菜の花の黄色を揺らしながら列車が入線してくる。 ホ−ムで待つ僕の頭上には,見事なまでの薄桃色が溢れていた。 薄桃色と黄色の饗宴は,今の季節、そこここで見られるのだが、僕が一番楽しみにしている風景は、通勤途中の東海道線沿線にある。 下に菜の花,上に桜というコントラストはとても絶妙で,一分でもいいからその場所に電車を止めて欲しいと願ってしまう程だ。 先日ジョ−ジさんの店(エッセイ「ただ風の中で」参照)で飲んでいた時,スタッフが「丹沢では、山の上から吹き飛ばされてきた風花が、桜と一緒に舞い落ちる光景はとても綺麗でしたよ」と話してくれた。 その幻想的な様を思い浮かべながら傾ける焼酎のお湯割りは,また格別な味とともに、僕に幸せな時間を運んでくれたようだ。 しかしその夜は,随分ジョ−ジさんと話し込んだものだ。 外に出ると,透明な冷気が僕を包み込んだ。 風も止まった静かな夜に,満月に限りなく近い月が浮いていた。
地元の駅に降り,家路を辿り出した僕が、ふと立ち止まり見上げると。 見事な桜越しに,あの満月に限りなく近い月が見えていた。 やはり風はない。 心地良い酔いとは違う「何か」が僕を包み込む。 それが「何か」分らないまま,僕は暫くそこに佇んでいた。
僕の目の前を,桜の花びらが、ひとひら、舞っていた・・・
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No.198 - 2007/04/05(Thu) 19:16:13
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