同じだ、幸村にも同じように講釈を垂れてやれ。確かに、うむ、俺からしたことではあったが、なんだ、その、幸村からも、仕掛けてきたから、な。うむ、うむ、なれば、相子ではないか。俺ばかりが不義ではないぞ、兼続。俺を不義と言うのなら、幸村とて」

 不義だろう。と、ゆるやかに語尾が消えて、次には三成の寝息に変わった。聞き耳を立てていた面々が、今のところもう一度!とついつい揃って身を乗り出したが、三成は既に夢路へと旅立っており、船を漕いでいた。左近が三成の手にある盃をそっと取り上げ、兼続が三成の身体を己へともたれ掛からせる。

「こうなっては、朝まで起きませぬぞ、皆々様」

 まったく、愉快愉快、と兼続は笑う。ここ大坂は、とにもかくにも平和だった。




***
人がいっぱい出すぎて、誰喋ってんの?状態ですね。お好きな声をあててください。藤堂さんは果たして喋ったのか。
こういう皆でわいわいは好きなんですけど、難しいですね。こうして皆、三成ってとっつき難いし面倒だし理屈こねくり回されるばっかで嫌だなーじゃなくって、三成いじり超楽しくね?って感じで仲良くなればいいんじゃないかな!みんな仲良し!が一番だよね!

ホントはこれに、稲姫も途中でログインさせようかと思いましたが、野郎だらけの中に放り込むのも可哀想だし、雰囲気ちゃうしな!と思ったのでやめました。気が向いたら、稲ちんも出したいと思います。

莉緒
No.1923 2013/02/06(Wed) 23:06:27


"めでたしめでたし"で終わる話 つづき その2のつづき

↓のつづき。

※ようやく三幸
※両片想い
※多分、超かゆい



「少し、話しませんか?」

 幸村はそう言って、縁側を指差した。この辺りの廊下は濡縁となっている。少し空を覗き込めば、丁度西の空が橙色から段々と夜の色へと移り変わっていく様が見えた。まだ秋と呼ぶ時分でもなく、陽が落ちるのは早くなったものの、空気にはぬるさが残る。長居をしても幸村の身体を冷やす心配もないだろう、と三成は幸村をまず縁側に座らせ、己もその横に腰掛けた。

「今日はお疲れ様でした。経過は順調ですか?」
「どうだろうな。皆が皆、満足する処置を行うのは難しい。西軍だったものも褒賞が少ないと不満があるかもしれんし、東軍であったのなら尚更だ」
「難しい問題ですから」

 幸村は三成から、外の景色へと視線を移す。三成も倣うようにして、空を見上げた。思えば、季節を愛でることすら忘れて、ここ数年を生きてきたような気がする。段々と陽の色が夜色に消えていく様は美しいと思った。物悲しいと思った。こんな風に一つの景色に心を揺さぶられるのも久しぶりだ。隣りに幸村が居るからだろうか。生きている。自分も、もちろん幸村も。死ぬつもりはなかったが、難しい戦であったことは事実で、幸村が関ヶ原に現れなければ、間違いなく西軍は敗れていただろう。よくぞ来てくれた、お前のおかげで勝った、勝ったのだ、と、喜んだのも束の間、幸村の怪我の状態に肝を冷やした。手足から温度が消え、そのまま己は死んでしまうのではないか、とすら思えた。血を流し過ぎたせいもあり、また、傷を負い過ぎたせいもあって、幸村は数日目を覚まさなかった。あの時ほど、おそろしかったことはない。敵軍が目前まで迫っていたあの時ですら、そのようには思わなかったのに。
 それでも、幸村は生きていた。生きている。目の前で息をして、穏やかな言葉をかけてくれて、あたたかい笑顔を向けてくれる。

「先程、高虎どのにお会いしました。宗茂どのや、政宗どのにも。皆さま、一様に言うんですよ。まるで憑き物が落ちたようだ、って」
「お前は、本当にいい笑顔で笑うようになった」

