22歳の頃、道に迷っていた。 転んだり、滑ったりしてたんだ。 道といっても道路のことではありません。 だって、ぼくは部屋の中にいても迷っていたんだから。 ある晩、ドアをどんどんと叩き続ける音が聞こえた。 ドアを開けると背の高い女のコがそこにいる。 「どちら様ですか?」と訊くと「サリーです」と彼女は答えた。 大きいんだけど、とってもかわいい、まるで子供のような顔だったのさ。 恋に落ちそうになったけど必死にこらえた。 恋心が爆発しそうになって思わず叫んだ「おお!おれの魂っ!」って。 その反動で不本意にも続けてこう言ってしまった。 「大きなサリーちゃん、ジャイアント馬場の奥さんになるのかい?」 彼女の顔はみるみるうちにリンゴのように赤くなりこう言った。 「バッパプ! ルマップ! ラッバッブぅ!」 感情表現の言葉はひとそれぞれなので、ぼくにはわからなかった。 だがしかし、もしかしたら、サリーはそれを我慢できなかったのかもしれない。 ぼくはサリーに「なぜ?」って訊かずに「ごめんね」ってあやまった。 失策オンパレードなのにあやまりもしないどこかの政府と違って、ぼくはサリーちゃんにしっかりと、確実にあやまったのさ。 「自分の失敗を認めることができるひとが本当に強いんだ」 当時の勤め先の社長がそう教えてくれていた。 失敗を認めるどころか、そいつらは今や勝手に検察官の定年までも変えようとしている。 あっ! 気づくとサリーちゃんが玄関から立ち去ろうとしていた。 しまった、あんなくだらんヤツらのことをこの投稿文に記してるうちに、いとしのサリーが去ってしまうではないか。 「サリーちゃん! サリーちゃん! どうしてあなたはサリーちゃんなの?」 ジュリエットがロメオに語りかけるようなぼくの呼びかけに気づいた彼女は振り向いてこう言った。 「ジュンキッチー、道に迷っているあなたのこれからの道しるべを渡しに来たのよ。そしてあたしの本当の名前はルシールなの。じゃあね、ウフン」 サリー、もしくはルシールのウフンなんて言葉にクラクラしながら足元を見ると2枚のレコードが置いてあった。 2枚とも口を開けて叫んでいる男が大写しのレコード・ジャケットさ。 サリー、もしくはルシールにお礼を言おうと思い、腰を上げた。 するとすでに彼女の姿は見えず、世界中のどこでも見える銀色の月光がただただぼくのためだけに光っていたのさ。
信じられないかもしれないけど本当の話です。
B.G.M.「LITTLE RICHARD/LONG TALL SALLY」 いつまで経ってもぼくの太陽です。
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No.1542 - 2020/05/11(Mon) 21:56:46
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