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おろち2 プレイ中です。

ネタバレ全開なので、ごりょーしょーください。







(No Subject)

どうも莉緒です。
そう言えば先日、突然インターネットに繋がらなくなる事件が起こりまして。モデムやらルータ?やらはランプの点滅具合から正常っぽいのに、何故かつながらなくって。PCのなんかしらの設定だとは思うんですけど、調べようにもインターネット繋がってないし。そういうエラーの時は的なページも、結局インターネット繋がってないから見れないし。接続されてないからヘルプみたいのに、接続されてから見てください、とかループすることばっか言うし。トラブルシューティングは、DNSのアドレスがおかしい、とか、意味わからんこと言うし。管理者に連絡してね、って勝手に解決した気になってるし。Wi-Fiの設定をリセットしても、結局繋がらんし。っていうか、接続は正常なのにね、意味わからんね。DNSってどこで触るんだろうね、とごにょごにょやってたら、なんかが無効になってたんで、もうなんでもいいや、って有効に変更したら、なんか繋がりました。わ、わたしの二時間返してーや…。でもって、色々リセットしちゃったので、これ、PS3とか3DSとか繋がってない、と、思う。あー次つける時めんどくせー。多分、リセットする必要なかったと思うしー。あー、、、兄ちゃんに説明すんのもめんどくせー。

もうネット繋がってるし、全然安心!って油断してると、なんかそういうことになるんで気を付けてください。これ、多分またなるなあ。原因がいまいち分からんもんで。ウイルスか!もしくはウイルスか!とびくびくしながらスキャンしたんですが、検出されなかったので、大丈夫だと思います。




で、景幸です。一応、流れとしてはラストです。




 北条も豊臣に降り、日ノ本は統一された。それでめでたしめでたしとなれば、景勝の心労も兼続の苦労もないだろうが、現実はそうではない。豊臣の名のもとに一つになった日ノ本を継続していかねばならず、家名を維持していかねばならず、他家との付き合い方は複雑になる一方だった。陰気くさい腹の探り合いや、権力争い、足の引っ張り合いの気配に満ちている大坂城は、景勝には息苦しかった。見た目は華やかだが、外見だけを着飾ってばかりで、一つ仮面を剥がせば、どろどろとした醜いものが次から次から溢れ出してきそうな、そんな印象を抱かせた。

 景勝は上座に向かって頭を垂れる。上座には秀吉が座し、その隣りにはねねと官兵衛の姿もあった。いつもならば景勝の代わりに、まるで事前に諳んじてきたかのようにすらすらと口上を述べる兼続は、今日は不在だ。大坂に共に来たものの、日頃の無理が祟ったのか、熱を出して寝込んでいる。常に兼続を従えてはいるが、口下手なだけで話せないわけではない。兼続に敵わぬものの、無礼にならぬ程度に短い挨拶を告げれば、よっぽど意外に思ったのか、秀吉やねねばかりだけでなく、官兵衛の顔すらも呆気にとられたような少々間抜け面が浮かんでいた。景勝はそれを指摘するでも、憤慨するでもなく、見て見ぬふりをして、さっさと退室の旨を告げて、再び頭を垂れる。上杉家と豊臣家の友誼は兼続に任せておけばいい。この場は、上杉家当主として、景勝が秀吉に頭を下げて恭順しているという外聞が立てばそれでいいのだ。

「先の小田原攻めでは、上杉家の方々に大いに助けられましたな。流石名門は違う。よくよく勉強させてもらったわ。若いもんの良い手本になろうて」

 軽い相槌でも打てばよかっただろうに、そういった合いの手が出来ない景勝は、秀吉を見上げる。人の善い顔をして、その裏で何を考えているのだろうか。主である以上、その言に従うは、好きになることはできないな、と景勝は思った。
 秀吉は景勝の鈍い反応にも気にした様子もなく、にこにこと言葉を続ける。よく回る口だ、と景勝は内心で呟く。兼続もどちらかと言えばそうなのだが、兼続のはつらつとした声を聞き慣れているからだろうか、どうにも音が軽いのだ。威厳があるとはお世辞にも言えなかった。

「そこで、じゃ、上杉殿。目に見える形で、わしはそなたに礼がしたい。なんでも言うてくれ。ああそうじゃ、上杉殿は刀の収集が趣味であったな。なんぞ良い品があったはずじゃ、」

「おそれながら、」

 秀吉の言葉をさえぎるなど、本来ならば無礼千万だ。けれども、それに冷や汗を掻いたのは景勝だけだったようで、秀吉やねねだけでなく、官兵衛ですら、それで?とでも言いたげに景勝に視線を送っている。つくづく己の常識が通じぬ世界だ、と景勝は思った。

 ゆっくりと顔を上げる。
 本当に、秀吉が"そう"言うまで、景勝はあの存在を忘れていた。忘れなければいけない、と、今までを過ごしてきた。忍城攻めで再会した時ですら、二人は一定の距離を保ったままだった。彼は、もう自分のものではない。自分の手の届く場所にいない。もう彼との幸福な時間は"おしまい"なのだ。そう言い聞かせてきた、信じてきた、事実そうなのだと、景勝は思ってきた。いや今だってそうだ。その名を口にしてはいけない、と思っている。己は上杉家を背負う国主であり、だからこそ、軽はずみに言葉を発してはならない。それは己への戒めだ。そうあらねばならぬ、と、己へと誓いを立てた。立てたはずなのに、この口はその名を呼ぶことに歓喜する。再びあの時が得られるかもしれぬ、と、万が一のもしもを想像して喜びに胸が揺れている。