 幸村はふふ、と笑って、三成を振り返る。手に入れたかったものだ。彼に返してやりたかったものだ。彼の本当の笑顔を三成は見てみたくて、彼に手を伸ばしてほしくて。それが、目の前にある。たったそれだけ、と言う人間もいるだろう。たったそれだけのことかもしれない。けれども三成にとって、これ以上の幸せはないのだ。

「三成どののおかげです。あの時、生きることを諦めなくてよかった。三成どのと一緒に生きたいと思ったのです。だから、今のわたしはとても幸せです。こんな身体になってしまった、と気遣ってくださる方も多いですが、以前のわたしよりも、多くのことに気付くことができました」
「それは、幸村自身の持っている強さがそうさせただけだ。俺は、何もしていない」
「そんなことありません!三成どのの言葉が、よくよく身にしみました。あなたの側で、あなたと共に生きたい、と。そう思わせてくださったのは、他の誰でもない、三成どのなのです」

 言葉にするのは、少し、恥かしいですが。
 と、幸村は照れ隠しに、再び空を見上げた。三成は幸村の視線が外れても、彼の横顔を見つめる。共に生きたい、なんて、どんな口説き文句だろう。そんなこと、俺はいつも考えている。彼と出会った時からずっと、ずっと。自惚れてしまうぞ、喜んでしまうぞ。清正が言ったように、その首に紐をくくりつけて、これは俺のものだ、と、皆に自慢して回ってしまうぞ、と。幸村の火照りが移ってしまったようで、赤味を帯びているだろう頬を隠すように、そっと顔を伏せた。ここは戦場ではないというのに、きっといつまで経っても幸村に振り回されるのだろうな、と三成は思う。それも存外、悪くはない。

「俺も、先の集まりで言われたぞ。石田三成も笑うことが出来るのだな、とな。以前なれば適当にあしらうか無視するところだったが、そうだ悪いか、と反論してしまったのだが、相手の顔はそれはそれは見物だったぞ」
「三成がお笑いになることは、別段珍しいことではありませんのにね」
「俺は気心を許したもの以外には、あまり表情が出せんからな。指をさして笑ってやれば、まあ、場は和んだというか。正則が囃し立てたせいでそこそこ大きな騒ぎになった」
「それが、お嫌ではなかったのでしょう?」
「う、うむ。馴れ合うのも、案外に良いものだ」

 本当に、最近ではそう思うようになった。他愛無い世間話をするのも楽しいし、そうやって相手との繋がりを作ることも楽しい。自分を理解してくれるものだけで、分かる話をしていればいい、などと思っていたはずなのに、いつの間にやらしこりのあった連中と談笑していた。変わったな、と己ですら思う程だ。

「良い傾向です」
「幸村のおかげだ」

 ずい、と距離を縮める。幸村はじっと見つめる三成の視線に気付いて、合わせるように三成に目を向ける。一点の曇りもなく澄んでいる幸村の眸は、本当にきれいだ。この眸は、先の戦まで、ただ死ぬことばかりを映していた。美しく散るためだけに戦の流れを読み、人と人との思惑を読み、その中でおのれがおのれらしく、これぞもののふ、もののふの散り様よ、と称賛されるためだけに、彼は生きていた。その彼が、生きたいと言う。己と共に生きたい、と。戦に勝ってよかった。彼が生きていて、己が生きていたよかった。彼と生の喜びを共感できる、たったそれだけ、単純で簡単で当然のことを、ようやく彼と共有することができるのだ。

