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記事No.1534に関するスレッドです

某日日記 / 淳吉郎
四月某日。
不要不急という言葉が叫ばれだして久しいが、先日どうにもこうにも確認をしたい個人的案件がふたつ浮上し、マスクおよび簡易携帯殺菌ジェルを持参し、家内とともに自家用車で出かけた次第である。
ひとつは東名高速道路の下り路線における掛川から浜松までに至る車内から眺める風景の確認。
もうひとつは浜名湖今切れ口における地表面から眺める風景の確認。
こうやって記すと、自分がなにやら19世紀後半のフランス印象派画家のような気がしてくるから、言葉が持つ力というものをあなどってはいけないと思う。
記す人はもちろんのこと、読む人も、そして気軽に「イイね」や「シェア」をする人も、です。

菊川インターから東名に入ることにした。
我が53年間の人生において菊川インターを利用したことが一度もないことが、その時になって判明した。
ギター弾きにたとえて言うならば、ディープ・パープルの『ハイウェイ・スター』を知っているが、ギターで弾いたことが実は一度もなかった、というのにちょっと似ている。
はい、ぼくは弾いたことがありません。
菊川インターへ向かう道筋も国道一号線バイパスが整備されるずっと前の記憶、旧道での「菊川インターはこちら」という青い表示看板を道しるべにしながらの道中となった。
そして、これが非常に良かった。
だって、残るものは残る、変わるものは変わる、そんな感じだったから。
単なる道路に限らず、自分が歩いてきた道筋を振り返るのは悪いことではないと思う。
肝心なのは「そこに居続けているか」それとも「次に進むか」ってことなのだろう。
道が教えてくれた!

掛川から浜松インターへの風景確認では、自分の思い込みと違う部分があった。
やっぱり確認のために訪れてよかったな、と思った。
どうして人間はこんなに「自分は正しい」と思い込んでしまう生き物なのでしょう。
どうして人間はこんなに相手の意見も聞かずに「おまえは間違ってる」と判断してしまう生き物なのでしょう。
道が教えてくれた!

浜松インターを降りたころ、ちょうどお昼ごはんの時刻となった。
どうしようか迷ったが、不要不急のこのご時世でもお客を必要としているお店が存在している、大都会と違う浜松でも存在してるのです。
それを利用するのは悪いことではないと思った。
だって俺たちは、マスクおよび簡易携帯殺菌ジェルをしっかりと持参してるのさ。
国道一号線沿いにある喫茶店に入った。
この店はぼくが二十歳のころから営業している老舗喫茶店である。
実はこの日、初めて入ったんだ。
だって俺は『ハイウェイ・スター』を一回も弾いたことがないギター弾きなんだ、しょうがないら。

家内はスパゲッティを食し、ぼくはドリアを食した。
伝統的な喫茶店のメニューの味だった。
まるで、いつまで経ってもあいかわらずのロックンロールを演ってるあのバンドのように。
レジでお支払いをする際、ひとりで切り盛りしているマスターに「このお店、どれくらいになるんですか?」と訊いた。
マスターは「36年です」と大きな体格なのに、さらに胸を張って答えたのでぼくと家内は苦笑いした。

老舗喫茶店を後にしたら一路、浜名湖今切れ口へ。
浜松に住み続けているとはいえ、今切れ口そのものに訪れるのは初めてなのだ。
だって俺は『ハイウェイ・スター』を一回も弾いたことがないギター弾きなんだ、しょうがないら。
迷いながらも、ようやく着いた。
釣り人がたくさんいた。
駐車場に車を駐めると浜名大橋の真下にある今切れ口までずんずん歩いた。
漁港がかもし出す、ある種の「猥雑さ」に共感を覚える。
好きなバンドなのに、ベスト盤だけを聴いてわかったつもりになってるような奴らには、この「猥雑さ」の意味するところは死んでもわからないであろう。
今切れ口はそこにあった。
潮流が速かった。
不要不急ではないひとたちが間隔を空けて釣り糸を垂れていた。
旦那さんのつき合いでそこにいるのであろう綺麗な若奥さんが連れてるちいさな洋犬がぼくに向かってシッポを振った。

B.G.M.「JOAN JETT BAD REPUTATION/O.S.T」
あえてO.S.T.という表記をしました。オリジナル・サウンド・トラック。
2018年公開のジョーン・ジェットのドキュメンタリー映画のサントラです。
ユーチューブでジョーンの映像を観ていたら一昨年前のフランス野外イベントの動画があった。
もちろんサイコーだったんだけど、後半でジョーンが言った「この前、バッド・レピュテイションっつードキュメンタリーを作ったのよ。良かったら観てね。んじゃぁ次の曲はそん中に入ってる新曲で『フレッシュ・スタート』よろしく」もちろんジョーンは日本語ではなく英語で言いました。
でも俺はジョーンが言った「ネクストナンバー・ニューソング」って言葉にハッとしたのです。聴いたらやっぱり俺が知らない曲だった。
「やべぇぞ、俺。完全ノーマークだった、このサントラ。ジュンキッチーのバカバカバカ」そう言いながら自分の頭をポンポンポンと叩きつつネットでアナログ中古盤を発見、即ゲットした次第。
ジョーン、サイコー!

No.1534 - 2020/04/13(Mon) 23:40:54