よく晴れた日曜日の午後、安物の紙パック1.8リットル入り甲類焼酎を買うため、近所のスーパーマーケットを訪れた。 駐車場にクルマを駐めると前方右手に黄色いスクーターがいるのに気づく。 そいつはメーカー車種を当方が知る由もない最近のデザインだった。 初対面なのにその流線型のボディから発せられるナニかから「こいつはタダモノではない」と悟った次第。
【ひとを見た目で判断するな】ってのは、権力者などからの偏見に対する平民の反抗の声のひとつ。 だがしかし、案外とひとがひとを見た目で判断したことが当たっている場合が多い気もします。 音楽を演ってるひとってのは「音楽を演ってる感」がどうにもこうにも漂って(ただよって)しまうように。 「あなた、もしかしてバンド演ってません?」「え? 演ってますけど……」「やっぱりねー」みたいな。
クルマから降りたわたしは黄色いスクーターに向かって歩を進めた。 そこに着くやいなやエンブレムを見ると、そいつは最新型のベスパだった。 「やっぱ、そうじゃんか」つってAC/DCのアンガス・ヤングさん(以後、敬称略)のようにわたしは激しく首肯。だだだだだだだっ アンガぁスっ! 親から子へ。子から孫へ。ひとと同じように、ロックンロールとおんなじように、バイクも先代、先々代の血を引き継いでゆくってことか。
いつだったか、ストーンズのキース・リチャーズさん(以後、敬称略)が自分のバンドのことを問われ、こう言っていた。 「おれたちは上の世代から引き継いだ音楽を下の世代へつなげる橋渡しみたいな役目さ」 ぼくの心のなかにあるロックンロール手帳の何ページ目かに太文字で記された瞬間さ。 一般的には荒くれ者のイメージが強いキースだが、その言葉を発している時の彼の表情、それはまるで【真摯(しんし)】という言葉をそのまま具現化したようなものだった。もうサイコー。
5月某日、ストーンズの新作が発表された。 1977年に行われた小さなクラブでのライブ盤である。 「どうして45年前のライブなの? 彼ら生まれてもいないじゃん」そんな声が聞こえてくる。 そりゃそうさ、だって今は世界中にいろんな《ストーンズ》が存在する時代だから。 どうやら世界中のザ・ローリング・ストーンズ・ファンが今回のアルバムに心をときめかせているらしい、みんないい歳こいて。ね。
アルバムを聴いた。 「やっぱ、そうじゃんか!!!」つって、またしてもわたしはAC/DCのアンガスのように激しく首肯。ちなみに今回はびっくらマーク『!』3個付き。 3個付いてるのには理由があります。 ・ヒット曲オンパレードではなく、ロン・ウッドさん(以後、敬称略)が3代目ギター弾きとしてバンドに加入してアルバムを発表した翌年だからこそのセットリスト。 ・キースが言っていた「上の世代」の音楽、そのカバー曲を随所で何曲も披露している。 ・驚いたことに1977年から数年後に発売されるアルバムの中の楽曲をこの時点ですでに演っている。うん、やっぱりバンドは新曲が命だと思う。
『上の世代から引き継いだ音楽を下の世代へつなげる橋渡し』 これを口からのカッコつけたデマカセではなく、このライブ盤でストーンズは証明している。 あ、そうか、これがホントの「ロン(論)より証拠」ってやつか。 セットリストも曲順がたいへんすばらしー。
B.G.M.「ザ・ローリング・ストーンズ/ライヴ・アット・エル・モカンボ」 サンハウス・鬼平さん監修の麦焼酎「鬼っち」をサンハウスのグラスで飲みながら、ストーンズを聴いている。
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No.1629 - 2022/05/27(Fri) 00:09:42
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