「真田幸村を、戴けませぬか」

 声が僅かに震えてしまった。それも、景勝の声を聞き慣れぬ秀吉は気付かなかったようだ。

「ほぅ、何故じゃ?真田家の人質なぞ、そちたちにはもう不要であろう」
「家臣に致したく」

 秀吉は懐から扇子を取り出し、思案顔で扇子の先を揺らしている。手を叩いたと思えば、ちょこんと顔にくっ付いている髭を撫でている。
 返答までの時間は、景勝にとっても拷問だった。息苦しい。この城はやはり好かぬ。早く自領に帰りたいものだ。それが無理なら、せめて屋敷に帰りたい。他愛ない言葉一つに、一々疑心が生まれる、邪推される。いやだ、兼続、儂にはやはり外交は向かん。そう内心で愚痴を零していると、秀吉は勢いよくパッと扇子を広げた。思わずそちらへと視線を向けた。

「それは無理じゃ」

 なにゆえ、と声には出せなかったが、表情から読み取ることは容易かっただろう。秀吉は笑っている。あの人の善さそうな、いかにも人好きがしそうな顔だ。いったい何を企んでいることやら。

「わし、幸村のこと気に入ってしもうたんじゃ。あやつがおらねば、何かと支障も出てのう」

 秀吉は、言いながら、その小柄な身体をひょいと持ち上げて、飛び跳ねるように身軽に上座から降りた。景勝の目の前までやってきて、目線を合わせるように膝をつく。

「上杉殿のところには、優秀な家臣がおったのう。どうじゃ、直江兼続と交換なら、考えてもええで。三成も喜ぶじゃろうて」

 どうじゃ?と、あの笑顔で景勝に問いかける。一瞬、何を言われているのか分からずに、呆けた顔で見つめ返してしまった。この男は、兼続と幸村を天秤にかけろ、と言うのか。そんなこと、出来るものか。して良いものではない。そんなこと、決して、けっして、

 伏せっている兼続の姿の後ろに、幸村の笑顔がある。何も言わずにただ側にいて、時折微笑む幸村の姿が脳裏に蘇った。あの日々は実に穏やかだった。呼べば応える。彼はすぐそこに居たのだ、儂に膝を貸してくれていたのだ、簡単にその手に触れることが出来たのだ、その吐息に触れることが出来たのだ。実に優しい日々だった、緩やかな日々だった、しあわせだった。再び手にしたいと思ってしまう。それは、いったい、なにを引き換えにするのだったか。

「お前様、意地の悪いことを言うもんじゃないよ!景勝も困ってるじゃないか!この話はもうおしまい。お前様の遊びに付き合える程、景勝も暇じゃないんだよ。ほら、景勝ももうお行き。このままだと、日暮れまで遊び倒されちゃうよ」

 ひどいのぅ、と言いつつも、秀吉は渋々と上座へ戻って行った。すまん、冗談じゃよ、冗談。と秀吉は笑っていたが、景勝を射抜いたあの眸は果たして冗談で済まされるものだったろうか。秀吉は、景勝を試したのだ。それが秀吉に何の益があったのかは分からなかったが、確かに秀吉は、景勝の何かを見定めようとしたに違いない。
 景勝はいつものむすりとした表情を張り付けて、言われるがままに退室した。腹の中が重い。やはり、好きになれぬ城だな、と景勝は思った。



***



 秀吉との面会を済ませた景勝は、その足で兼続を見舞った。幸村と兼続を比べてしまったその罪悪感は確かにあったが、それ以上に兼続の声が聞きたかった。この、隠された陰気臭さを祓ってくれるような、兼続のはつらつとした声が聞きたかったのだ。

 一眠りして多少良くなったようで、兼続は快く景勝を迎えてくれた。肌が白いせいで発熱で上気した頬が余計に目立ったが、「おお景勝様!」と声を上げるその調子はいつもの兼続だった。これでは、秀吉の隣りに控えていた官兵衛の方が、余程病人に見える。
 枕元には湯呑みと紙包みが置かれていた。景勝がそれに視線を向ければ、兼続も心得たもので、「半刻程前に幸村が来ました」と景勝の心を読む。流石に豊臣へと送られたばかりの頃は幸村の話題を控えていた兼続だったが、幸村のことが話の上ることは、実は少ないことではない。既に交流が途絶えてしまった景勝とは違い、三成を挟んで幸村とも文のやり取りがあるのだ。そこが景勝と兼続が抱える想いの違いだろう。兼続は景勝の気持ちを知っていながら、いやにこざっぱりと幸村の名を口に出す。それが兼続なりの気遣いなのだ。

「どうかされましたか?なにかありましたか?」

 誰が見たっていつもの仏頂面のはずなのに、兼続は景勝の機微を見抜くのがうまい。思わず項垂れてしまった景勝の顔を覘き込もうと、兼続は身体を起こした。

「うむ、」
「また、秀吉殿のお戯れですか?」
「…うむ。褒美を、と言われたのだ。つい、幸村をと、言ってしまった。それならば、兼続と交換だと言われて、」
「了承されたので?」
「何故そうなる!」

 思わず声を上げてしまった景勝に、兼続はにこりと微笑む。手放せぬ、と景勝は思った。この男だけは、生涯己の味方であろう、理解者であろう。

「秀吉殿も意地の悪いことを仰る」
「兼続、正直に言うぞ。儂は迷った。それも一瞬だけではない。幸村が再びこの手に入る、その先を想像した。すまぬ。儂は、そなたを捨てようとした。すまぬ」

 ははは、と兼続のよく通る笑い声が響いた。兼続は朗らかに笑っていた。

「謝ることなどありませぬ。むしろ光栄です。私は景勝様がどんなに幸村を想っているのか知っていますから、僅かでも釣り合う価値が己にもあったのか、と」
「当然であろう」
「それで、幸村はどうするのですか?すぐに取って返し、秀吉殿に懇願すれば、交換条件を呑んでくださるかもしれませぬぞ?」
「そなたまで意地の悪いことを申すな」

