THE SLICKS BBS

ライブ告知です。

「やらまいかミュージックフェスティバルinはままつ」にThe Whoのトリビュート・バンド、The Who族にてギターで出演。
10月12日(土) 浜松forceにて18時前後からの予定。
入場無料。
(THE SLICKSの出演はございません)











某日日記 / 淳吉郎
バイクや電車や飛行機などで幾度か旅をしたことがある。
二十代の頃の職場でお世話になった上司のおばさんは旅好きで、「旅行は心の洗濯」と言っていた。
うん、そのニュアンスはなんとなく伝わってきたが、当時のぼくにとって旅っつーのは「知らないところへ行ってみたいだけ」な感じだった。
たとえば「2001年宇宙の旅」ならぬ、わたしの「25歳北海道ツーリング」はとってもダウン・トゥー・アースな旅だったのさ。

11月某日。浜松市内のお店《黒板とキッチン》に初めて訪うた(おとのうた)。
知らないお店に初めて行くっつーのは旅の「あの感じ」にちょっと似ている、たとえ市内だったとしても。
黒板とキッチンだなんて、まるで小学校の家庭科授業における調理実習みたいじゃないか。
そして、その所在地は浜松を代表する立体駐車場のひとつである万年橋(まんねんばし)駐車場の1階スペース。
こちらも負けず劣らず珍妙な名前。
音楽仲間であるEmon Denikerくんとニシムラユキちゃんのライブ観戦なのさ。

Emonくんの今回のライブは音響機材を使用したいつもの「ひとりバンド演奏」ではなく、アコギでの弾き語りだった。
でも、彼はいい楽曲を作るから、その日もいつもとおんなじ音が鳴っていた。すばらしい。
ユキちゃんはエフェクターによる「ループ」という技法を駆使したギター演奏だった。
エフェクターを使用しないわたしにとって、ループで立体的に音を構築する彼女のライブはまさに「ウルトラC」な世界なのさ。すばらしい。
黒板とキッチンで調理実習のはずだったのに、おふたりの美味しい料理をご馳走になりました。ありがとう。

11月某日。静岡市内のお店《ピンパーズ・パラダイス》に訪うた。
その日は静岡の音楽仲間であるカトちゃん、サワミちゃんとのロック・ミーティング(という名を借りた呑み会)だった。
ピンパラへは通算2度目。
2度目つったって、初回と比較すりゃあ、それはスキンヘッドに毛が生えたようなもの。
ほら、南からの風で、産毛(うぶげ)がユラユラと揺れているぜ。

カトちゃんは5年前のシナロケ浜松ライブで共演したバンド、D.F.のボーカルであり、現在はCCライダーで唄っている男。
サワミちゃんはシナロケが山口冨士夫さんを加えてツアーをした80年代中盤の『ギャザード・ツアー』、その静岡ライブを観たことを自慢するぼくに対して「わたしもそれ行った」って即答した女性。
つまり、おふたりは静岡在住の筋金入りなロック・フリークなのです。

筋金入りっつーと、どこかしら金属人形のようなガキンガキンした動きをするひと、もしくはナニかに対してナニかしらの意見を述べたひとに対し「だーかーら、おめーはわかってねーんだよ」みたいな、まーったくもってハートの柔軟さが欠如したようなひと、そんな印象を与えます。
だがしかし、もちろんカトちゃサワミちゃはそんな筋金入りなんかではなく、ハッピーで柔らかな時間を提供してくれる方々なんで、おかげで俺はずいぶん酔っぱらっちまったぜ(笑)
カトちゃサワミちゃ、ありがとう。

あ、それと追記。
通算2度目のピンパラなのに、ちゃっかりとわたしは我が家からレコードを持参して、30分ほどDJをやってしまいました、常連の顔をして。
選曲はニッポン語のロックンロール限定で。
振り返ると、他のDJよりわたしが流すレコードの方がちょっと音量がデカかったかもしんない。
DJメインのパーチ―ならまだしも、みんなが普通に飲んでるんだったら音量で会話の邪魔をしちゃいけないと思ってます。
でもまあいいら、だって楽しい週末の場面ではどんなことでも許されることが多いのさ。

B.G.M.「ベートーベン/ピアノ・ソナタ第8番ハ短調《悲愴》」
ベートーベンの楽曲って、どんな曲でも1曲の中で繊細さとダイナミックさが共存しがつら、すっごくポップなんだ。もうサイコー。

