私は気づけば、一人書斎にこもって昔の思い出を書き綴っていた。
獅子のように雄雄しく高鳴る心臓からは、
愛神が官能の記憶から、真紅の涙を流していた。
それは悔し涙ではなく、限りない法悦の涙であった。
英雄が、馬車をその頑丈な腕で乗り回す。
ちょうどそのように、わたしは思念の馬車を乗り回す。
そして、沈黙。
神殿の聖娼婦、恍惚の性奴隷。
永遠の女性よ!
神聖なる愛の「迷宮」よ!
魔法が解けたそのとき、「覚醒」のネクタルが喉に冷たく当たる。
抱擁の瞬間の脱魂状態の彼女の顔。
「君は、寂しくて一人になるのが怖かったんだね。」
「僕も寂しくてしょうがなかったんだよ。」
「もしかしてこのすべては、僕の、そして君の、たった一人のショーだったんじゃないかな。」
「こうして共に、鎖につながれてることが、僕たちの絆なんだよ。」
「ははっ。このまま天国の記憶に惑わされながら二人で心中して地獄にいけば、地獄の花が天国の歌を歌いだすだろうね。」
外では、五月雨が泣いていた。
月も目を潤ませていて、
風も甘く切り裂くかのようにただ陰鬱な翼を、木々の元で休めていた。
「君は十分戦ったよ。」
わたしは、帰りの車のなかで、ひたすら泣いた。
声が頭の中で響いた。 「私、あと少ししか生きれないかも。」
私は言った。「そんなこといわないでよ。」
人知れず、涙が流れた。
「君の銀色の心臓に、僕の地獄から伸ばした呪われた手が届いたら」
「そうすれば、冥府がヴェルサイユになるだろうに」
「その刹那が、永遠に胸にやきついて千年は憶えてるだろうに。」
気づいたら、空に虹がかかっていた。
愛してるってのは、すべてを愛してるってことなんだ。
愛ってのは、すべてである君自身のことなんだよ。
万有は銀の音色で照り輝いていた。
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No.6088 - 2017/08/13(Sun) 09:25:49
| ☆ Re: / brahma | | | No.6089 - 2017/08/13(Sun) 19:59:33 |
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