アンカーさんがチエミ・ファン掲示板に、宝田明さんのことをこう書いている。
>宝田明さんて良い意味でキザな役者で、そう言う振る舞いの似合う人だなあと >思いました。こういうタイプの俳優っていなくなりましたよね。
チエミ・ミュージカルで舞台に進出した高島忠夫さんと宝田さんだが、高島さん は役者としては存外短命で、活躍の場をTVの料理番組などに移した。
宝田さんは離婚とかがあっても、愚鈍?に本業にこだわり、演技や歌に磨きをかけた。 映画では「二人の息子」(千葉泰樹)「小早川家の秋」(小津安二郎)が代表作だろう。 他では成瀬巳喜男の「放浪記」の「福地貢」の役が良いと思う。
「放浪記」は封切り当時は評判が悪く、入りも良くなかった。が、主役の高峰さんは これには思い入れが強く、事あるごとに語っている。この映画の私の印象は何故だか 「男性映画」だった。伊藤雄之助、加藤武、仲谷昇、加東大介、小林桂樹と言った、 一クセも二クセもある役者が鎬を削り、林芙美子役の高峰さんもかなりディフォルメ された芝居をしている。
この中に宝田さんも居た。林芙美子が惚れて同棲し、別れても付きまとい、金や酒を せびる肺病病みの陰気な男の役である。同じ文学を志しながら、女が文壇に認められ ると嫉妬する、こんな役を美男子の宝田さんが演じると「凄み」が出て良かった。 認められて舞い上がっている芙美子を、壁に寄りかかって目を瞑って見ているシーンで、 成瀬監督から何度もダメ出しが出たと言う。「タカちゃん、寝てるんンじゃないのよ」と。
幾らやってもOKが出ないので、宝田さんは高峰さんに聞いたそう。「高峰さん、 (どうすれば良いか)判ってるンでしょ?教えて下さいよ」「うん、判ってる。でも 教えてやンない。自分で考えナ」高峰さんにそう言われカッカした宝田さんは、しかし 何年か後に「あの時高峰さんに言われて、目から鱗が落ちた」と言ったらしい。 「彼は出来る人である。冷たく言われて頭に来ても、後で冷静になって感謝する度量の 人である。」と言う様なことを、高峰さんは書いている。 最大の誉め言葉だろう、と思う。 (蛇足、デコさんの演技の正解?は、芙美子に嫉妬し、燃える思いを腹に蔵いながら、 壁に寄りかかって目を瞑る時、目を瞑ってから壁に寄りかかるのではなく、「カッ!」 とした炎(ほむら)を目に宿してから目を瞑る、だそう)
リ・メイクの「椿三十郎」の代官役は藤田まことらしいが、私なら宝田さんに演って 貰いたい。前作の伊藤雄之助ほどではないが、宝田さんもアゴは長い方だ。 「乗った人より馬は丸顔」の名セリフを宝田さんに言わしてみたい。 彼は出来る人である・・・しかし、これって失礼?
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No.187 - 2007/11/29(Thu) 22:04:06 [p2226-ipbf214fukuokachu.fukuoka.ocn.ne.jp]
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