「お前の存在が、俺を変えたのだ。お前にはそれを知っていてもらいたい、分かってもらいたい。自負して、もらいたい」

 今度は三成が、照れ隠しに顔をそむける番だった。空からは既に橙色が消えていて、ゆっくりと夜の帳がかかっていく。濃い闇の色へと染まっていく。

「あっ、あれ、一番星じゃないですか」

 今までの空気を誤魔化すように、幸村が子どものような声を上げて、身を乗り出す。あまりはしゃぎすぎては落ちるぞ、と思いながらも、幸村が指さす方へと、三成も顔を覘かせる。見えんぞ、と三成が呟けば、もっとこちらへ、ほら、あそこの山と山の間の、と幸村が説明を加える。三成の方からは見ることが出来ず、無意識に幸村との距離を詰める。確かに、弱々しい輝きだが、青白く瞬いている姿を見ることが出来た。あったぞ、と、思わず幸村を見れば、よかったです、と言いながら、ほっとしたように、いかにも嬉しげに笑う幸村と目が合った。

(ああ、好きだ)

 そう思った。思ったがゆえの、あまりに無意識な行動だった。そろそろ戻りましょうか、と口を開いた幸村の唇に、己のそれをそっと押し当てていた。
 一瞬の静寂、
 三成ははっと我に帰って、慌てて口を離した。触れるだけの接吻だ。それでも、この想いはこの衝動は、墓まで持って行った方がいい、と、そう思っていた三成にとって、己の仕出かしたことは、あまりにも衝撃的だった。

「す、すまぬ幸村、おれは、その、」

 すまぬ、と、しどろもどろにもう一度繰り返すべく開いたはずの口は、あたたかいもので塞がれた。それが幸村の唇であったとは咄嗟に気付くことができなかった。幸村の唇はすぐに離れてしまった。言葉にならずに、ぱくぱくと口を開閉させることしかできなかった。幸村は

「これで相子です、ですから、その、謝らないでください」

 と、少し顔を伏せた。どういうことだ、と思わず幸村の手を取って詰め寄った三成の眉間に皺が寄る。彼の顔は三成と同じぐらい赤く染まっているというのに、手はまるで氷のように冷えてしまっている。陽が落ちて過ごしやすくなったと思っていたのは三成ばかりのようで、見事に幸村は身体を冷やしてしまっていた。先日も無理をして熱をぶり返したばかりだった。これはいかぬ!と幸村を引っ張り起こした。幸村も唐突のことに付いていけず、三成どの?!と先の混乱を引き摺っている。三成と言えば、先の大事件は、幸村の大事の前に吹き飛んでしまっていた。

「早く戻るぞ!そのように身体を冷やしてしまって!いや、これは俺の配慮が足りぬせいか。とにかく、早く戻って休め。今日の宴は欠席しろ。いいな」

 と、てきぱきと幸村の手を引いて廊下を進んでいく。抱えていこうと幸村に提案したのだが、既に手足の痺れはなくなっているようで、自分の足で歩いている。三成の本音を言えば、幸村に負担をかけたくはないから抱きかかえてやりたいところなのだが、幸村が己の足で歩けるうちはその意志を尊重している。無理な時は無理だと、ちゃんと伝えることがようやく出来るようになったからだ。

 足早に幸村の部屋へと戻り、忍びに幸村の世話を任せ、三成は三成で幸村の為に布団を敷いている。そんなことまでしていただかなくとも、と恐縮する幸村をよそに、したいからやっている、と幸村の要求を跳ね除ける。忍びの手によって寝る準備が整った幸村を布団に寝かせ、手足がはみ出さぬように丁寧な動作で布団をかける。あまり抗議の声が上がらぬということは、幸村自身も疲れていたのかもしれない。俺は至らぬところばかりだな、と苦笑しながら、幸村の髪を一撫でする。

「ちゃんと休むのだぞ?明日熱が出ていたら、絶対に布団から出てはいかんぞ」

 と、まるで子どもをあやすように強い口調で言う。されるがままの幸村も最後には苦笑していたが、少しばかりの抵抗にと、折角三成が仕舞った腕を三成に向かって伸ばしてきた。忍びが按摩をしたおかげか、体温を取り戻しつつあったが、低体温の三成が触れてもまだ冷たいと感じる程度にしか回復していなかった。早く良くなれ、とまじないをかけるように、そっと指先に口付けを落とし、至極丁寧な動作でまたその腕を布団の中に押し込んだ。幸村が被るように深々と布団の中でぬくまっている様を満足げに見やり、その場を後にした。宴はもう始まっているだろう。幸村の欠席を詫びねばなるまいな、と言い訳を考えている三成は、布団の中で真っ赤になっている幸村に気付かないのだった。



