◆フィリピン訪問報告―その7 (ドネサイトに載せた報告をこの場にも転載します。)
※フィリピン訪問の報告が終わっていませんでした。 遅くなってしまいましたが、最後の日とまとめを載せさせてもらいます。あらためて、冨田さんのクリニックを応援し支えたいとの思いをこめて。。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
3月28日、この日はクリニックの診療でクリニックの始まる9時前くらいにクリニックに行く予定だった。 朝ごはんを食べた後、洗面しようとしてたら、冨田さんから「お産がある」と言われた。 フィリピンに来てすぐに「もしお産があったら一緒に行く?」と聞かれて「はい」と返事した。もちろん、妊婦さんや冨田さんの迷惑にならなかったら、だけど。。 訪問者がいる時はお産が止まるらしい。確かに私たちが訪ねてからお産は止まっていたようだ。おかげで村々の巡回にも行くこともできた。が、最後にお産となった。
そのままさっさとクリニックに向かった冨田さんをあわてて追いかけ私もクリニックに向かう坂道を降りた。お産はいつくるかわからないし待ったなしだ。こうしていつも、いつ呼ばれるかわからないんだろうな。 お産の部屋には妊婦さん、ティナさん、冨田さん。 私が外で待ってたら「入っていいよ」と言われた。 竹のベットの上で寝ている妊婦さんの背中をさすった。初対面で医療職でもない私がこの場にいることが不思議でもあった。この日はかなり暑かったので蒸し暑いお産部屋の空気をうちわであおぐ。 けど初めてのお産で不安や緊張もあったみたい。なかなか赤ちゃんが降りてこないようだった。妊婦さんも落ち着かないようなので私はまた外で待機していた。
そのうち、クリニックの診療を待つ人たちが次々とやってくる。が、お産中ではどうしようもなく、みんな診療の始まるのを待っている。 しばらくして冨田さんに呼ばれてお産部屋に入った。生まれたようだ。へその緒がまいてたので赤ちゃんは自分で加減しながらゆっくり降りてきたんだと聞いてなるほどと感心する。が、感動する間もなく、、冨田さんに「この服を着せてあげて」と言われて、生まれたばかりの赤ちゃんにベビー服を着せる。私がしていいのかなとも思いながら、そんなこと言ってる場合じゃなくて、ドキドキしつつも小さな赤ちゃんに触れた。 あの時のほんとうに小さな手、小さな体。。。その感触が今も残ってる。 その後、赤ちゃんはお母さんの胸に抱かれて、冨田さんはお母さんと赤ちゃんの写真を撮った。(こうやって私たちがいつも見る冨田さんのブログの写真が撮られているんですね) そしたらもう、あとはティナさんがいるし、特に心配もなかったようで、冨田さんはただちにお産部屋を出てクリニックの診療に入った。息つく暇もないし、感慨にふける間もない、その素早さに私はびっくり。。そっか〜、お産ってここでは本当に普通のことなんだ〜と妙に納得、実感しました。そしてあとはママと赤ちゃんに任せて、私もお産部屋を出ました。
この日は冨田さんが診察するベッドの近くで、診療を終えた患者さんみんなにヒーリングをする形になった。風邪、マラリア、皮膚病、頭痛、めまい。。。様々な症状の患者さんたちの背中をさすったり、エネルギーを通した。冨田さんが近くで通訳してくれるのでその人に必要な助言を伝えることもあった。この日はいったい何人の患者さんを診たのか私もはっきり覚えてない。まさに次々だった。
その途中、外で診療を待ってる人が冨田さんを呼んでいる。 その大きな呼び声に出て行ったら、お産部屋が慌ただしい。開けたらいつの間にかもうひとり妊婦さんが来ていてティナさんが介助して出産!!したところだった。 知らずにお産部屋に入った私はびっくり!! あわてて冨田さんを呼んだ。お産部屋に出たり入ったりしていたら犬のミルキーも一緒に出たり入ったり。。先に生まれた赤ちゃんとママに、新たな産婦さんと赤ちゃん、家族の人、ティナさん、冨田さん、ミルキー、私。。小さなお産部屋はガヤガヤいっぱい。しかも暑い! が、そんなことは言ってられない。 今度の産婦さんは出血が多く冨田さんが点滴の処置をする。 私は出血が止まるように。妊婦さんのお腹に手を当てて祈った。 お産は普通のこと、だけど何があるかわからないのもお産だった。 緊張の時間だった。(自分の無力さを思いました。) その後、産婦さんの様子を見ながらも、冨田さんはまた診察を再開。 クリニックの前で待っていた人たちをみんな診終わるまで、この日の診察は続きました。終わった時には正直かなりへとへとでした。 冨田さんの日常のハードさのいくばくかを、身を以て体験した一日でした。(出血していた産婦さんはその後出血も止まったよう。。やれやれよかった。)