☆★☆★☆★☆★☆★
ザ・スリックス、次のライブの詳細が決まりました。
みなさん、よろしくです。

12/18(土) 浜松G-SIDE
N.J.P 〜6th gig〜 NOZU the Last Show
\2,000(+1D) students\500 off
open 17:00/start 17:30
-act-
THE JASON BLUE-RAY
NOZU
The弾丸ノイズ
B-29
THE SLICKS

No.1614 - 2021/11/20(Sat) 09:02:14
ツバメにまつわる話 / 淳吉郎
歩きつかれたひと
と掛けて
ツバメの子育てを見つけた
と解く
その心は
ちょっとそこに座ろう(スワロー)

7月末、上記のなぞかけをこっそり作成したのには理由がある。
6月末ごろ、勤務先の事務所入り口上部にツバメが巣を作り、子供を育てはじめたからだ。
ちっちゃな巣の中でじっと親の帰りを待つ4匹のヒナたち。
そんな姿を毎日、見ているから、そして日々、親から口移しでご飯をもらっているヒナたちが育っているのがわかるから。
気づくと、いつしかわたしは私設応援団を結成していた。
団員および団長をわたしが兼務、なぜなら構成員はわたしひとりだけだから。

7月中旬になると、わたしが朝、出社した時点でヒナたちは巣にはいないようになった。
お母さんと一緒に飛行訓練をしているんだな、団員兼団長のわたしはそう推測。
「フレー! フレー! ヒ・ナ・ちゃんっ!」
心のなかでわたしは掛け声および笛および太鼓、もちろん手拍子も兼任、なぜなら構成員はわたしひとりだけだから。
そんでもって、わたしが退社する時にはひっそりと4匹が巣のところに並んでいるのさ。
だがしかし、今やまるまると成長したあの子たち4匹全員が昔のように巣の中にきっちり納まるわけがなく、よく見ると3匹が巣の中、1匹が巣のふちにちょこんと座っている次第。
ツバメ兄弟の中にも社会があった!

7月下旬のある晩、わたしが退社する時、巣には誰もいなかった。
「おそらく外泊だろう。ま、いいじゃねーか、昔からかわいい子には旅をさせろって言うし」
団員兼団長はひとりごちりながら帰路についた。
そして次の日も、その次の日も巣には誰もいなかった。
「ああ、そうか……ついに巣立ったんだね。独立したんだね。だけどさ、サヨナラの言葉は似合わないぜ。だから俺はこう言う、グッド・ラックっ!」

今回、上記の投稿文を作成したのには理由がある。
10月某日、プロ野球セ・リーグでヤクルト・スワローズが優勝したニュースを受けた。
わたしは中日ドラゴンズのファンですが、ヤクルトが優勝したことは実際快適うれしい。
いわゆる「B級ナントカ」って呼ばれるものが、A級を越えるカッコよさや強さを見せた時に覚える快感にそれはちょっと似ている。
でも、次はクライマックス・シリーズとかいうヤツがあるんだよね。
でも、なんか好きじゃないんだよなあ、1位のチームが日本シリーズで戦えばいいら。
あれとおんなじ、比例代表制で復活当選ってやつと。
まあカッコ悪いこと、悪いこと。

そんなツバメにまつわる話でした。

B.G.M.「シーナ&ロケッツ/グッドラック」
1980年発表、シーナ&ロケッツのアルバム「チャンネル・グー」のB面3曲目に収録。
シーナではなく鮎川さんが唄ってるんだけど、曲調と歌詞の内容と鮎川さんの声質がピッタリとトシちゃん、あ、違った、マッチしてると思います。

☆★☆★☆★☆★
ザ・スリックスは12月18日(土)に浜松某所にてライブ予定です。
詳細は後日発表にて

No.1613 - 2021/11/05(Fri) 00:50:06
某日日記 / 淳吉郎
音楽関連の店であれ、友人宅であれ、職場であれ、目的地への通い路(かよいじ)において、とある建造物が取り壊され、更地になっていたとする。
「あれ? ここどんな建て物だったっけ?」
誰でも経験があると思います。
わたしたちはなにかを見ているようで実はなんにも見ちゃいない「ただなんとなく生きている」だけの生物なのかもしんない。
身近なひとのヘアースタイルが変わったことに気づかないとか(笑)