 それは失敬、と兼続は膝を打った。見限られるとは思ってはいなかったが、兼続と隙間が出来てしまうのでは、と少々の不安があった景勝にとって、兼続の反応はまさに予想外だった。

「幸村のことは、もうよいのだ。父上は、決して自分の欲で戦をなさらなかった。だから儂もそれを見習おう」
「本当によろしいので?」
「儂には兼続がおる。そなたはそなたで、得難き存在よ」
 勿体ないお言葉、と深々と頭を垂れる兼続に、もう休め、と手をかざした。
 景勝は今度こそ、己の恋が破れる音を確かに聴いたのだった。




***
これで終わり!
景幸は叶わない初恋になってしまうので、切ないなー、と思いつつも、書かずにはいられない。どうして景幸増えないんでしょーかね。
景勝様のしゃべり方が分かんなくって、私的上杉景勝になってます。すいません、すいません。

実は見直ししてません。誤字はご愛嬌ってことで。予想外に長くなっちゃって、うん。
後々、ちゃんと校正したものをぴくしぶにアップ予定です。新キャラと絡んだ話をごそっと。まだ、あの小十郎との絡め方が分からないので、とりあえずこれで一旦落ち着くかな。

莉緒
No.1997 2014/05/20(Tue) 00:10:37


(No Subject)

どうも莉緒です。ふらっとネサフしてて気付いたんですけど、またべ殿って1560年生まれなんですね。へーへー。前は生まれ年とか、官位とかを覚えることに必死になってたんですけど、もう頭のキャパがいっぱいみたいで、もう入らん。。。ってなってるので、一々調べないといけないんです。

で、それを踏まえての大河の話なんですが。
三成は秀吉の右腕っぽく忙しくしてるのに、またべ殿は来る日も来る日も槍の稽古ですね。三成は戦に連れてってもらえるのに、清正則はお城待機なのは、なしてですかね?三人の初陣っていつだっけー?あと、またべ殿が黒田さんちに来たのって、青年期じゃなかったっけ?違ったっけ?まあ諸説あったと思いますが。
そうです、莉緒さんはまたべ殿が大好きです。





という話とは一切関係ない、なんちゃって関ヶ原。こうだったらどうなってたかなー妄想。
ふと思ったんですけど、関ヶ原で西軍がちゃんと軍団として撤退してたら、その後ってどうなったろうなあと。大垣城へ撤退・籠城かな。その間に大津城攻め組合流するだろうし。兵糧が不安なところですが、その手のエキスパートがいるので、そう心配要素はないかな。ただ、その後ずるずると睨み合いが続いて、結局西軍の内部分裂→外と中から攻められて落城→残念西軍、ってなりそう。




頑張って考えて考えて、吉継さんと幸村を絡めてみた。





 大軍の勢いのままに攻めかかられている小早川軍を、大谷軍はかろうじて防いでいる、というのが現状だった。吉継ほどの戦巧者でも、多勢に無勢は抗することもできず、脆い大谷軍の盾が食い破られるのも時間の問題だ。
 吉継は予想されていた目の前の惨状に、さてどうするか、と、妙に落ち着いた心地でいた。腹を切るならば早くせねばなるまい。陣を踏み荒され、この首が敵方の元へと渡るのは赦しがたい屈辱だ。だが、このまま小早川の好きに蹂躙されるのも我慢ならない。せめて一矢、あの裏切り者に報いることができないだろうか。
 吉継は采配を握り締める。もしも己に、清正や正則のような武勇があれば、小早川の首は獲れずとも、彼を唆した奸臣程度は討ち取ることができただろうか。ああそれならば、真田幸村のような戦い方ができれば、切腹など考えずに、いっそ誉れ高い何某かの将に討ち取られるを好しとしただろう。

 三成からの援軍はない。あちらも急速に動き出した戦の動きに翻弄されて、吉継どころではないだろう。さて、そろそろ覚悟を決めようか、と、足元に視線を落とした、その時だった。
 場を揺るがすような鬨の声が響いた。各々が好き勝手に喚いていたものではなく、整然とした、味方を鼓舞し、敵を震え上がらせ威嚇する迫力を持っていた。その後の変化は歴然だった。数を頼りに大谷軍へと攻めかかっていた小早川の勢いが削がれていく。後方から徐々に崩れ始め、しまいには軍団長の張り上げる声も無視して、散り散りとなってしまった。軍としての機能を全く失ってしまった。

「何が起こっている?」

 首を傾げている吉継のもとに、状況を探らせていた忍びが戻ってきた。主への礼もそこそこに、興奮で息が乱れていた。珍しいことだ、と、こんな場面ですら冷静に吉継は思った。

「援軍です、あっと言う間に小早川軍を蹴散らしました!」
「敗色濃厚の西軍に味方するとは、流れの読めぬ者がいたものだ。して、それは誰だ?」
「それが、」

 忍びその名を口にするより先に、吉継の陣幕が揺れた。失礼します、と律儀に断るその声には、吉継も聞き覚えがあった。

「ご無事ですか、吉継どの。これでも大急ぎで駆け付けたのですが、なんとか間に合ったようで安心しました」
「…幸村、か?」
「はい」

 幸村は戦場に相応しくないにこやかな笑顔で、そう頷いた。ただ、その顔は硝煙と土埃で汚れていたし、何より返り血がひどい。まるでちぐはぐな組み合わせだった。手にしている槍先からは、真っ赤な血が、てらてらと滴っていた。俺が幼子であったら、泣き出しているな、と、やはりこの場にそぐわない冷静過ぎる感想を思った。