***
かゆいぃぃい!
読むのは好きだけど、書くとなると、あーしには向いてないわぁ。好きだから書くけど。

莉緒
No.1921 2013/02/04(Mon) 01:20:22

      
Re: "めでたしめでたし"で終わる話 つづき その2のつづき

この後、おまけとして、兼続と左近を筆頭に囲み取材される三成を書く予定です。ここに書いたのは、書くぞ!って自分を奮起させる為です。明日ぐらい頑張るよ。そろそろ短めにまとめられるといいな。

2013/02/04(Mon) 02:10:30


"めでたしめでたし"で終わる話 つづき その2

※3ベースなのに、2の幸村外伝後
※三幸
※二人だけじゃなくて、たくさんの人をハッピーエンドにしたいというのがコンセプト
※一個前の話から数話後の話
※順番に書けない/書きたいとこから書く、という異常状態から抜け出せない
※三幸!!!



 各国の首脳陣が続々と大坂城に登城している。先の戦で西軍についたもの、東軍に属したもの、当初は西軍でありながら、西軍を見限り東軍で戦ったもの。そういったもの達の処遇を言い渡す為の集まりだ。
 幸村もまたその輪の中に居なければならないのだが、長時間に渡るだろう論功行賞で正座していられる程の体力がまだ戻ってはおらず、大人数が一室に押し込められて、がらんとしている城内を歩き回っている。
 幸村の動きに合わせて、足首に結わえられている鈴がりんりんと鳴る。元々の性か、少しでも調子が良くなると散歩せずにはいられなくなってしまうようだ。それでも体力は前のように回復しておらず、城内を歩き回っている最中に疲れてしまい、その場に座って休憩する、というのが、最早幸村の散歩の一連の流れだ。放っておけばそのうちにまた歩き出せるようになるのだが、回復するにも時間がかかる場合もある。時には陽が暮れても城内の人通りの少ない隅っこで座り込んでいることもあって、夕餉になっても戻らない幸村を心配して城内を捜索されたこともあった。どこかで動けなくなってしまった場合の、居場所を知らせる為の鈴なのだ。女中や勤めの兵などはりんりんと音をさせながら歩いていく幸村を微笑ましそうに眺めている。気恥ずかしいと思う反面、誰かを頼る、ということを知った幸村は、割合、この犬猫につけるような鈴が気に入っている。


 評定は三日を予定している。日本全体を巻き込んだ戦の後始末だ、関わっていない家は皆無と言って間違いがないだろう。大幅に加増されるもの、減俸や領地替えを言い渡されるものもある。石田三成はこういった事務仕事をさせるにぴったりの贔屓をせぬ人であるものの、しばらくは不満の種になることは間違いない。それが戦にまで発展しなければいいな、と幸村は思う。もう自分の手足では戦場を駆けることができない。不思議と、もどかしいと思うことはなかった。最後の戦と見定めて、関ヶ原で思い切り暴れたせいだろうか。


 城内を宛てもなく歩いている途中、やはり手足に痺れを感じて、悪化する前にその場で座り込んだ。丁度庭に面しており、腰掛けるに退屈しなかった。縁側に足を投げ出して、頬杖をつきながら庭を眺めている。ここには戦火も届かず、秀吉が築いた当初の風景がそのまま残っている。既に夏の盛りも過ぎ、時折吹く風には秋の気配がある。庭に咲く様々な木々は、最後の命を振り絞るように青々と茂っており、陽の光りをきらきらと反射させていた。


