わたしは浜松生まれであり、浜松育ちである。 一年間を通じて暑過ぎず、寒過ぎず、気候的には安定した場所だと思う。 そんなわたしが赤道直下に移住したらどんなだろう。 そんなわたしが白夜を堪能できる場所に引越しをしたらどんなだろう。 おそらくたぶん確実に、最初はその暑さに絶望し、その寒さにうなだれるに相違ない。 だがしかし、時間が経過するにつれて、わたしはその環境に順応すると思う。 わたしだけでなく、多くのハママツ人……いやニッポン人が順応できるのではないか。 言い換えるならば「環境に育てられる」ってことか。
バンドってのは、スタジオでの練習も重要だけど、それ以上にライブすることが大切だと思う。 自分たちの演奏力向上だけでなく、いろんなバンドと共演することは刺激になるし、学ぶことも多い……あ、これには打上げでの会話も含まれるに。 そして、ライブハウスそのものにもバンドは育てられるんだ。 オーナーや店主の音楽に対する姿勢はもとより、建屋(たてや)、いわゆる店の造りそのものにもバンドの演奏力やステージングは影響される。 あいつらは建造物だでニッポン語をしゃべりゃぁしんけど、無言で教えてくれるんだ。
ザ・スリックスが西暦2000年に活動を始めてから、いわゆるホーム・グラウンドと呼べるお店が浜松に3つあります。 2004年までがポルカ・ドット・スリム。 2011年までがルクレチア。 そして2021年までが、先日閉店したキルヒヘア。
どの店もアンプの音をマイクで増幅させない生音勝負。 これはバンドが持つ音量ではなく、バランス感覚が試されます。 どの店もステージには段差がなく、客席とおんなじ目線で演奏する。 これはバンドが持つ本当の背丈、ステージ上で粋か否かが試されます。 俺たちザ・スリックスはそんな場所で育てられました。
3月19日から21日にかけての3日間、キルヒヘアではファイナル・イベントが開催された。 それぞれの食堂や喫茶店やレストランに、それぞれの味わいがあるように、それぞれのライブハウスにも味わいがある。 それらに集まるお客さんや出演者にもそれは言えることであるから、この3日間のキルヒヘアはまるで、トランプとカルタと百人一首とオセロと人生ゲームと野球ゲームとインベーダー・ゲーム等々がナイマゼになった空間だったのさ。 それは、つまり、最後の最後までキルヒヘアはキルヒヘアのままだったってことです。
ブラボー! キルヒヘア! ヴィヴァ! ぼくたちお客さんや出演者のみなさん! 今までお世話になりました。ありがとうございました。
B.G.M.「高田拓実/父のハガキ」 タクちゃんはTHE COKESというバンドでGt.&Vo.を担当していた男。 コークスとスリックスはルクレチアで幾度も共演している仲。 コークス解散後、彼が2019年に発表したこの初ソロ・アルバムを先日、購入した。 こんなアルバムを発表した彼の今の姿勢を俺は完全に支持する。
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No.1593 - 2021/03/25(Thu) 00:26:22
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