通りを挟んで我が家の北側に位置する住宅には犬がいて。屋内で飼うような小型犬で。んでこれがまぁたよく吠えるわけだ。ハウリング・ウルフだ。いやオオカミではないからハウリング・ドックだな。 子供が喋りながら通ればワンワンワン。宅急便のクルマが止まればワンワンワン。サイレンの音でワンワンワン。「赤ちゃんは泣くのが仕事」とか言うように犬も鳴くのが仕事かもしれぬ。しかし行き過ぎたらそれは不快感。“仕事”って言ってりゃ「はあ大変だねえ」みたいに同情を得る事ができて安心か。 やがてわたしはその犬を『バカ犬』と呼ぶようになった。ワンワンワンってうるさくっても「あいつはバカだから」つってわたしは自分自身を納得させる日々。 昨年11月後半ぐらいか。「最近、バカ犬が吠える声が聞こえないなあ」って気付いた。「うふふふ。とうとうあのバカ犬め、現世とおさらばしたか。うふふふふ」なんて思ったり。12月になり「あのバカ犬、絶対に現世と・・・」なんつって言う度に「ジュンちゃん、なんだかんだ言ってもバカ犬がいないのが気になってるじゃん」なんて女房から指摘されたり。好きな女のコほどちょっかいを出す小学生か。 今週の火曜日。出勤前。ワンワンワン。「あれ?今、吠えてなかった?」「吠えてたね」ふたりして玄関に飛び出る。北側の住宅の窓際に確かにバカ犬の存在を確認したふたり。昔ほど吠えてはいないけど。たしかにバカ犬はいたのだ。 なああんだぁ。生きてたのか。バカ犬ちゃんは。
B.G.M.「ハービー・ハンコック/処女航海」
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No.872 - 2011/01/27(Thu) 23:33:30
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