 遠くで、がやがやと人の話す声が増えていた。おそらく、本日の分の評定を終えたのだろう。会って挨拶の一つでも交わしたい人々はいたが、今から評定が行われていた千畳敷きは幸村の足には少々遠すぎた。現状、腰を上げるのは億劫で、人々の喧騒を遠巻きに聞いていることになりそうだった。


 元々幸村は、人混みを避けることが得意だった。人の気配の少ない方、少ない方へと自然足が向かうらしく、そのせいで城内という限られた範囲ですら遭難する羽目になるのだが、縁側でぼんやりとしているだけでも、幸村同様に、人混みを不得手とするものが一人、また一人と通りかかっていく。その中に見知ったものの姿を見つけては声をかけた。
 幸村が話し掛けると、皆が一様にまずは驚いた様子でまじまじと幸村を見つめる。きっと足を不便そうに投げ出しているこの体勢のことに驚いているのだろう、と幸村はその視線を意図を訊ねなかったが、何人かは開口一番に口にした言葉があった。それを言われる度に幸村は、ふふ、と笑う。よく人を見ているなあ、と幸村が関心しているのをよそに、またその笑顔に驚いている様子であった。

 そういった反応を見せたのが、既に五人になるだろうか。彼の性格を考えれば、決してこんな人通りの少ない廊下を通らないだろう人の顔を見るなり、幸村は破顔した。生きてまた出会えるという事実が、こんなにも嬉しいものだと、幸村はあの戦の後、色々な事実に気付きっぱなしだ。
 足は庭先に出したまま、身体だけをひねって、その人へと向き直った。幸村が気まぐれに足を揺らすものだから、鈴がりんりんと鳴っている。

「お久しぶりです、政宗どの」

 政宗はやはり驚いた様子で幸村を見返した。立ったまま、一歩だけ幸村に近寄った。まるで猫が逃げ出さぬように距離を測っているようだな、と、幸村は場違いなことを思った。

「…久しいな幸村。なんじゃ、憑き物が落ちたような顔をしおって。一瞬誰だか分からなんだわ」

 ふふ、と幸村が声を立てて笑う。軽やかな笑い声に、政宗が遠慮していた距離を縮めて、その隣りに立った。長居するつもりはないようで、幸村の隣りに腰掛けることはなかった。

「六人目です、それを言われるのは。皆さま、よく人を見てらっしゃいますね」
「…怪我をした、と、聞いたが」

 政宗の顔が険しくなる。聞いてもよいだろうか、と探り探りのその様子が、上田の城で共に戦った時と変わらず初々しく、幸村は嬉しくなった。今まで盲目に生きていたことに後悔してはいないが、日々新たな発見をする喜びは幸村の心をあたたかくした。

「はい。腕も足も、もう戦では使い物にならぬようで。城内の散歩だけでこの体たらくです。この間なんて、城内の隅で休憩していただけで、危うく捜索隊を組織されそうになって。皆さまに迷惑をかけてばかりです」

 そう言う幸村の顔は明るかった。戦ばかり考えていた男だった。戦の最中でどのように華々しく散るか、そればかりを目標にしていた男だった。だというのに、手足が自儘に動かぬというのに、悲観した様子一つない。政宗が奇妙なものを見たとでも言いたげに顔を顰める。おそらく、幸村の心を読みあぐねているのだろう。

「戦は、もうなくなりましょう。だから、もう良かったのです。この手足が今もわたしのものであったのなら、わたしは先へ先へと駆けてしまう。留まることを知らぬのです。今も、そうなんですけどね。ただ、自儘に振る舞うことができなくなりました、遠くへ駆けることができなくなりました。そうしてわたしは、わたしの背中を追い掛けてくださる人がいることに気付いたんです。遠くへ駆けようと踏み出して、途中でへたり込んでいるところへ、差し出される手があります。わたしは、ようやくそのことを知りました。そのありがたさと、嬉しさを知りました。だからもう、良いのです」
「…最初から、皆そう言っておったじゃろうが。いつ何時も先陣を切りおって。そなたに続こうにも、そなたはいつも勝手に先へ行ってしまう。追いつくこともできんかったわ」
「ですが、戦で己の証を立てられぬ以上、少し焦りもあります。わたしはどうやって三成どののお側に立っていられればいいのか、と。戦しかとりえのないものですから、知恵も回りませんし、何より身体に我侭がききません。これから先、どうしようかなあ、と、ついついいらぬことばかりしてしまいます」
「それは、皆が常々悩み呻いていることだ。そなたはその苦悩を知ろうともせず、のうのうと気ままに生きておったくせに。今更のことじゃのう」