「稲葉正成どの、平岡頼勝どのは討ち取りました。他にもいくつか獲りましたが、首を持ってくることは叶わず、二名のみ、ぶら下げて参りました」

 幸村は、まるで、瓢箪を馬に括り付ける要領でぶら下がっている二つの重石を視線で示す。恐怖で歪んだその表情は、さながら戦場で最上におそろしい鬼と遭遇したからだろう。ちなみにこの二人は、小早川秀秋を東軍へ寝返るように諫言したと言われている。幸村がそれを知った上での行動かは分からないが、吉継が想像する一矢報いるを言葉通り実行していた。

「大した武功だ。西軍が勝てば、の話だがな。それで、小早川はどうした」
「ああ。簡単に見つかりました。戦場の非情、ここは一思いに討ち取るべきかとも思いましたが、豊臣家に連なる方です。わたしの一存では判別できませんでしたので、とりあえず捕虜として家臣にこちらに連れてくるよう指示を出しています」

 まるで蜘蛛の子を蹴散らすように、小早川軍が霧散したのはそのせいか。軍の判断は全て家臣に任せているとはいえ、大将のいない軍ほど脆いものはない。幸村の的確に敵を捕捉する能力を褒めればいいのか、恐れればいいのか。まあそんなことは後で考えればいい、と、吉継は采配を強く握り締めた。こんなところで、諦めている場合ではない。中央ではまだ三成が踏ん張っているはずだ。楽をしている場合ではないのだ。

「小早川は本陣へと届けさせろ。まだ崩れてはいないはずだ。長旅で疲れているとは思うが、まだまだ休めないぞ」
「それを承知で参りましたから。突き進むしか知らぬ槍ですが、存分にお使いください」

 頼もしいことだ、と内心で呟きながらも、一つ、疑問が浮かんだ。彼はここにいて、大丈夫なのだろうか。

「命を救われた身だ、けちを付けるわけではないが、お前、実家を放っておいてよかったのか?」
「父がおりますから。心配はいりません。それに、」
「それに?」
「わたしには兄と槍を交える勇気はありません。兄に槍を向けるくらいなら、わたしは逃げますよ」
「悪いな。お前たちが敵味方と分かれたのは、三成の愚策が招いたことだ」
「いえ、よいのです。兄と敵味方に別れるなど、天下の情勢にとって些末なことです」

 仲の良い兄弟だ。兄が向ける愛情と、それを恥ずかしがるでもなく嫌がるでもなく、ひどい嬉しげに愛おしげに享受する弟の姿が、見ているこちらがくすぐったくなるほどににうつくしかった。決して幸村は兄をないがしろにしなかったし、事実、心の底から尊敬していたようだった。その兄と敵味方に別れることに、本当に幸村は言葉以上のものを抱いていないようだった。些末なこと、と告げた幸村の笑顔に、吉継はふむ、と思案を深くする。兄と末永く共に暮らすことと、彼の思い描く未来を実現させるのは、きっと別格なのだろう。そして、どちらを彼が優先させるか、なんてものは、想像に容易い。あんなにも仲の良い、この二人を引き離すなんて、三成はなんて酷なことをさせているのだ、と吉継ですら思うむごい所業を受けている張本人は、多分、そんな自覚はないのだ。

「そろそろ出るか」
「はい、お供します」
「もし、この戦に勝ったら、お前はなにを望む?」

 幸村は吉継の問いかけに、その答えではなく、

「勝てますか?」

 と、まるで幼子のように短い、単調な言葉を発した。

「分からん。お前がいれば、流れを引き込めるような気がする」
 それは、恐れ多い、と幸村はまた薄く微笑んだ。俺を救ったお前がそれを言うのか、とでも言ってやろうとも思ったが、彼の謙遜が今に始まったことではないと思い直して、言葉を飲み込んだ。

「勝てるのならば、そうですね、この武功を手に兄の助命嘆願でもしてみますか」





***
・・・・・途中で飽きた。誤字してると思いますが、明日見直しするので、うん、すんません。

莉緒
No.1996 2014/05/17(Sat) 00:29:41


(No Subject)

どうも莉緒です。サッカー観てます。やっぱりルールがよぅ分からんです。どっちかっていうと、野球の方が好きです。


まだ設定資料集は買ってないです。だって、売ってないんだもん。。。あ、でも、DLCやっちゃいました。楽しかったですけど、人によってミッション変わったらよかったのになあ、と思って。や、ちゃんと楽しかったけども!


2016年の大河は、あー、うんって感じです。尺足りるんだろうか?真田丸って言っちゃってるんで、夏の陣まではやらないのかしら。ただ、またべ殿との縄張りで揉めるのは確実にやると思うの。一話でまたべ殿とごたごたして、あとは大野治長さんとごたごたしながら、関ヶ原とか上田合戦とかの回想で尺を伸ばすのかな、と勝手に想像してます。幸村さんの性格は誰寄りかしら。史実寄り?しばりょ?池波せんせー?個人的には、性格がとんでもなくひどい史実(莉緒さんの妄想込)がいいなあ。
と、ふーんって言っておきながら、既に楽しみにしてますね。現金なもんです。

あ、今年の大河もちゃんと毎回観てます。面白いかどうかは置いといて(…)、真面目に作ってるなあっていう感想です。ただ一話から勝手に想像すると、最終話は小田原っぽいですね。官兵衛殿が最高に面白いのは関ヶ原の時だと思うんですけどねー。スーパーおじいちゃんが大好きなんです。



