今年の正月のドラマの特別番組の「雪之丞変化」と「鹿鳴館」は、私的には 一寸楽しかった。TVドラマの脚本家は女性が主流の昨今、それぞれが中島丈博、 鎌田敏夫のベテラン男性ライターの手によるもので、構成のしっかりした脚色で 良かった。但し、結果(出来)に満足したかどうかは、また別問題だが。
「鹿鳴館」は杉村春子で初演されたが、三島と文学座の訣別で、杉村さんでは 舞台の上に乗らなくなったのは、双方とも不幸なことだったと思う。 杉村版はNHK・TVの劇場中継で、昭和30年代に見たことがある。 もう1作「十日の菊」も見た。両方とも誠にすばらしく、鮮やかな杉村の口跡が 今でも耳に残っている。
その後「鹿鳴館」は初代・八重子に引き継がれ、村松英子や佐久間良子、有馬稲子、 若尾文子等も演じ、二代目・八重子も何度か演じ今年も演舞場で演じるそうだ。 大分前に私は日生劇場の若尾版を見た。悪くはなかったが、相手役の平幹二郎の 存在感の方がはるかに際立って居た様に思う。
三島は「台詞は杉村、姿形では八重子(初代)」と言っていたらしいが、 やはりこれは台詞術の長けた役者でないと務まらない、至難の役なのだろう。 今年のTV版の黒木も良く演じてはいたが、存在感そのものが未だ未である。 むしろ相手役の田村正和と、革命家に扮した柴田恭平が悪くなかった。
この「鹿鳴館」は市川崑で映画化されている。池田八朗氏の批評に依れば、 演技的(特に台詞)な合格点は、主役の浅丘ルリ子のみで、相手役の菅原文太、 石坂浩二(今回のTV版の柴田恭平の役)共に、合格とは言えず、若い中井貴一、 沢田靖子は「論外」と書いてある。
確かに浅丘さんの台詞のメリハリは杉村に通じるものがあり、舞台で杉村が演じた 「恋ぶみ屋一葉」を彼女も演じ、これは良かった。博多座で今年再演するそうだが。 粒立った台詞の見事さでは、女優では当代一だろう、と私は思っている。
余談だが市川演出の映画は製作したプロが、税金滞納?の為か、このフィルムを 物納したので、現在は見られないと言う。何とか見たいと、海外で発売されて いないか調べたが、発売された痕跡はなかった。残念である (市川崑氏は92歳で今日亡くなったとか。「鹿鳴館」が再度見られることを祈る)
それならなら、いっそ蜷川幸雄演出で浅丘主演の舞台化は出来ないものだろうか? 但し、蜷川と三島では「世界観」が違うのかもしれないが。 私的には他には、麻美れい、金田龍之介のコンビでも悪くないと思っている。
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No.203 - 2008/02/13(Wed) 22:32:41 [i60-35-79-124.s02.a040.ap.plala.or.jp]
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