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先日、ペシャワール会現地代表 中村哲さんの「医者、井戸を掘る〜アフガンの大地から〜」という講演会に参加してまいりました。その数日後、同会の伊藤さんが、拉致され、乱射に近いかたちで足に十数発は撃ち込まれたとみられ、腹部に1〜2発の貫通、後頭部の挫滅、顔面の打撲痕が確認され、殺されたとニュースで知り、私は、意味がわかりませんでした。アフガニスタンの治安も悪化していて、反政府武装勢力のタリバン報道官を名乗る人物が犯行を認めていることについて、中村さんは、 「拉致グループはタリバンではない。タリバンがこんなことをするはずがない」「我々が言うタリバンとは、マドラサ(イスラム神学校)でちゃんと教育を受けた、礼儀と道理を身につけた者を言う。しかし、9・11(米国同時多発テロ)後、偽タリバンが増えた。彼らは本当のタリバンではない」タリバンが拠点とするアフガンとパキスタン国境地域で、ハンセン病治療や井戸掘りなどを20年以上続けてきた中村さんはインタビューに答えられていました。また、国際的な非難を浴び孤立するタリバンとその母体のパシュトゥン民族を支え、タリバン側からも一定の理解を得ていると自負してきた中村さんだからこそ、これらの報道とは違う目線で物事を見ることができるのではないかと私は思います。そして、講演会では、タリバンは過激な人ではなく、「普段はどこにでもいるような普通の人達。しかし、人は追いつめられると過激になってしまう。」とおっしゃられ、片方だけの言い分だけで何事も判断すると、物事の真相がズレてしまい、それは危険なことではないかと私は思いました。 また、何が原因で、何が真実かは、まだ、わかりませんが、自分のことよりも、人の為になる事を考え実際に現地に行き、農業の指導や、乾燥に強いサツマイモの普及などに携わり、現地の人の信頼も得てアフガニスタンに溶けこまれていた、善意あふれる伊藤さんが殺害されたという現実は、悲しいと同時に一言では解決できい “負”の連鎖が隠れているように感じます。 9・11(米国同時多発テロ)が起き、ブッシュ大統領は「テロリストの味方をするか テロリストと戦うか」という白か黒の選択で、その間にいる人はどうすればよいのかという事はクローズアップされず、“悪のタリバン 正義のアメリカ”という観念が広がり、その当時、世界はころりと騙されていたように思うと中村さんはおっしゃられていました。ピンポイント攻撃で一般市民に被害を与えずに攻撃できると 軍事評論家まで評価していたようですが、テレビでみたものは、“爆弾を落とす側のみで、落とされた側の映像はない”実際に被害を受けたのは、逃げ足の遅い子供・お年寄り・女の人で、無差別な爆弾だったと教えて頂きました。やはり、ここでも、事実は報道されていなくて、何が真実か?というものを見極める“自分自身の目”が必要だと感じました。そして、殺害されてしまった伊藤さんを通して、改めて、アフガンや他の国でも無差別に不条理に殺されている人が、たくさんいるという現実が今もあるという事を感じ、真実を知る為にも、私は、まず、関連のある本を読むことや、講演会に参加するなどと、知る事から始め、そこから自分にできるアクションをしていく事で少しでも良い方向にむかえたら…と考えております。 話を講演会に戻しますが、アフガニスタンという国は、人口2,000万人、もともと農業国家で9割が農業・牧畜により、ほとんどが自給自足で成り立っていたそうです。そして、意外にもこの国は、山や谷が深く、民族の十字路と呼ばれ他民族国家で、想像するような国ではないと中村さんはおっしゃられていました。 「金がなくても食っていける 雪がないと食っていけない」という格言があり、かつて、奥深い山の雪溶けの豊かな水が、人も動物も植物すべての命をつないでいたそうです。また、アフガニスタンという国があり、国家というもの存在していますが、その国家は体裁の為、かざりのようなもので、実は、地域がバラバラの民族で細かく分かれ、それぞれの地域地域で、“自分たちの事は自分で決める”という意識が高く、良く言えば自治制がとても強く、その中で、社会を繋ぐものは、最も保守的で古典的なイスラム教との事で、地域の中心には必ずモスクがあるそうです。また、中村さんは、そういった宗教や文化の捉え方を外国の人は間違えやすく、ただの“違い”だけなに、そこに“善悪”や“優劣”をつけようとし、自分の思想のままに理解しようとする傾向がある。「人を理解する」言うのは簡単ですが、忍耐・努力が必要で、今でも“いかにして、相手の事を理解するか”という気持ちを大切にし、宗教や文化が違っても、その枠内で対応できることがあるともおっしゃられていました。 また、医師の中村さんは、最初はハンセン病の医療活動を中心にされていたそうです。しかし、現場で実際に患者さんを診療する中、ハンセン病のみではなく、アフガンの貧しい村々、一般の人の病も診る方針になったそうですが、その頃アフガニスタンでは人類が経験した事のない世紀の大干ばつが続いており、キレイな飲み水もなくなり、作物が収穫できず、大人たちは、わずかな水をめぐって争い、人々の心も荒廃してしまい、感染症が広がり、まずは抵抗力のない子供が栄養失調になり、赤痢や下痢によりコロリと死んでしまうという切実な現状があり、医療以前の『“餓えや渇き”という問題 これらは薬では治せない。