という無駄に長い駄弁りの下に、ちょっと話を書きます。続きの景幸を書くでもなく、真田兄弟の話です。我が家はあくまで兄弟愛ですので。うちの兄上は根っからの女好きです(…)。






 神流川の戦いの後、信州を発った滝川一益と離れて、慶次は上田の真田家に厄介になっていた。気ままで人懐こい風は真田の人間にもよく馴染んだが、彼がもつ自儘な気風は一つの場所に留まれぬようで、明日にはまた旅に出るさ、とたまたま廊下で顔を合わせた信之にそうからりと告げた。信之も、慶次の様子が伝染したのだろうか、はあそうですか、とどうにも気のない返事をしてしまった。幸村に教えてあげなければ、とまず思った。名門とはいえ、武田家という狭い世間で育った幸村は、慶次のまさに風のように自儘な性格がとにかく新鮮だったようで、いつもならば兄上兄上と手合せの誘いをしてくるはずの可愛い弟も、慶次が滞在してからこちら、慶次どの、慶次どの、と手合せや珍しい話をねだっていた。ねだっていた、というのは、少々言葉が意地悪だ。幸村は幸村なりに見識を広げようと、その澄んだ眸を更にきらきらさせていただけに過ぎない。
 幸村に声をかけてやらねば、と思ったものの、既に刻限は遅く、信之も軽く酒を一杯飲んで休んでしまおうと思っていた程だ。手にしていた徳利がちゃぷんと音を立てる。一人で飲むには量が多いと思っていたから、丁度良いかもしれない。

「幸村は既に眠っているでしょうが、一杯どうですか?」

 手にしていた徳利を持ち上げれば、慶次もにやりと笑った。豪快に笑うお方だな、と信之はなんとはなしに思うのだった。

「いいねぇ。幸村には悪いが、付き合わせてもらおうか」


***


 他愛もない世間話の合間だった。ほとんどが面白おかしく語る慶次の独壇場だったが、ぽつぽつと話題を振られて、信之もそれに応えた。ただ、幸村同様、狭い世の中しか知らない信之の話といったら、家族の話ばかりだ。それをからかうでもなく、笑うでもなく、慶次はさも楽しそうに信之の話に相槌を打った。弟が、と口にしたのは何回だろうか。慶次はそれを嫌がるでもなく、あたたかく耳を傾けている。

「慶次どのから見て、幸村の槍さばきはどう映りますか?」
「天下広しと言えど、敵う相手もそうそういやしねぇだろうさ。あの真っ直ぐさは誰にも真似できやしねぇよ」
「あの子は真田の宝です」
「だが、どこで覚えてきたのかねぇ。大輪を咲かせたくてたまらないって顔をしてやがる。ひっそりと咲いて人知れず散るでもなく、咲きもせず腐り落ちるのを待つでもなく、でっかい花を咲かせて、一人でも多くにその様を目に焼き付けたくてたまらないって、な」

 まあ言うまでもなかったか。
 慶次は言って、ぐいと酒を煽った。本当に、どこで覚えてきたのだろう。覚えてきてしまったのだろう。誰の死に様をその目に焼き付けて、焦がれて、そうなりたい、そうならねばなるまい、と自分に暗示をかけてしまったのだろう。叶うならば、過去に戻って、そんな呪いをかけた存在を、幸村の目に入る前にころしてしまいたい。

「もし、私という存在がなければ、あの子は"ちゃんと"なっただろうか、と、思うこともあります。あの子が長男であったのなら、あの子が真田の家を背負っていたら、血を繋ぐ役目があったのなら。あの子が曖昧にしたままでいる義務が、あの子のものであったのなら」

「私がいるから、あの子は"ああ"なってしまったのだとしたら。私が最初からいなかったら」

「俺は何も変わらないと思うがねぇ。幸村は幸村だ。あんたが今更もがいても、結局幸村は幸村にしかなれないさ」

 幸村は一本気で真面目な男だ。ただし、あんたより随分能天気だよ。そんな禄でもないことをあんたが考えてんだと知ったら、あいつだって落ち込むだろうさ。
 慶次の言い分は、信之もよく分かる。けれども、見慣れている信之ですら、戦場の幸村は、時折はっとする程ぎらめいていて、背筋が凍る程におそろしい眸をすることがある。戦場の激戦区に立っていながら、ここではないどこか遠く遠くを見つめている。修羅か阿修羅のような、この世のものではないもののように、濁りの一切ない澄み切った眸は、信之ですら息を呑む程だ。あの眸をうつくしいと呼ぶ者がいることは確かだ。慶次ならば、好い眸だ綺麗な眸だ、それが人の領分ではなくても、と、褒め称えるだろう。(そして幸村は、嬉しそうに頬を上気させて、ありがとうございます、と微笑むに決まっているのだ。)信之は、彼のように手放しで褒めてやることができない。お前が生きていればそれでいいんだ、誰からも称賛されるような、そんな立派な人間にならなくてもいいんだ。私はただ兄弟仲良く、今の日常が末永く続けば。ただただ、それだけでいいんだ。

「あんたはただ弟が大事なだけなのになあ。通じてはいるだろうが、一種の甘えかねぇ。あんたなら唯一のわがままを赦してくれると、多分あいつは本気で思ってるんだろうなあ」
「そんなこと、赦せませんよ」
「さあ、どうかね」

