今年の高校野球は悪くなかった。公立高だから野球特待生は一人も居らず、監督 が「プロ野球に行ける様な子は一人も居ません。みんなで勝ち取った勝利です」と 言っていたが、進学校の「文武両道」は、鮮やかで爽やかだったと思う。
チエミさんの「ちいさこべ」が封切られた頃、ラジオのNHK第二で毎週やっていた 「映画批評」の時間があった。その日の評者は羽仁進氏と、もうお一方(佐藤忠男氏?) で、その週或いは次週封切られる作品の批評をしていた。今でも良く憶えているが、 「ちいさこべ」のチエミさんを、羽仁さんは「チエミさん良くありませんね」と言った。 が、しかし、これは永年ファンの「恨み節」で書いているのではない。 実際、私が見た率直な感想も、正直「良くありません」だった。錦ちゃんに遠慮した様な、 一歩引いたチエミさんの演技に、当時は物足りない歯痒さを感じたものだった。
だが、羽仁さんはこの心優しき映画への評価と、監督としての大先輩田坂具隆氏への尊敬の 念は充分に持っていた。随分長い時間を割いて、この映画のことを喋った。「人は一人では 生きられない」と言う映画の中の言葉を引用して「これがこの映画のテーマ」と言う様のことを 仰った。そして私には今でも忘れられない言葉を続けた。大阪の養護学級の小学生が書いた (と私は記憶しています)作文の一節を紹介した。「一人が十歩歩くより、十人が一歩歩くこと」・・ 「ちいさこべ」に流れる思想、或いは思いはこの言葉だろう、と。
こんなことを書くと、でぶりさんに「へっへっ!」と鼻先で笑われ、軽蔑されることは充分に 覚悟の上である。そしてそして、もっと笑われるだろうが、私はこの言葉を座右の銘にして来た。 新入社員の時の決意の文にも書いた。私にもそんな初心な時もあったのである。 佐賀北高の野球部の監督の言葉を聞いて、この「一人が十歩歩くより、十人が一歩歩くこと」 の言葉を久しぶりに思い出し、何だかとても嬉しかった。
およそ作風の違う羽仁さんが熱く語り、これも作風の全く違う深作欣二監督も「ちいさこべ」を 高く評価していた。もう一度じっくり見たいと思っている。
![]() |
No.316 - 2007/08/25(Sat) 20:34:45 [p2036-ipbf611fukuokachu.fukuoka.ocn.ne.jp]
|