五月某日。週末は朝寝坊が私的に認められている。 したがって朝のウォーキングは夕方となる。 先日、踏切を越えて右折し、東海道線沿いの道に歩を進めた。 左手にある住宅より歓声が聞こえてくる。 見ると二家族ぐらいでバーベキューをやっていた。 そうか、緊急事態が解除されたもんねと首肯しながら通過する。 するとフライパンで焼かれている肉の匂いがぼくを追いかけてきた。 おまけに背中から差す西日が、ぼくの身長より長い影を足元から伸ばしていたんだ。
曲にしても小説や詩にしても、歌詞や文章で「心に刺さる」言葉に出会う瞬間がある。 そのとき、ぼくは打ち震える。 恐怖ではなく、感動で震えてしまうんだ。 心に刺さる……つまり言葉は「刃物」と言ってもよかろう。 五月某日。言葉の刃物が恐怖を与える方向で使われてしまった残念なニュースを知った。 包丁は野菜やフルーツを切ることもできるし、人体を切ってしまうこともできる。 それと同じように言葉の威力を知ってほしい人たちがたくさんいます。
五月某日。眼科で定期検診を受けた。 多くの接客業のお店がするように、やはり病院の受付には透明のシートが下げられていた。 受付の女性から「本日の体温は?」と訊かれたので「測ってないです」と答える。 「それでは測りますね」と言った彼女は、ぼくのおでこに体温計をやおらかざした。 瞬時に「35.9度」という測定値が発表され、それと同時に「おれはなんて冷たい男なのだろう」と再認識してしまった。 そう思った瞬間、左肩にピンク色の小鳥が止まった。 「ねぇジュンキッチー、あんたあの体温計、知ってる?」 ピンクの小鳥はその体色に見合う声でそう言った。 「ううん、ピンキー」 どうしてぼくの名前を知っているのだろうと思いながらも、知らぬ間に初対面の小鳥ちゃんに対しピンキーと名付けてしまっている自我に驚愕しながらもこう答えた。 「だって、おれはいまだに水銀式の棒体温計を使ってるんだよ、ハニー」 そう言うやいなや、ピンキーはわたしを大きな森の中に導いてゆこうとした。 「すみません、あの、また来週、検査に来ますので」 受付の女性にそう言いながらピンキーのあとを追い森の中に向けて羽ばたいた。 森の中にカレンダーはあるのだろうか、と思いながら。
B.G.M.「JACKIE ROSS / FULL BLOOM」 どのいきさつで我がWANT LISTに入っていたのか、おぼえがないんだけど先日、見つけて購入。 最初はイマイチだった。でもこのコのことを検索したら、なんとぼくと誕生日が一緒だった! そうしたら、このレコードが最高になってきた! いかに人間が惑わされやすいかを身をもって確認した一枚です。
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No.1545 - 2020/05/26(Tue) 01:43:31
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