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記事No.846に関するスレッドです

魚の絞め方 / ルパン
どこのサイトをしっかりと読んでも、魚の絞め方に未だ自信ありません。
そこで質問というより確認なんですが、魚にナイフを入れた時、瞬時に死なないと失敗なんでしょうか?(差しても1分くらい動いていたら急所を突いていないということでしょうか?)
また、尾ヒレの手前にしっかりとナイフを入れても血が出ないのは、やはり失敗でしょうか?
最後に、絞めて魚を持ち帰って、翌朝に料理しようと冷蔵庫やクーラーから魚を出した時に、同じ魚で同じ大きさでありながら、魚体が硬直しているものと、柔らかいものが有るのですが、柔らかい魚は、血がきれいに抜けたという判断は正しいですか?
もし、何匹かの魚のうち、刺身と焼き魚に分けるとしたら、何か判別する手段はあるでしょうか?

No.846 2010/04/04(Sun) 17:00:59


Re: 魚の絞め方 / カゴ屋

カゴ屋です^^
魚の絞め方は、なかなか厄介なものですよね。私も確たる技術は持っていないのですが、いろいろと生理学的な事まで読み漁り、一定の解釈を持つようになりました。正しいか否か、いまのところ自身の経験の中では整合性を保っています。(笑)

ちょっと長いですが(^^;──魚を絞めるとき刃を入れる事には、大まかに「絶命」と「血抜き」の二つの意味があります。

【1】魚肉の時間経過による変質

■即殺によって死後硬直の開始を遅らせる

魚は釣り上げられると呼吸ができなくて暴れます。またスカリへ入れて活かしておいても、思うように泳げないので大きなストレスを感じます。このとき魚肉を構成する筋肉のグリコーゲンが大量の乳酸に変化し、「ATP」と呼ぶ筋肉を緩める作用を持つ物質を消費させます。
絶命した直後に「ATP」が失われている魚体は一方的な硬化を始める──これが死後硬直の始まりです。そこで、釣り上げた魚をただちに絶命させる事で乳酸の発生を抑え、死後硬直が始まる時間を遅れさせるワケです。
悶絶死をさせないためには、一撃で絶命させなくてはなりません。そこで脳幹神経が集まる延髄に刃を入れることで、脳死をさせる事ができます。脳が働かなければ、ストレスを感知しないという式ですね。

余談ですが、ここで脊髄に沿った神経を破壊してやると、魚の体は自分が死んでいる事を察知でないので、さらに死後硬直の開始は遅くなります。これを「神経絞め」といって、ブランド魚などでは魚河岸で丁寧に行われていると云います。この状態は分類上「活け魚」とされる場合もあるようです。
私も磯で神経絞めをやってみましたが、素人の手には余るもので、あっさり諦めました。(笑)

死後硬直が始まるのは、「即CENSOREDるほど遅く、悶絶が長いほど速い」という事です。

■死後硬直の後
死後硬直が始まると、魚肉はどうなるか。
完全硬直に達したときイノシン酸が増加し、同時に魚肉の透明感が白濁化します。イノシン酸も旨味成分の一つ。魚身のプリプリ食感が美味しい魚は、この時点が食べごろとなります。

さらに時間が経過すると、魚肉中のタンパク質が酵素によって分解されアミノ酸に変化します。同時に硬直は再び軟らかくなっていきます。これが「自己熟成」と呼ばれる段階で、多くの魚が食べて美味しいと感じる頃合いですね。
さらに更に時間が経過すると、バクテリアなどの発生によって腐敗へ向かいます。

つまるところ、魚の「プリプリ食感」と「うま味」は背立するもの。好みによって食べ分けたり、あるいは魚種に応じて、どの段階で食べるのが美味しいと感じるか、という結論になりそうです。
魚の「うま味」を重視すると、いわゆる生け簀から水揚げした直後に調理した魚は、あまり美味しくないという事になり、一方で刺身の歯応えを感じようとすると、魚本来の味はいささか薄くなってしまうのですねえ。ブリやヒラマサ、マグロ、カツオ、などは寝かして熟成させた方が美味しいと云いますし、オコゼやヒラメなどは早く食べたほうがお得。また、調理に至っては、火を通したほうが美味しさ感を増す魚もたくさんあります。
「活け絞め」は、死後硬直を遅らせて最も鮮度の高い状態で調理場へ運ぶための技と云えるのではないでしょうか。

もう一つ余談。活け絞めを行った後の保管温度は、摂氏0度より5〜10度のほうが死後硬直の開始をより遅らせる事ができるそうです。
そこで、クーラーへ海水を注ぎ、角氷を浮かべた「潮氷水」を作り、釣っている間はそこへ放り込んでおきます。そのまま持ち帰れば良いのですが、重たいので釣り終わったら水を抜き、氷を敷き詰めた中へ魚を丁寧に横たえます。
ただし、氷に直接魚が触れると身焼けを起こすことがあるので、必ずタオルや網などで魚を保護しておくと良いようですよ。

