[ 掲示板に戻る ]

記事No.187に関するスレッドです

宝田明さん / タラオ・バンガイ
アンカーさんがチエミ・ファン掲示板に、宝田明さんのことをこう書いている。

>宝田明さんて良い意味でキザな役者で、そう言う振る舞いの似合う人だなあと
>思いました。こういうタイプの俳優っていなくなりましたよね。

チエミ・ミュージカルで舞台に進出した高島忠夫さんと宝田さんだが、高島さん
は役者としては存外短命で、活躍の場をTVの料理番組などに移した。

宝田さんは離婚とかがあっても、愚鈍?に本業にこだわり、演技や歌に磨きをかけた。
映画では「二人の息子」(千葉泰樹)「小早川家の秋」(小津安二郎)が代表作だろう。
他では成瀬巳喜男の「放浪記」の「福地貢」の役が良いと思う。

「放浪記」は封切り当時は評判が悪く、入りも良くなかった。が、主役の高峰さんは
これには思い入れが強く、事あるごとに語っている。この映画の私の印象は何故だか
「男性映画」だった。伊藤雄之助、加藤武、仲谷昇、加東大介、小林桂樹と言った、
一クセも二クセもある役者が鎬を削り、林芙美子役の高峰さんもかなりディフォルメ
された芝居をしている。

この中に宝田さんも居た。林芙美子が惚れて同棲し、別れても付きまとい、金や酒を
せびる肺病病みの陰気な男の役である。同じ文学を志しながら、女が文壇に認められ
ると嫉妬する、こんな役を美男子の宝田さんが演じると「凄み」が出て良かった。
認められて舞い上がっている芙美子を、壁に寄りかかって目を瞑って見ているシーンで、
成瀬監督から何度もダメ出しが出たと言う。「タカちゃん、寝てるんンじゃないのよ」と。

幾らやってもOKが出ないので、宝田さんは高峰さんに聞いたそう。「高峰さん、
(どうすれば良いか)判ってるンでしょ?教えて下さいよ」「うん、判ってる。でも
教えてやンない。自分で考えナ」高峰さんにそう言われカッカした宝田さんは、しかし
何年か後に「あの時高峰さんに言われて、目から鱗が落ちた」と言ったらしい。
「彼は出来る人である。冷たく言われて頭に来ても、後で冷静になって感謝する度量の
人である。」と言う様なことを、高峰さんは書いている。
最大の誉め言葉だろう、と思う。
(蛇足、デコさんの演技の正解?は、芙美子に嫉妬し、燃える思いを腹に蔵いながら、
壁に寄りかかって目を瞑る時、目を瞑ってから壁に寄りかかるのではなく、「カッ!」
とした炎(ほむら)を目に宿してから目を瞑る、だそう)

リ・メイクの「椿三十郎」の代官役は藤田まことらしいが、私なら宝田さんに演って
貰いたい。前作の伊藤雄之助ほどではないが、宝田さんもアゴは長い方だ。
「乗った人より馬は丸顔」の名セリフを宝田さんに言わしてみたい。
彼は出来る人である・・・しかし、これって失礼?

No.187 - 2007/11/29(Thu) 22:04:06 [p2226-ipbf214fukuokachu.fukuoka.ocn.ne.jp]