No.898 2009/10/08(Thu) 00:08:54
|
☆ Re: ノモンハン戦争―モンゴルと満洲国 (岩波新書) / burenbayar |
|
|
|
表題のノモンハン事件を、日ソの紛争からととしてではなく、日ソの勢力圏に分断されていたモンゴル人の交流の1ページとして描く。
清代までは、モンゴル族として部族生活をしていたのに、ロシア革命後の外モンゴル独立で突如として内外の蒙古に分断され、双方とも完全な監視社会だった1930年のモンゴリア。日ソの勢力圏に分断された2つのモンゴル族は満州国との交流を渇望していた。ノモンハン事件で争われた領土の画定交渉でも、これを機に両蒙古で交流の手がかりとし、話し合って解決しようとした。しかし、双方のモンゴル人代表はスパイ罪で処刑され、日ソの強硬策に否応なく従わされてしまう。
61年の国連加盟まで、モンゴルは事実上の鎖国状態で、ソ連に隷従していた。ソ連への隷従を誓う指導者たちも次々とソ連へ連行され暗殺されていく。ノモンハンで戦闘中も、戦場の死者以上に虐殺されるような暗黒の時代でも、何とか満州にいる同胞と手をつなぐ機はないか、モンゴル人が自立できないか、指導者たちは努力する。そして1990年、外モンゴルはようやく本当の独立を得た。本書の後半では心優しくもしたたかなモンゴル人の自立への戦いも描く。
本書では、著者が中心となった、冷戦後のノモンハン研究史にもかなり触れているが、その中で、「モンゴル史としてのノモンハン」が表舞台に上ってきたようである。ノモンハン事件は日ソの前哨戦として以上に、モンゴル史として捉えるべき出来事である、と見方を一新させられる本だった。
|
No.900 2009/10/08(Thu) 08:51:51
|
|