【2】血抜き

魚を絞めた後、体内に血液が残っていると魚肉に回ってしまい、これが生臭さの一因になってしまいます。とくに血合いの目立つ青物では顕著なので、しっかり血抜きを行う事が肝要なようです。
エラから刃を入れ延髄を切断するのは、神経と同時に動脈を切ることになります。一方で尾(尾差)の直前の側線付近を切断すると、ここにも動脈があります。二カ所の血管を切ってやれば、血抜きを行いやすいワケですね。
もう一カ所。魚の心臓はエラと胸ビレの間付近にあり、エラの下半分に包丁を入れると、心臓の直後の血管を切断できます。
この3カ所を切って5分程度海水へ浸しておけば、きれいに血抜きが行えます。

お話しにあった二尾の魚の違いは、主に最初の項目「死後硬直の時間」に関わることではありませんかね。血抜きの合否と死後硬直は、申し上げたように別物と私は考えています。
刺身と塩焼きは、そうですねえ、やはりお好み次第でしょうか。プリプリ食感の刺身がお好みでしたら、硬い魚を捌くという案配です。
しかし、立派なチヌですね〜。お見事!

長文にて、失礼いたしました。m(__)m

No.856 2010/04/05(Mon) 07:20:20


Re: 魚の絞め方 / 管理人

具体的にはチヌと言うことでカゴ屋さんの解説とだぶりますが、テク面から補足しますね(^^)b

チヌに血抜きはあまり必要でないです。青物ほど血量が多くないですしすぐ凝固しますから。
それよりまず即死させることです。慣れないうちは中々急所を締められないはず。
とりあえず目の少し後ろをざっくり深く刃物を入れて下さい。
裏へ通り抜けるぐらい深く入れないと届きませんよ。
背骨を断ち切るイメージをもてば、場所的にもテクニック的にも間違いありません。
ここは延髄で神経と血管が集中して通っているところです。
当然、急所は固くて強い鱗で頑丈に保護されています。
背骨を断ち切るぐらいのイメージでやらないとまずダメです。
※名人は千枚通しであっさり締めますが、真似はできません(^^;)
目が虚ろになって口がパカッと空いたら即死という合図。

ときどき初心者が締めるのを見ますが、刃が奥まで届かず表面を傷つけてるだけです。こわごわやってもあきまへん(^^)b

最後にえらぶたから刃を差し込み、エラの付け根を切って手で引っ張ればとれます(簡単に書きましたが慣れが必要)。
チヌに血抜きは必要ないと言いましたが、チヌも大型になればやはり有効です。
エラは臭みの大きな原因ですから、血抜きと言うよりエラを取ると覚えておかれると良いでしょう。尻尾を切るより遙かに有効です。
エラ取りは文章では説明しにくいのですが、魚を扱い馴れたら漁師でなくても誰でも簡単にできます。実践でコツを覚えて下さい。

総体磯魚、特にチヌの鱗は固いです。玩具のような安物の刃物ではなかなか通せません。
ちゃんとした刃物を使って下さい。身を切るのが目的ではないですから、細身で鋭く頑丈であれば刃そのものは小さくてもかまいません。
良く切れそうな薄いブレード(カッター状)はダメです。切り出しのように突いて切る形状が、締めに向いています。
しっかり握れる柄の大きなものが選ぶコツです。
ここらは道場にも詳しく書いています、参考にして下さい。

どこのサイトをしっかりと読んでも、魚の絞め方に未だ自信ありません。

>差しても1分くらい動いていたら急所を突いていないということでしょうか?

一発で即死させないとダメ!

>尾ヒレの手前にしっかりとナイフを入れても血が出ないのは、やはり失敗でしょうか?

磯魚は青物と違って血は余り出ません。水に浸けてもすぐ凝固します。つまり失敗ではなく余り効果的でないと言うこと。

>同じ魚で同じ大きさでありながら、魚体が硬直しているものと、柔らかいものが有るのですが、柔らかい魚は、血がきれいに抜けたという判断は正しいですか?

カゴ屋さんの回答通りです。

>もし、何匹かの魚のうち、刺身と焼き魚に分けるとしたら、何か判別する手段はあるでしょうか?

カゴ屋さんの回答通りです。柔らかいと言っても死後硬直がまだの鮮度が高い状態と、死後硬直がほどけた状態の柔らかいとはえらい違いです。固い柔らかいだけの判断でなく鮮度もよく確認して下さい。
個人的な感想ならチヌは身に締まりがなく水っぽいので、固めの方が好きかな。刺身なら氷締めが地番美味しいかな(^^)

では健闘を祈る(^^)b

No.859 2010/04/05(Mon) 16:24:47