 慶次はそう言って最後の一杯を飲み干して、そろそろお互い休もうや、と腰を上げた。じゃあな、おやすみ、と手を振る慶次の背中を見つめながら、信之は独白する。

「赦すとは、諦めてしまうことです。それならば戦います。幸村が私の気持ちを理解してくれるまで、説き伏せて、戦い抜きます。私は諦めません、けっして、けっして」




***
暗いですね。意図せず暗くなってしまったので、自分でもなんでや・・・って思いました。兄上は悲観的過ぎるし、幸村は能天気だし、天秤がぐらんぐらんしてますね。釣り合いとれへん。幸村は自分の理想とする死に様を迎えますので、あとは兄上よろしくね、と笑顔で手を振ってる気がします。これで(最初から欠片もなかった)不安が解消されますし。兄上お達者で、頑張ってくださーい。な感じで。それに追いすがる(女々しい)兄上、っていうのがイメージです。お兄ちゃんはお前を気持ちよく送り出す為に脱モブしたわけじゃないんだよ…、と号泣してそうです。

そろそろ、史実ではないんだけど、こういう伝説も残ってるのよ…EDとかあっていいんじゃないでしょうか。

莉緒
No.1995 2014/05/15(Thu) 00:11:44


(No Subject)

どうも莉緒です。拍手ありがとうございます。暦通りの連休だったんですけど、だったんですけど、何やってたんスかね?ぼーっとしてると、あっと言う間に時間経っちゃって。読み専の癖がつくなあと思ってしまうんですが、マイナー好きであるが故に、中々そうもいかないわけで。わーっと自分の中で溜まってるものは、やっぱり自分でどうにか処理しないわけにはいかないわけで、難しいなあ。



まだ続いてんの?な景幸です。




 小屋で一晩を過ごした景勝と幸村だったが、二人の関係にはっきりとした変化があったわけではなかった。ただ、お互いがお互いに触れても良いのだということを知った。景勝は人目を忍んで(といっても、兼続の前では遠慮しなかったが)幸村を呼び寄せたし、幸村も幸村で喜んでその招致に応えた。言葉にしない関係は曖昧で不安定だったが、二人はその関係の穏やかさを楽しんで受け入れていた。思えば、いつか終わりを迎える関係だと既に理解していたのかもしれない。


 夏の暑さも徐々に和らぎ、秋の心地よい風が吹くようになっていた。それでも日中は湿気をはらんだ強い日差しが降り注ぎ、少し動いただけでも汗が額に浮かんだ。
 執務の合間、景勝は幸村の膝の上でうたた寝をしていた。小姓の仕事は幸村がこなし、細々とした仕事は兼続が担当しているおかげで、景勝の私室には滅多に人がやってこない。戸を全て開け放していても人の目を気にする必要はなかった。ゆるゆると扇ぐ、幸村の扇子の風が余程心地良いのか、景勝は目を閉じたまま、小さな寝息をこぼし始めた。眠っている時だけは常に顰められている表情も幾分か和らぎ、幸村の胸もあたたかくなる。上杉の頭領として相応しくあれ、と誰よりも景勝自身が強く己に言い聞かせているのを、幸村は知っている。誰よりも厳しく、己を律しているのを知っている。笑みをこぼしながら、幸村は薄っすらと浮かんでいる首筋の汗を手ぬぐいで拭い取った。

 廊下から、小さな衣擦れの音が聞こえた。足音の大きさからして、兼続のものではなかった。さて、景勝を起こした方がいいだろうか、と幸村は逡巡したが、それよりも先に音の主が姿を現した。唇に指をあてて、艶やかに微笑みながら、
「そのままで構いませんよ」
 と、顔を出したのは綾御前だった。あまり動いては景勝が起きてしまう、と軽く頭を垂れた幸村に、ふ、と笑みを作った。長居をするつもりはないようで、戸にもたれるように立ったままだ。
「可愛らしいこと。この母にはそのような姿は見せてはくれなかったというのに」
 上杉家の聖母だという印象はあるものの、残念ながら、綾御前が母らしいことをしている姿が想像できず、幸村は苦笑を浮かべて、彼女の言葉に相槌を打つことを避けた。綾御前も返答を期待してのことではなかったようだ。
「まさか兼続の他に、この子の理解者が現れるとは思いもしませんでした。あなたを余所へやるのは、甚だ残念に思います。あなたを気に入っていたのは、何も景勝だけではありませんから」
「わたしには過分な言葉です」
「何が過分ですか。これでも足りない程です。あなたはもっと自惚れても良いというのに。そのような謙虚でどうするのです。おそろしい権力の渦に食われてしまうかもしれませんよ」

 景勝は目覚める様子はなかった。疲れていたのか、幸村の傍で安心するのか、眠りは深かった。

「この子は、自分の為には戦えません。あなたを手放したくはないくせに、その為だけに戦うことは最早出来ません。当主とはそういうもので、この子もそれを受け入れています」
 決して冷たい視線ではない。けれども、幸村の心を見透かしてしまいそうな、穏やかの中にある研ぎ澄まされた刃のような鋭い光で、幸村を見据える。幸村はふわ、と微笑みながら、その鋭い光が刺さらぬように緩やかに障壁を作る。それは既に癖になっているものだった。
「あなたも、戦いませんね。あなたにはその権利があります。刃向うだけの器量があります、胆力があります。けれどもあなたは、ただ流されるままに流されるだけ」
「綾様、」
「あなたの中が空っぽだとは思いません。あなたが考えなしだとも、私は思いません。でもふとした瞬間、そう思わせてしまうあなたがいることも確かです」
「綾様、わたしが槍をとるのは己の矜持の為だけです。わたし個人の感情で槍をとることは出来ません」
「それは、あなたにとって、同じものではないのですね?」
「はい、」
 申し訳ありません、と先よりもはっきりと頭を垂れる。その振動が伝わってしまったのか、景勝が薄く目を開いた。日差しが顔にかかっているわけではないが、開け放たれた室内にも日の光は十分に行き渡っており、目覚めたばかりの目には少し刺激が強かったかもしれない。それでもしっかりと幸村を見つめた景勝は、少し困ったような表情で、幸村の頬に手を伸ばす。
「如何した」
 まるで童を宥めるように、指の腹で頬を撫でられ、幸村は胸が苦しくなった。こんなにも優しいひとと離れなければならない事実が、今更ながら悲しかった。それでも、わたしは戦わないだろう。わたしはそれを選ばない。
「なんでもありません、なんでも、」
 それが嘘だとは景勝も気付いていただろうに、それならばよい、と景勝は表情を和らげた。その笑顔に幸村の鼻の奥はつんと痛んだが、決して視界が潤むことはなかった。ふと視線を向けた戸口には既に綾御前の姿はなく、柔らかな風が吹き抜けるだけだった。