まずは、“清潔な水+食べ物”があれば9割がた健康を保つ事ができ、“100の診療所より1本の水路”が必要』「水を得るしかない 人々の健康の為に」という想いから、中村さんは医師ですが、一見、医療とは関係ない、“命の水”を求めて井戸を掘ることを決意されたそうです。 「ともかく水が先、とにかく生きてなさい。病気は後で治せる。」印象深いお言葉でした。 生まれて死んでいくという流れの中、“命の尊さは同じ” それを大切にして、できるだけできるだけのことをする。それは、大逸れたことではなく、例えば、目の前で人が倒れていたら「どうしたの」と助ける事と同じで、中村さんは、現地の人々と共に、道具はアフガニスタンで調達できるシャベル・ツルハシなどを使用し、手作業で井戸を掘り始められたとの事です。しかし、いざ掘り始めてみると、決して容易いものではなくアフガンの土地柄、大きな石がゴロゴロと埋まっていて作業を阻み、あれやこれやと協力し現地住民の方と一緒に石を取り除き、何とか井戸を造る事ができたそうです。大干ばつの最中、現地の方は「水があれば生活は良くなり平和に暮らる」 と嘆かれており、映像で見たのですが、水が出た時は、感謝の気持ちと共に、村中の人々から歓声が上がり出てきた水をかみしめられておりました。 そして、2000年7月には、井戸1,600個にのぼり40万人が村を離れなくて済んだそうです。その後、写真を見せて頂き、2,000年9月には枯れ地だった場所が数ヶ月後には水を得る事ができた為、小麦を作る事ができ、ヒビ割れていた茶色の大地が、その小麦で緑色一面になっておりとても驚きました。また、それらを経て、大河川から大規模な水路を造る工事を計画し、中村さんは独自で土木を学び、現地住民の方と共に、その水路もシャベル・ツルハシを使い、現地で調達できる、その辺にゴロゴロとある石を利用し、蛇籠(じゃかご)[※金網に石をつめ、川岸を丈夫にしたり、水の流れを調節したりするもの]と呼ばれる技法で、水路を造られたとの事です。そして、“網と石さえあれば、住民がいつでも修理する事ができる。しかも強くて、水の流れも急に上がる事もなく、工事費も安い”というものが、この技法のメリットで、日本の戦国時代〜江戸時代にかけ、蛇籠という技術が生み出され、この大工事・命の共有を支えたものは、日本のご先祖とも言えると中村さんに教えて頂きました。そして、この水路にかける住民の想いは生きていく為・家族と暮らす為に強く、必死で水路工事をされていたそうです。その際、工事に携わる住民の方には日当も支払われますので、水路ができるまでの生活もできます。その大規模な水路工事(総工費10億円)・また救援物資の小麦や油など(3億〜4億)すべて、ペシャワール会を通して、日本のこころある人からの募金で賄われたそうです。この水路建設により、3,000ヘクタール(数十万人の食料が作れる)が農地に変わり、また 2,000ヘクタールが今後+αになる予定で、総合計5,000ヘクタールに及ぶとの事で、すでに、16万人の難民が生まれ故郷に戻る事ができたそうです。
“アフガンでも何とかできる希望”があると中村さんはおしゃられておりました。
そして、干ばつ・餓え・貧富の差は、現在も続いており、戦争や内戦など、数々の苦難のある国ですが、“アフガンの人々の表情は決して暗くない。逆に、“命の輝き”がある。陰があるだけ、光も見える” 逆に、“もてばもつほど暗くなる”とおっしゃられ、もたない人の単純さがあり、この事業を通し、『“金さえあれば何でもできる 武力さえあれば身を守れる”とは言えない。』ということを、25年間アフガンでの活動をし、感じられたともおっしゃられていました。今後も活動を続けていきたいと話して下さいました。 この講演会の中村さん・お亡くなりになられた伊藤さん そして、アフガンを通して、浮き彫りになった“命・平和とは何か?”という問いを、私達に投げかけてくれたように感じます。私は、この講演会を拝聴し、日本にいる“私達に何ができるか?”という事を考えながら帰っておりましたら、会場出口付近にペシャワール会の募金箱がありましたので、まずは、自分にできる範囲のお金を募金する事にしました。このお金が、ペシャワール会を通して井戸や水路建設に使われ、アフガニスタンの人に“命の水”として姿を変え、役にたてると想うと、こういった“募金”というかたちで、すぐにサポートができるのではないかと思いました。…まずは、小さなアクションかもしれませんが、このようなアクションが世界を変えていく一歩になればと考えております。…最後に、もし、よろしければ、『ペシャワール会』とネットで検索して頂きますと、募金の方法や、活動内容など、詳しく掲載されておりますので、紹介させて頂きます。
今回は、かなり長くなってしまいましたが、最後まで読んでくださり 「ありがとうございます」
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No.415 2008/09/01(Mon) 07:39:57
