「星がキレイだ・・・」
起き上がると,ペットボトルに手を伸ばした。 時計の針は12時を指そうとしている。 「フゥ〜ッ」 噴出す汗を先程まで顔に掛けていたタオルで拭うと,僕は目を細め、江の島を見ていた。 目を覚ました時,束の間「星空」と思ったのは,そのブル−地のタオルから,ところどころ強烈な陽射しが透けて見えていて、それがまるで「プラネタリウム」のようだったからだ。 2年振りの海は,2年前と変わらず、そこにあった。 ただ今日は風がとても強く,いつも最初に立ち寄る「第一チェックポイント」は断念し、この「サブポイント」で、久しぶりにサンオイルを塗っていたのだ。 江の島はもうすぐそこだ。 アクエリアスを飲み干すと荷物をまとめ,止めてある自転車に向かって歩き出した。 強烈なアゲインストの中,力強くペダルを漕ぎ出す。 沢山のブレイクした波が,絶え間なく一斉に浜に押し寄せる様は、まるで、戦争映画の一場面のようだ。 今日何度目かの「また来たよ」を呟きながら,街灯の上で羽を休めるカモメ達に目で挨拶をしていた・・・
「海に向かって走る事は,夏に向かって走る事だ」
ふと,そんな言葉が脳裏を過(よぎ)る。 ここ数年,僕の夏は、確かにそうだった。 市営球場前の道から海岸通りを渡り,サイクリングロ−ドに出る。 そこで一旦自転車を止め,右の「サザンビ−チ」、ほぼ前方に位置する「烏帽子岩」、最後に左前方に遠く見える「江の島」の順に視線を移す。 満面の笑みを浮かべている自分を感じながら,今日最初の「また来たよ」を呟きながら、ゆっくりと走り出す・・・
短いけど、とびっきり暑い夏が、僕の前に続いていた。 あの,いつもの夏が、続いていた・・・
|
No.289 - 2007/08/17(Fri) 17:16:45
|