莉緒
No.1994 2014/05/07(Wed) 00:25:59


(No Subject)

設定資料集はそのうち買ってくる予定ですが、DLCは迷ってます。テイルズもOROCHIもクロセカも我慢したのに、とうとうデビューしちゃいそうです。

どうも莉緒です。拍手ありがとうございます。兄幸が確実にきてるのは分かってるんですけど、マイナー好きの性と言いますか、今、わたしが書きたいのはそれとちょっと違う・・・状態で困ってます。なんていうか、まだこの兄弟については消化不良なところがあって、自分の中の落としどころが分かってないもんで(ごにょごにょ)っていうか、無双の新作が出たばっかだってのに、BASARA政宗×無双幸村で未だに妄想してます。正直、めっちゃ書きたいねん。


で、景幸がそわそわしてる最中の兼続サイドです。ここら辺から徐々に暗くなっていきます。切ないね!





 景勝と幸村を見送った兼続は、いつもの仕事へ戻った。政治を一手に引き受ける兼続は、景勝よりも多忙だ。見方によっては景勝をないがしろにして、上杉家の頂点に君臨している様にも見える兼続だが、そう陰口をたたかれることを承知で兼続はその立ち位置におり、景勝もまたそれを全て承知の上で兼続に全てをゆだねている。

 昼餉を済ませた兼続の元に、小姓が慌てた様子で駆け込んで来た。これこれそうも慌てるものではないよ、上杉の将たる者、常に冷静沈着でなければ、と長々とした説法に入りかけるのを、小姓は息を切らせながら、
「お客さまが!」
 と、無理矢理に会話を切った。
「来客か?そのような予定は聞いていないぞ。景勝様は今日はご不在だ、私でよければ対応するが、」
「それが、その、石田三成さまなのです」
「三成が?それこそ聞いていない。あの律義者の仕事人間が、事前に連絡もなしにやってくるとは考えられん」
 とは言え、何度も上杉領を訪問している三成の顔を間違えるとは思えない。やれ様子がおかしいぞ、と兼続もようよう腰を上げた。
「それで、お前は三成との追いかけっこに勝ってここに来たのか?三成はいつ頃ここに来る?」
 ちらばっている書簡を片付けながら、兼続がそう訊ねる。兼続を中心に散乱している書類を適当に隅に寄せ、人ひとり分の座る空間を作っていく。常ならばこちらの仕事場まで押しかけるのが三成だったので、今回もそうだと思っての行動だったのだが、小姓はどう言ったものか、と視線をさ迷わせている。そもそも、三成が来訪する際は事前に連絡をくれていたし、だからこそ、兼続の自室で待つ手間を省いていたのだ。三成以外の人物だったら決して許しはしないものの、三成ならばしかたあるまい、と諦めているところもあった。あれはどこに居ても時間に追われているな、と、三成とは真逆に一日をゆったりと過ごしている幸村と、そこに流れる空気を思い出す。のんびりしているわけではないのだけれど、せかせかとした日々の忙しなさを感じさせない穏やかな空気が幸村にはあった。
 小姓は、あの、と居心地の悪そうに言葉を濁しながらも、
「それがその、兼続さまの屋敷で待っておられます。仕事にきりがついたら来てほしいと仰られて、今は客室にお通ししていまして、」
「何、それは珍しいこともあったものだ。きりがついたわけではないが、うん、気分転換にあれの顔を見るのもいいかな」
 ここは適当にまた広げておいてくれ、と用向きを告げに来た小姓に言い残し、兼続は意気揚々と自室へと戻るのだった。


 兼続が三成の待っている客室へと顔をのぞかせると、三成はゆらゆらと船を漕いでいた。兼続以上に多忙な三成だ、疲れているのだろうな、と思った兼続は、このまま眠るのを見守っているのも一興か、としばし動きを止めた。兼続の企みに気付いたわけではないだろうが、兼続の気配を察知したようで、三成は慌てて目をこじ開け背筋を伸ばし、
「兼続か?」
 と、相変わらず不機嫌そうな声で兼続の名を呼んだ。不機嫌そうではあるものの、別段腹の虫の居所が悪いわけでもないと知っている兼続は、いかにも今来たばかりといった様子を装って、
「すまない三成、待たせたな」
 と、敷居を跨いだ。