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Re: 〜アフガンの大地から〜 / 紀里谷和明 |
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今回もレポートありがとうございます。募金のリンク、ここに直接貼ってください。
紀里谷
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No.416 2008/09/02(Tue) 03:42:46
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ペシャワール会 “募金のリンク” / マッコ |
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ご寄付の方法について ご寄付は郵便局の口座払込で受けつけております 01790−7−6559 加入者名:ペシャワール会
郵便局備え付けの払込取扱票の「通信欄」に ご入会の場合は「新入会希望」と記入くだされば、入会手続きになります
なお、お払込みいただきました会費・ご寄付の領収証が必要な方は、「払込取扱票」の「通信欄」にその旨ご記入ください お知らせがない場合は、当会では領収証を発行せず、郵便局払い込み後の半券「払込票兼受領証」を領収証に代えさせていただきますので、ご了承ください
また、会費・ご寄付を受領した後、「受領確認」のハガキ・封書を郵送しております ご不要な方は、「払込取扱票」の「通信欄」にその旨ご記入ください 通信費を節約させていただきました分、現地活動費に使わせていただきます ご協力ありがとうございます
当会は法人格を持たない「任意団体」です お送り下さったご寄付については税金控除の対象となりません 予めご了承いただきますよう、お願いいたします
〜追伸〜
直接、現地に行き、私は自分の生活もあり活動をする事はできませんが、 例えば、仕事をし、お金を稼ぎ、生きていくという日常の流れの中で、 “できるだけできるだけのことはできる”と思うのです。 私は、今回募金というかたちで、自分の稼いだお金が“命の水”として姿を変え、 役にたてるという事を考えると、この何気ない日常を自分なりに 生きていくという事自体が、国際協力に繋がっているのではないかと感じます。
最後に、ペシャワール会 “募金のリンク”も重複しますが直接貼らせて頂きました。 また、ご興味のある方がいらっしゃいましたら、下の方に“ホーム”と書いてある所を クリックして頂きますと、詳しい活動内容などが掲載されておりますので、 覗いていただけると嬉しいです。
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No.417 2008/09/03(Wed) 00:42:00
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Re: 〜アフガンの大地から〜 / エレーナ |
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「片方だけの言い分だけで判断する危険さ」 「ともかく水が先、とにかく生きてなさい。病気は後で治せる」 非常に考え深い言葉ですね・・・。 勉強になりました。ありがとうございます。
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No.418 2008/09/04(Thu) 01:36:37
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Re: 〜アフガンの大地から〜 / マッコ |
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紀里谷さん、エレーナさんへ こちらこそ読んで下さり「ありがとうございます」 返信を頂き、嬉しかったです。 マッコ
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No.435 2008/09/13(Sat) 02:20:36
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Re: 〜アフガンの大地から〜 / 平野大輔 |
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遅くなりましたが、僕のBBS,mixiでも、この内容を転載し、
伝えさせて頂きます。
微力ですが、力にならせて下さい。
講演会の内容、すごく伝わってきました。
書き込みに、心から感謝いたします!
平野大輔
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No.451 2008/09/18(Thu) 23:37:12
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