 不調法にて、お恥ずかしい、と。
 幸村は笑う。以前のように、笑顔の中に戦の薄暗さを飼っていたものとは違う。澄んだ眸の奥に戦火を燻らせていたものとは違う。目尻を下げて微笑む様は、少々頼りなくあるものの、あの整いすぎていた表情よりどれだけ良いだろうかと政宗は思う。

「それで、石田三成と加藤清正らの仲の取り成しに至ったわけか。傷も癒えぬくせに、北政所様に直訴しに行った、と」
「実際、取り成しをされたのはおねね様ですよ。わたしはそのきっかけを少しばかり工作しただけです」
「豊臣の将らは、そなたの話で持ち切りだったがの。完全な和解と言うには少々ぎこちなかったが、後は時間が解決してくれるじゃろう。確かに、これでは戦を起こす隙がのうなったわ」
「政宗どのがそう仰るのであれば、真実そうなのでしょうね」

「暇になって困る、か?」
「確かに今後の身の振り方を迷ってはいますが。少しずつ体力をつけて、少しの遠出ができるようにならなければ。先の長い話ではりますが」
「それならば、わしのところへ来ぬか?」

 政宗が片膝をついて、幸村の顔を覗き込む。軽口の類と思って幸村は政宗を見返したが、彼の一つしかない目は存外に真剣な色を帯びていて、思わず幸村は少しだけ腰を引いた。

「槍が振るえずとも、馬に乗れずとも、真田の軍略をわしは高く評価しておる。どうじゃ、伊達の兵を鍛えてはみんか?左門――小十郎の息子なんじゃが、やつも良い塩梅に成長してきてな、そなたに左門の師範を務めてもらうのもまた一興じゃ。どのような男に化けるか、楽しみじゃて」

 どうじゃ?と、今度はにやりと笑みを浮かべられて、幸村はその中にある彼の本気に気付く。だが、幸村自身、この大坂を離れること、正確には三成の側を離れること自体を一切考えていなかっただけに、彼の提案はまさに寝耳に水だった。そういう選択肢が己にもあること自体、今初めて気付いたのだ。

「わたしは、」
「そこまでだ、政宗!幸村を誑しこむのはやめてもらおうか!」

 聞き慣れた声に、幸村が反射のように呼びかけるより先に、政宗が吠えた。

「うるさいわ兼つ、」

 ぐ、と続くはずの言葉は、結局発されることはなかった。急に伸びてきた手が、まるで犬猫を払いのけるように、ぺいっと政宗を張り飛ばしたからだ。もちろん、兼続である。廊下を転がる政宗をそっちのけに幸村に駆け寄り、手足を握り締めながら、大事なかったか、と優しく問い掛けてくる。兼続自身、幸村に何かあるとは思ってはおらず、政宗とのじゃれ合いを楽しんでいるだけだ。幸村は、兼続が態度とは裏腹に政宗を気に入っていることを知っている。楽しそうでなによりだなあ、と兼続の柔らかな表情に微笑みながら、はい、と頷いた。

「幸村、三成が、お前は無茶が絶えんと心配していたぞ。今回の三成と清正どのたちの和解は、確かに見事だと思う。早くに手当てをしたことも流石だ。だがな、己の身を省みずに三成の身ばかり案じているとなると、あれも穏やかな気持ちではいられまいよ。ゆっくりでいい、お前はお前自身の身体も労わることを覚えておくれ」