「お前が連絡をせずに訪ねてくるとは珍しい。急ぎの用でもあったか?」
「いや、まあ、あったと言えばそうなのだが、」
 常に本題にスパッと切り込む三成にしては、珍しい様子だった。どんなに言いづらいことでも、それこそ相手の不興を買おうとも、己の役目をこなす三成だ、これは本当に何事かあったのだな、と兼続もついつい身構える。この男の口を重くする事象など、そうそうあるはずもないのだ。
「それは上杉家に関わることかな?それとも、私個人で済むお咎めだろうか」
 心当たりは一切なかった。柴田勝家を追い詰めた賤ヶ岳の戦では援軍を出していたし、三成を通しての豊臣との外交もうまくいっている。三成は裏表のない男だったので、そういった外交の些細な機微が読みやすくもあった。
「上杉はよくやっている。咎めなどあるはずがない。ただ、秀吉様が、また悪い癖を出されたと言うか、」
「ほぅ」
 と、相槌を打ちつつも、これは厄介なことになった、と心の中で秀吉に向かって舌を出す。あの御仁は読めない。確かに才気はある、天下人としての器にも申し分ないだろう。だが、時折思い付きなのか、前々から虎視眈々と狙っていたのか分からぬ悪ふざけに走る傾向があった。幸いにも上杉はその餌食になってはいないものの、当家もいよいよ、という妙な心構えがあった。
「徳川家康と秀吉様が案外に距離が近くてな、他愛もない世間話の席で、先の上田攻めでの敗北に触れて、秀吉様が存分にからかったのだが」
 上田攻めとは、徳川家が真田の領地である上田城へと攻め寄せた、つい数ヶ月前の戦のことだ。五倍を超す兵力の有利があったにも関わらず、徳川は敗退している。援軍として戦に参加していた兼続は、三成よりも余程詳しく説明できるだろうが、今はそれが焦点ではない。

 三成はちらりと兼続を見、辺りの様子を伺うようにきょろきょろと周囲へ視線を移した。
「景勝どのは留守か?」
「ああ。今日一日は戻られまいよ」
「執務か?」
「いや、気晴らしに遠駆けに出掛けられた」
「雨、降りそうだぞ?」
「うむ。良い口実になっていいだろう」
 外は既に暗雲に覆われており、朝に見せていた澄んだ青をすっぽり隠してしまっていた。雨が降り出すのも時間の問題だろう。三成は兼続の返答に不可解そうにしていたものの、まあ良いか、と再び視線を兼続に向けた。

「本多忠勝の娘を、わざわざ家康の養女にしてから嫁がせただろう。負けた相手がそんなに気に入ったのかと秀吉様が揶揄されてな。家康も一々口答えせずともよかろうに、兄だけでなく弟とも繋がりが欲しいと、出来ることなら兄弟そろって家臣にしたいと、褒めちぎったせいで、」
 いつの間にかそらされていた三成の視線が、そろりと兼続の顔を撫でる。そうきたか、と我ならが察しの良すぎる己の性格が厭になった。犬猫の類ではないのだぞ、と思ったものの、犬猫のように簡単にその身を拘束している事実に嫌気が差した。
「兄は家長だから融通は利くまい、ならばその弟とやらを一目見たいものだ、と、そう仰せで」
 弟とは、もちろん幸村のことだ。一目見たいとは言うものの、秀吉がわざわざ上杉領にやってくるわけではない。幸村を大坂に差し向けよ、豊臣の人質とせよ、との暗の下命だ。
「俺もお止めしたのだぞ。幸村は上杉の人質だ、と。だが、その、一度決意されたことを曲げられるお方ではないのでな、その、だから、兼続に頼みがあるのだが、」
「お前の苦悩はよく分かる。お前は豊臣の人間だ。秀吉どのの言に従うは義、その忠義は愛でもある。お前を憎らしく思うわけがなかろう。ああ、だが、」
 兼続は瞠目する。外は雨が降り出したようで、屋根に雨の当たる音が聞こえるようになっていた。景勝様と幸村は、ちゃんと小屋に辿り着いただろうか。ちゃんとお互いの想いを確かめ合っているだろうか。いや、二人仲睦まじく、寄り添っているだけでも私は嬉しく思うが。それが残り僅かの幸福の時間だと思うと、そのまま二人でどこへなりとも旅に出た方がよいのではないか、と常なら思いもつかぬ妄想に取り憑かれた。

 僅かに瞼を持ち上げて、三成の様子を窺う。三成は三成で、兼続の言葉を待っているようだった。別段、お前に非はない。私が景勝様の御為に存在しているように、お前は秀吉どのの為に在るのだろう。
 それは分かる、理解ができる、共感ができる。ああ、だけれども!
「恨めしく思うよ。秀吉どのも、お前も」

 三成も覚悟はしていたようだったが、やはり兼続からの直接の言葉に堪えたようで、そうか、と肩を落としていた。お前が気落ちすることでもあるまい、と励ますように三成の肩を叩き、
「決まってしまったことをあれこれ罵るのは私の義ではない。そんなことをお前に言っても詮無いことだ。それよりも有意義な話をしよう。幸村をやるのだから、いい加減な準備では私はもちろん、景勝様もご納得されまいよ。ほら、私たちの得意分野だ。だから、そう落ち込むものではないよ。幸村のことは、大事に大事にしてくれれば良いから」
 兼続のいつもの調子に三成も顔を上げる。その顔にはぎこちないながらも笑みが浮かべられていて、兼続もほっと一息をついた。常に不機嫌そうに顔を顰めている三成だが、取っ付きにくい印象を与える整った顔をしている割に、笑うと愛嬌が出るのだ。兼続はそんな三成の、どこか垢抜けない笑顔が好きだ。

「お前が幸村を気に入っているのは重々承知だが、それにしたって、嫁に出すような言い草だな」
 心地としては、あながち間違いではないかな、と思った兼続だったが、そこにはあえて触れずに、
「上杉の地も随分と遠いというのに、大坂へと行かねばならんとは、信之どのが心労で寝込まねば良いがなあ」
 と、弟を心配することに上限のない兄の話題を出して誤魔化すのだった。





***
暗くなるなーと思ってたんですが、うちの兼続は基本穏やかなので、なんかするっと終われました。書いてて、折り返し地点がどこかも分からない。あと二つぐらいかな。分からん!

莉緒
No.1993 2014/04/24(Thu) 23:20:13

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