6月某日、ゆきつけの病院に行った。 「ゆきつけ」という言葉を調べると「何度も行って、なじみがあること」と記されている。 だとしたら「ゆきつけの病院」ってのは妙な言いまわしかもしんない。 だがしかし、持病がある我が身にとっては、そんな気持ち(ゆきつけの気持ち)になってしまう。 それはロックンロール・ウイルスにヤラレタわたしたちが、ゆきつけのライブハウスへ行くことにちょっと似ている。
病院には看護師さんが数人いるのだが、2年ぐらい前、そのうちのひとりの方から 「わたしの子供、中学生なんだけど実はバンドを演っているの」 と打ち明けられた。 むろん、わたしがバンドマンということを知ったうえでの会話だ。 今回の診察の際、その方がこう言う。 「中村さん、わたしの息子、もともとベースだったんだけど最近、ギターを始めたんですよ」 「おー、いいねぇ」 「耳コピっていうの? ユーチューブ見て、一生懸命練習してるのよ」
看護師さんのお口から『耳コピ』という3文字が出てきたことは、釣り上げた魚をその場でサバいて食する刺身ぐらい新鮮だったし、なによりも高校生となった彼が現在も音楽を続けている、そして自分の耳で音を探している、それらのことすべてに、真夏の太陽と満天の星空と満月が一緒に輝いているような明るい未来を感じたのさ。 「音楽っていいだいね、いくつになっても続けられるで」 「そうそう」 「わたし、息子にも中村さんのことを話すんですよ」 「へぇーありがと。ちなみに今夜、俺は豊橋でライブ演るんだよーん」 「きゃぁ〜」
6月12日、ザ・スリックスは豊橋市のライブハウスAVANTIにてライブを演った。 来てくれたみなさん、ありがとうございました。 この日、ライブを演ることができたのは、個人的に、そしてバンドとして、誠にグッド・タイミングであったと思う。 誠といっても鮎川誠さんのことではありません。 「本当に」という意味でのマコトです。 グッドであれ、バッドであれ、タイミングっちゅーのはあくまで「結果として」ってことなんで、今回はまさしくラッキーだったと言えよう。 まるで、盆と正月とクリスマスが一緒に来た、もしくは真夏の太陽と満天の星空と満月が一緒に輝いていた、もしくはホンダCB400FOURとスズキGS400とカワサキKH400が一緒に走っていた、そんな感じ。
音楽っていいだいね、いくつになっても続けられるで。 あのかわいい看護師さんが遠州弁で言ったとおりさ。 そう、古今東西、ゆきつけの場所で、いつでもわたしはロックンロール。 この日のライブは、活動上のこだわりである「いつもおんなじ、いつも違うスリックス」にやっぱりなったと思う。 新曲を演ったり。10年以上披露していない古いレパートリーを復活させたり。今まで使ったことのない楽器を使用したり。 ゆきつけの場所で新しいことを演る、うん、カッコいいら。
B.G.M.「ヤンバル/クウネル ウタウ」 AVANTIを「ゆきつけの場所」ではなく「ホーム」として活動する沖縄風三人衆ヤンバル、2008年発表のファースト・アルバム。 現在、入手困難なこのアルバムをようやく聴くことができた。 メンバー全員がそれぞれ楽曲を作っているんだけど、どの曲も歌詞と曲調がヤンバルなのが誠にすばらしい。
写真はAVANTIのスタッフであり、ヤンバルのメンバーでもあるぴろみちゃん撮影。 ぴろみちゃん、今回のオファー、ありがとうございました。
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No.1601 - 2021/06/14(Mon) 23:52:24
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