 兼続の言葉はいつも柔らかい。声がはつらつと響くからだろうか、幸村もついつい背筋を伸ばしてその説教を聞いてしまう。兼続は、ようやく己の言葉が心から幸村に届くようになって嬉しく、ついついいつも以上に饒舌になってしまう。分かっています、申し訳ありません、それでもわたしは、と、そんな風に心で謝罪してばかりいた幸村にとって、兼続の言葉はどれだけ聞いても聞き飽きない。ようやく幸村自身、彼の言葉に相槌が打てるようになったのだ。

「説教はまた今度しっかりやるとして、政宗の提案もあながち面白い。幸村が兵の教育をするとなると、どの軍にも負けぬ軍団が出来上がりそうだ」

 これはいい!と手を叩く兼続の後ろから、にょきりと景勝が顔を見せる。口数の少ない上杉家の現当主だ。兼続が景勝の言葉を代わりに話すこともあり、景勝の隣りには常に兼続の姿があった。

「幸村、元気そうで良かった」
「はい」
「兼続」

 くるりと兼続を振り返り、視線を交わす。それだけのことでありながら、兼続は景勝の言葉を覚ったようで、しきりにはい、はい、と頷いている。

「確かに、上杉に幸村が来るとなればそれは楽しい毎日になりましょう。しかし、兵を鍛えるという仕事なれば、ここ大坂にもあります。それにこの兼続としましては、この期に及んで三成から幸村を引き離してしまうのは不義になりますゆえ、その儀はどうぞご勘弁を」

 うむ、と首を引く景勝に、納得させるように大仰な素振りで兼続も頷く。幸村には彼らの間の会話が半分も分からなかったが、穏便に何かの了解を得たようだった。その頃には転がっていた政宗も置き出して、何をする兼続!と兼続に噛み付いている。はははうるさくて敵わんな!と言う割に兼続は楽しげで、怒号を上げる政宗に一々言葉を返して煽っている。

 我々はそろそろ退散するが幸村もどうだ、と政宗の首根っこを掴んだ兼続が問う。手足の痺れは大分良くなっていたが、差し込む陽はまだあたたかく、もうしばらくはここに留まっていたかった。幸村は兼続の言葉に首を振って、日向ぼっこを続けるのだった。



 日も暮れ、夕餉の時刻が近付いてきた。三成は幸村の部屋に急いで向かっている。開いている傷口は完治しつつあったが、体力がまだまだ回復していない幸村が、城内ですら遭難する、という三成にとっての大事件があって以来、極力幸村と夕餉を共にすることにしている。
 幸村、居るか?入るぞ、と断って襖を開ければ、案の定と言おうか、幸村の姿はなく、女忍びが部屋の真ん中で寝転がって頬杖をついているところだった。

「幸村は、"また"留守か」
「は〜い。"また"まだ散歩から帰ってきてませ〜ん」
「…探してくる」
「は〜い。お気をつけてー」

 正直に言ってしまえば、その役割はくのいちのものであるのだが、あの石田三成らしくもなく、くのいちにその役目を押し付けることをしない。どこに行ったのだ、まったくあいつは、などとぶつぶつ言葉をこぼしながら城内を捜索するのが三成の日課になりつつあった。それに不安はあれど不満がないのが三成で、その様を兼続は嬉しげに眺めている。戦場に駆けて行ったわけではない。少し足を使えば、へにゃりと笑った幸村が出迎えてくれるのだ。

 今日は諸将を集めての宴もある。評定の席は休ませたが、宴にならば出席させてもいいだろう。ただし、酒は厳禁だが。先の集まりで、幸村の姿の不在を何度も問われたのだ。元々面識があったものから、此度の戦での勇姿に憧れを抱いたもの、三成と清正たちの仲介に身を砕いたその姿に感銘を受けたもの。幸村の評価はここ数ヶ月でうなぎのぼりだ。それが嬉しいと思う反面、残念に思う。周りが幸村の良さを知ってしまったら、幸村は誰かの求めに応じて己の側を離れることを望むかもしれない。その時、自分は果たして笑顔で送り出すことが出来るだろうか。

