1980年代に一世を風靡したフランスの某バンドにまつわるエピソードを聞いたことがある。 メジャーデビュー前の1970年代後半、そのグループはヨーロッパの各地を巡業していたらしく、スイスのとあるレストランで演奏した際に客席にいた老人がその演奏に感極まって泣いていたのだそうだ。 後日、その老人は世界に名だたる喜劇王だったことが判明したらしく。 バンドのリーダーは、その話を聞いて「かつて世界中を泣かせたひとを俺たちが泣かせたことがうれしかった」とコメントした。 そんなエピソードでした。
三月某日、何十年もの間、日本中に笑いを届け続けていた著名なタレントの方の急逝ニュースが国内を駆け巡った。 一般の人々が、そして芸能界を始めとする各界のあらゆる人々が哀悼の意をささげた。 ネット上では悲報の当日から、映像投稿サイト内で確認できる映像・・・・・・彼がこれまで披露してきたお笑いシーンを再生して、その死を追悼する人々の投稿であふれかえった。 テレビでも三日後に早々と、おそらく前述したのとおなじと思われる、お笑いシーンを放映する追悼番組が組まれた。 哀悼の意というのは人それぞれだと思うから、人それぞれでいいと思います。
番組の視聴率は20%を越えたそうだ。 五人のうち一人は観たということか。 ぼくにとっても彼の死はとても悲しい出来事でした。 しかし、ぼくは投稿サイトも見なかったし追悼番組も見なかった。 だって「急逝した方の生前の演技を見て、笑ってご冥福をお祈りする」なんて、うーん、ぼくはそんなメンタリティーを持ち合わせていないな。
日々の生活の中、いろんなお店に行くがマスクが見当たらない。 そんな中、布製のマスクが二枚支給されるというニュースが国内を駆け巡った。 ぼくはホッとしました、だって我が家のマスク在庫はもう薄少だから。 この知らせを受けてネット上やマスコミでは、さっそくいろんな議論が飛び交った。 あ、参考までに申し上げますが、「この知らせ」は中村家のマスク薄少案件ではありませんので、あしからず。
「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」ということわざがある。 ボーズニクケリャケサマデニクイ。 ビートが効いたロック・ミュージックで連呼しても大丈夫、と思います。 このことわざ、ロック言葉で言い換えると「チャックベリー憎けりゃジョニー・B・グッドのイントロまで憎い」ってことだら。 もし、ジョニー・B・グッドのイントロがイマイチなひとがいたら、俺はこう言う「チャックベリーの1stに収録されてる『ハバナ・ムーン』って曲、これも聴いてみてよ」って。
同様に某国の某宰相を坊主に例えたとする。 ぶっちゃけた話、彼がしてきたこれまでの数々の言動が現在の「坊主憎けりゃ」な様相の引き金になってる気もする。 バチが当たったな、と言ってもよかろう。 だがしかし、彼の動向案件でなくとも、ネット上のいろんな話をそのまま信じるのはどうだろう? と思います。 だって、ネコやイヌのうんこを「新味覚のチョコレート、ついに発売!」って宣伝してるやつらと同類かもしんないぜ。
冒頭の話だが、喜劇王を泣かせたバンドリーダーはあえてそこで「世界中を泣かせたひと」と簡潔に表現したのだと思う。 だって、どんな人だって知っているのさ、その喜劇王は自分が演じるパフォーマンスの中に「笑い、涙、人間が持つ滑稽な性質、そして体制への批判」すべてを内包させていたことを。 そんなスゴいひとでも、偶然見たレストランでのアマチュアの演奏に泣いてしまうのです。 新ウイルスはぼくらに「笑い、涙、人間が持つ滑稽な性質、そして体制への批判」のセンスを問いかけてる気がするんだ。
B.G.M.「GIPSY KINGS/(same)」 アマチュア時代に、世界に名だたる喜劇王、チャップリンさんを泣かせたグループはこのバンドなんですって。
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No.1533 - 2020/04/06(Mon) 01:07:39
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