その後、クリニックのスタッフのアテマさん、テッシーさん、ティナさんから「自分たちも見てほしい」というリクエスト。どうも「おばけがついてる」とか、そんな話がこちらの人たちの間ではよくあるみたい。どこまで本気かは別にして日本でも狐とか霊がついてるとかいうし、、どこでも似たようなとこがあるんだな〜と可笑しかったです。 そんなので笑いながら「私はついてない?」みたいなノリもあったのですが、(もちろん!ついてません!!)スタッフの3人にひとりひとりエネルギーを通しました。クリニックスタッフの皆さんそれぞれの、人間的なあたたかさや誠実さが伝わってきて、冨田さんと彼女たちの信頼、それぞれのクリニックへの思い、クリニックへの誇り。。そのなかでこのクリニックがあることをしみじみ感じました。彼女たちあってのクリニックなんだと。(素敵な仲間たちですね!冨田さん♪) 疲れていたのですが、そこに通いあう心に触れて、こちらが癒された心あらわれるようなひとときでした。
その後、クリニックの裏にあるティナさんのお家で遅いお昼ご飯を頂き、クリニックの前で売ってる青いマンゴーに塩からみたいのをつけたおやつを食べながら冨田さんの家に戻りました。すっぱい味が疲れた体に元気をくれました。 部屋に戻って「明日は帰るのか〜」と思いながらベッドに寝転がりました。ひと息ついてから洗たくをして、近くのサリサリストアにビールを買いにいって、シャワーをして。。最後の夜となりました。 テッシーさんの美味しい夕食を食べて、冨田さんがこっちの離れにやってきて、またまたいろんな話に花が咲きました。この夜はテッシーさんとの約束で体調を崩しているテッシーさんの娘さんの相談も受けました。 家族がお互いを思いあう気持ち、愛する人を思う気持ち。。。辛かったことや頑張ってきたことを誰かにわかってほしいと思う気持ち。。国や言葉、文化や習慣が違っていても、そういうにんげんの気持ちって同じです。すんなりいいことばかり嬉しいことばかりではいかない現実社会のなかで、色んな気持ちを抱えながらも、幸せを願う。。 フィリピンに行って、たくさんの人たちに出会い、たくさんの人たちのそんな心に触れて、、何度も胸があつくなる思いをしました。そんな人の気持ちがとんでもなく尊いものに思えました。 そのひとりひとりの願いが叶いますように。叶えられるような世の中になりますように。。。今、あらためてそう思います。 |
15/05/2008(木) 12:34:28
No.3777 さき |
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◆フィリピン訪問記―その8 最後に
3月29日朝、いつものように朝食をすませ、離れに来た冨田さんと話します。この日は学校が休みで冨田さんの二人のお子さんも来てくれました。元気いっぱいの二人です。団らんタイムを楽しみながら、帰りの打ち合わせです。冨田さんにスービックから少し行ったオロンガポの町まで送ってもらうことになりました。そこからマニラまでの長距離バスが出ています。トライシクルとバスを乗りついで、オロンガポへ。バスチケットの買い方も教えてもらって(結局買ってもらいました)、乗るバスを確かめて、出発するまで見送ってもらいました。照れながら手を振ってくれた冨田さんの姿がかわいらしくて愛しくて抱きしめたいような気持ちになりました。私たちは帰るけど、離れるんじゃなくて、つながっているんだと感じていました。 冨田さんは私たちが出会った患者さんたち、重症の気になる患者さんたちの写真をプリントしてくれました。私たちが患者さんたちの治癒を願えるように。その写真を持って帰りました。
お金がないと病院に行けない、いのちがお金で選別されることが、そのままであっていいわけない。その現実と向き合い、自ら引き受けながら、日々患者さんたちのいのちを預かる緊張のなかで、時には手立てのない苦悩のなかで、めいっぱいの出来ることを思いそれを実行し続ける冨田さんを、私は心から尊敬します。 2007年に生まれた赤ちゃんは250人、診療した患者さんは7000人―。 それだけの人たちが冨田さんのクリニックを支えにしています。病院に行くお金がないからクリニックを頼って来るしかない。。と冨田さんは言います。それは確かにそうですが、そうしてクリニックを頼って来る人たちに冨田さんが注ぐ愛情。。それがあるからこそ、それが来る人たちに伝わっているからこそ、クリニックがこれほど信頼され頼りにされているのだと私は思います。この信頼と絆がクリニックに来る人たちの支えになっているのだと思います。
今年2008年の11月以降、クリニックの存続は不確定です。冨田さんは継続したいけれど、これまであった国際協力団体からの援助が無くなるので資金的に厳しいのです。なんとしてもこのクリニックを閉じさせてしまってはアカン!って思ってます。 クリニックを頼りにしているたくさんの人たちのために。 同時に私たち自身のために。