 考え事をしながら歩いていたせいだろうか。りん、りん、と静かな廊下に響く音にようやく気付いた。この鈴の音は幸村の足首に括ったものだ。それにしては、音の鳴り方がおかしい。幸村の歩幅であったのなら、もっとりんりんと連続して聞こえても良いはずなのだが、まるでわざと鳴らしているように、一回一回の揺れの間が大きい。
 音はいよいよ大きくなり、曲がり角の向こうからは足音が聞こえてきた。足音と、鈴の音が重ならない。一体どうしたことだろう、と三成が目をこらしていると、曲がり角からは二人の影がやってきた。幸村、と、清正だ。清正に横抱きにされる格好で、清正の腕の中に幸村の姿があった。また体調を崩して倒れたのか、と三成が慌てて駆け寄る。城中に人が多く訪れているせいで、城全体に煌々と灯りが点っている。三成の表情は二人には筒抜けだった。

「幸村!どうした!出歩くなとは言わんが、体調が崩れるほどの散歩はよしてくれ!」

 幸村に駆け寄り手を伸ばす。手に触れれば、熱を出しているという程高くはなく、むしろ陽にあたっていたのかぽかぽかとあたたかかった。
 幸村は三成の顔を見るや、へにゃりと、いかにも情けない、幸せそうな顔で笑った。二人のやり取りを眺めていた清正が、へぇ、と短い息を吐いたが、三成はそれに気付かぬ振りをした。幸村一人の存在に一喜一憂していることを三成自身自覚していたし、それに対しどんなからかいが飛んでくるかも覚悟していたが、意外にも清正は何も言わなかった。
 幸村の手を引いて、三成の腕の中に移るように促せば、清正もそれに合わせて身を引いた。腕力に関しては清正に劣らぬ程度にあるのだ。上背がないせいで少々幸村が窮屈そうだが、大人しく三成の腕に抱かれている。日々の鍛錬がなくなったせいで幸村の目方も減り、見た目程に三成も重くはなかった。

「どうして清正に抱えられていたのだ」
「うたた寝していたところを清正どのが通り掛りまして。そろそろ宴の時間だから、と起こしていただきました」
「…なぜうたた寝などしていた。今日は人が多い。危険だろう」
「縁側で休憩がてら日向ぼっこをしていたら、気持ちよかったみたいで眠ってしまって。大丈夫ですよ、滅多に人の通らぬところでしたので、通行の邪魔にはなっていない、と思います」

 危険という言葉の意図が幸村に通らないのはいつものことだ。本当か、とまるで尋問するように三成は清正を睨み付ける。こんな場面を誰かに見られでもしたら、この二人は和解したのではなかったか、といらぬ勘繰りを受けただろうが、幸いにも三人以外の人影はなかった。それに、三成の視線に含まれる感情に気付いてしまっている清正には、その目の険もまったくもって脅威ではない。これ以上二人に構っていられるか、と、清正は踵を返した。

「おい清正!」
「そいつに鈴つけときゃ安心だなんて思わねぇことだ。そんなに心配なら、首輪でもつけて四六時中紐で繋いどくんだな」
「な、」
「清正どの、」

 うろたえる三成をよそに、幸村は至って平常だった。

「ありがとうございました」

 幸村が三成の腕の中でぺこりと頭を下げるのを、ひらひらと手を振って、それから今来た曲がり角へと消えて行ったのだった。




***
長くなったので、一旦切ります。
三幸と言いながら、中々二人が一緒に居る場面になりませんね。おかしいなあ、それ書く為に書き始めたのに。
基本一発書きなので、矛盾だとか練り足りないところは、各自の妄想力でカバーでお願いします(…)
誤字はフィーリングで読んで(oh‥)

莉緒
No.1920 2013/02/03(Sun) 22:32:34

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