「ブルン、ブルン」 大きな音を出しながらバイクが走ってきた。 トライアンフ500だ。「ブルン、ブルン」俺の横に止まった。 アクセルを握る男は痩せている。鰹の削り節みたいなボサボサのパーマ・ヘヤー。 顔を見ると不機嫌そうだ。理由はわからないけど。眉間に飛騨山脈みたいなシワを寄せている。 「まるでボブ・ディランみたいだな」と思った。 彼が話しかける「ヘイ!ボーイ!」今年で生誕46周年の俺に向かってボーイとは恐れ入った。 「ハイウェイ61号はどこだい?」ほうら、やっぱり彼はディランさ。絶対ディランに決まってる。 「61号線はねぇ、こっから南へ2マイルっくらい行けば自然と合流できるよ」 「そうか、サンキュウ」「ところで、もしかしてあなたはボブ・ディランでしょ」「いや、違う」「だって、そっくりだに、顔」「顔が似てる奴だったら世の中にゴマンといるよ。声が似てる奴だってゴマンといるさ。ゴマンといる奴に対してさらにゴマンといる奴らがこーゆーのさ、あなたはディランでしょ?ってね。そーなると誰が本物のディランか見当もつかなくなっちまう。俺みたいに正直に自分はディランじゃないって言う奴もいれば俺はディランですって成り済ます奴もいるはずだからね。もしかしたら雑誌に載ってるボブ・ディラン写真の85%以上はニセモノ・ディランかもしれないんだぜ。どいつもこいつもディラン幻想にとらわれているだけなんじゃないのかい。ディランはいつも正しいとかなんとか言っちゃってさ。まったく下らんぜ。そんじゃぁあばよ、ボーイ」。 ブルン、ブルンっておっきな音を再び立てながらトライアンフは南へ走り去っていった。 きっと彼こそが本物のボブ・ディランなのさ。俺はそう思った。 答えなんてものが舞う隙間もない位にびゅうびゅうと風が吹きまくった週末だったね。
6日(土)はライブ・イベントが浜松市近郊で被りまくり。その中でわたしが行ったのは磐田市の茶房Zappa。Shyさんの東海ツアー3日目。前座は友人のだあこえさん。 今回のだあこえライブはギターにきまっちさん、パーカッションにたかぼーさんを迎えてのトリオ編成。今まで観てきた彼のライブの中でもトップ3に入るカッコいいライブだった。アコギとエレキの音色を含むアンサンブル具合とか、いつもよりちょっぴり速めの曲調からくる3人一体の疾走感とか。素晴らしかった。だあこえさん、きまっちさん、たかぼーさんお疲れ様でした。 Shyさんのわたしは大ファン。唄や楽曲やライブ・パフォーマンス等々、素晴らしい。そして打ち上げ等でちょっぴりだけど会話をさせてもらってわかる彼の人間性も素晴らしいの。今回のライブもいつも通りのライブを演ってくれた。早くわたしもライブを演りたいよーなんて気持ちが脳裏を横切りながら「イェーっ」なんて言っていたんだ。 Zappaを出ると浜松市内へ。家内の職場同僚の女性の旦那様がDJイベントを演っているそうで。んで、そのイベントの今回のゲストが友人でもあるソーン・レコード店主:クワケンとの事。行かない手はないら。
会場の受付でお金を払ってたら近くにいた若い女のコが俺の着てるキンクスのTシャツに気付いたんだ「あっ!キンクスのTシャツ!カッコいい〜!」だって。25歳ぐらいのコだに。まだまだ世の中、捨てたもんじゃないね。イイネ!イイネ!イイネ!だよ。DJフロアでは、いろんな若者がいろんな音楽を掛けていた。そしてクワちゃん登場。会場は大盛り上がり。ベテランの風格のステージだった。 DJ会場を去る時、階段に若者が座っていた。彼も俺のTシャツに気付いた「あっ!キンクス!俺、ウォータールー・サンセット好きなんすよ」だって。んで俺の顔を見ながら「もしかして清志郎好きですか」だって。「俺、アルバム『シングルマン』が好きなんすよ〜」だって。まだまだ世の中、捨てたもんじゃないね。イイネ!イイネ!イイネ!だよ。 代行運転の運転手が着いた頃には、あんなに降っていた雨が止んでいたんだ。そして気付けば土曜日の夜が日曜日の朝と握手してたのさ。俺に無断でね。
写真はボブ・ディランの写真集から拝借。すごく好きな写真のうちの一枚。この両足をだらりと下げて走る走り方は映画「イージー・ライダー」でもデニス・ホッパーがやっててね。もちろんバイク乗りの俺は真似したさ。
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No.1050 - 2013/04/08(Mon) 23:49:45
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