去年冨田さんのお話会をした時に、日本の若者がみんな途上国で一定期間を過ごす機会をつくったらいいんだ、という提案をされていました。 今回たくさんのフィリピンの人たちとその暮らしに触れてまさにそのことを思いました。 フィリピンの人たちの暮らしはシンプルです。私たちが訪ねた人たちはどの家族もみんな小さな家で暮らしていました。熱帯の気候もあるでしょうが、どの家も簡単なつくりで、外壁と屋根があって、家族が過ごす空間があって、他にあるのは竹や板でつくったベッドくらい。このベッドで家族みんなが(子どもたちがたくさんいる!)寝るんだろうなぁ、どうやって寝るのかなぁと思ってしまうような、そんな家ばかりでした。 物は極端に少ない。人は食べるものがあって、着るものがあって、寝るところがあれば生きていける。しかもそこには家族の絆や、あたりまえに助けあい、支えあう、人と人とのつながりがある。その人とのつながりが、フィリピンの人たちの生きるエネルギーやおおらかな笑顔のみなもとなのだと感じました。 フィリピンの大多数の庶民の暮らしに触れたら、やっぱり日本は豊かです。けどこの国では、人を信じられない。心を開いて人とつきあうことができない。人と人との関係が希薄になってしまって、にんげんの生きるちからが奪われていっているように思います。 強い者勝ちの仕組みが社会や人間関係にも貫徹し、むきだしの競争やいじめが日常化している。そのなかで心を縮めている者たちのなんと多いことか。CENSORED者年間3万人以上。生きることを喜べない。それがこの国の現実です。
生きることさえ困難であるような貧しさがあってはならないと思います。 お金がないために生きるために必要な医療も受けられないなら、その医療って何なのかと思います。 フィリピンにはそんな現実があふれています。 いや、フィリピンだけじゃない。そんな現実におかれているのが世界の多数者なんだと言えるでしょう。 その一方で、世界のなかではやっぱり物が豊かにあって、ほとんどの人が最低限の食べるものや着るもの寝るところに事欠かないような日本で、人の心はすさみ、生きることの希望は失われています。
幸せって何なのか。生きるって何なのか。 人間にとって本当に必要なものは何なのか。
フィリピンの人たちの生きる姿から、私たちはもういちど私たち自身の未来や生きることの希望を紡ぎだしていきたいと思うのです。 世界の現実を知ること、そして人間にとって本当に必要なものに基盤をおいた、新しい価値観と世の中を、世界中の人たちと分かち合い支え合い、心を交わし合って、手を携えあって、ともに生きていくことができるような未来を育んでいきたいと思うのです。 フィリピンの小さな診療所から、私たち自身の生きるちからをとりもどしたい。 そのちからをわかちあって、膨らましあっていきたいと、切に思います。 冨田さんとフィリピンの小さなクリニックへの感謝をこめて、報告を終わります。 |
15/05/2008(木) 20:31:38
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No.3780 飯沼 |
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さきさん、ずっと咳が出て、体調が悪かったのに、フィリピン報告ありがとう。 私が補足する余地もないですね。 重箱の隅をつついて、「シャワーではなく、大きな桶に溜めた水での水浴びですね」とでもコメントしておきましょう(笑)
こういう文章が書けるようになれば、さきさんも回復だと思います。 ほんとに、何もかもがさきさんが書いたとおりだと思います。 私が書く余地がない、と2回目ですね。
冨田さんはお産や診療だけではなく、巡回診療もしていて、あれがまたすごいですよね。 クリニックのスタッフにエネルギーを通しながら、いろいろなことを伝えました。 克から伝えることを私が言ったに過ぎないのですが。 それらはやはりほぼ適確だったようでしたが、私は何よりもあのクリニックのスタッフの皆さんの人柄にとても好感を持ちました。 それぞれに役割も個性も異なっているのに、窮屈じゃなく、心が大きなひとつに重なっているのを感じました。 それってやはり嬉しいことですよね。 そして、悠々塾の仲間たちの雰囲気にも似ていて、余計に嬉しくなりました。 「冨田さん、いい仲間がいるね!!」って。
日本は明治維新後は欧米に、戦後はあらゆる面でアメリカに追随してきましたが、そのアメリカでも近代医療は非常にお金がかかるようです。 アメリカでは個人破産者が年間200万人以上いて、その半数以上は高額医療費を払えなくての破産だそうです。
冨田さんのクリニックは、今年の秋以降は経済的な理由で存続が危うい状況です。 「情熱大陸」を観て感動したり、冨田さんの講演会に行って涙を流す人は多くても、実際にお金を出して支援する人は少ないのだそうです。 年間500万円ほどで、クリニックの活動も富田さんたちの生活も維持できるとか聞きました。 しかし、その500万円がなかなか集まらない! せめて冨田さんが日々のお金のことに心を煩わせることなく、彼女らしい働きができるように、私たちも頑張りましょう。
掲示板の読者の皆さんも、どうかよろしくお願いいたします。 お友達やお知り合いにも、ぜひ呼びかけてくださいね。 |
16/05/2008(金) 00:15:19
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