10月某日、画家である友人の展覧会に行った。
場所は浜松市中区鴨江に存する鴨江ヴンダーカンマー。
友人から展覧会の報を受けたとき「ん、鴨江け? そのギャラリーは初耳だよな。知らんかったわー」なんつって、わたしは即座にネット検索。
地図を見て驚愕した。
だって、ギャラリーはわたしが浜松繁華街へクルマで出かける際の通い路に存在していたからだ。
そうか、わたしはなにかを見ているようで実はなんにも見ちゃいない「ただなんとなく生きている」だけの生物なのかもしんない。
国営放送の番組キャラクターである女のコから「ボーっと生きてんじゃねーよ!」つって叱責されること必至(ひっし)です。くぅ。

ヴンダーカンマー、実に怪しげな語感。
所有するレコードやCD音源および映画や小説、購読する新聞紙、自治会の回覧板では見かけたことがない単語。
わたしは即座にネット検索。
こう記されていた「ドイツ語で《驚異の部屋》」「珍奇なものを展示するスペース」等々。
なあんだ、やっぱりそうじゃん。
初めてローリングストーンズって単語を知った時、その語感に「硬そうだけど柔らかい石が流麗に転がる光景」を思い浮かべた、あの時とおんなじ瞬間です。

いつもはクルマで走行する通い路、そこを今回はトボトボと徒歩で向かうとそのギャラリーが出現した。
玄関の時点ですでに「驚異の部屋もしくは珍奇なものを展示するスペース」感が大量放出されている。
「やっぱ、これだよな」つってわたしはアンガス・ヤング氏のごとく激しくヘッド・バンギング……もとい首肯した次第。
♪ダダダ・ダダダダ・アンガスっ♪

美術館などで絵を見たとき、わたしがよく使う言葉は「絵の具の匂い」である。
彼の絵画はこれまでネット上で幾度も拝見している。
だがしかし、今回、眼前にある彼の生作品から感じたのは「絵の具の匂い」ではなく「形を持たない、どこかドロドロとした情熱みたいなもの」だった。
そして、それは珍奇なものが所狭しと陳列されている驚異の部屋に実にフィットしていたんだ。

事前にギャラリー訪問の日時を彼に伝えておくことはしなかった。
タイミングが合えば会えるだろうし、なによりも作品を見ている横で作者から作品ごとの解説を受けることをぼくは好まないからだ。
絵を見終えてオーナーの方とも会話をしてたら、2時間ほど経過。
「んじゃぁ帰ります」つって階下に降りたら、ニルヴァーナのTシャツを着た彼が現れた。
ほらね、そーゆーことなのです。

9月は鴨江アートセンター訪問、10月は鴨江ヴンダーカンマー。
今、中村家では鴨江が熱い。か。

B.G.M.「内田光子/モーツァルト・ピアノソナタ第11番『トルコ行進曲つき』」
先日、ショパン国際ピアノコンクールで日本人のピアノ弾きの方が2位になったニュースを知った。
これまでの最高位は1970年にこの内田さんが受賞した2位とのことで、実に51年ぶりの快挙なんですって。
この一年間、このCDをよく聴いているから、勝手に縁という都合のいい言葉を感じてる(笑)

☆★☆★☆★☆★
ザ・スリックスは12月18日(土)に浜松某所にてライブ予定です。
詳細は後日発表にて。

No.1612 - 2021/10/24(Sun) 11:54:12
楽しきライブハウス・ステーションにまつわる話 / 淳吉郎
一日の仕事を終えて、駐車場でオート・マティック車のエンジンをまわし、ギアをPからDにシフトする。
カー・ステレオからはゴキゲンなロックンロール。
学生時代はラジオ・ステーションからそれをキャッチしていた。
だがしかし、今はラジオではなく自家用車でぼくセレクトCDをオレDJが流すんだから、サイコーなのは当たり前。か。
そして帰宅時の毎夜、気になるのは月の形である。

新月の頃はまったく暗い夜空。
満月の頃はまーったく明るい夜空。
ステージ上のスターを照らすピン・スポットのように、月光はわたしたちを照らす。
「ああそうか、今日はフルムーン・パーティーだったっけ。ちっ、またもや無駄な残業をしちまったぜ」
満月を眺めながら、いや満月でなくたって、ぼくはいつでもそう舌打ちをする。
さあ、月夜のドライブを始めるか。
ボウイが「どんなひとだって一日だけ英雄になれるんだ」って唄う楽曲がカー・ステレオから流れてきた。

10月某日、静岡市のライブ・ハウスへライブ観戦。
前述のとおり月夜のドライブが大好きなのだが、モロモロの事情により、その日は新幹線を利用。
どこでもドアがあったら、瞬間移動できたら、ネコバスに乗れたら、いや、やっぱり窓からの景色があったほうがいい。
ひとの気配を感じる生活空間を眺めながらいろんなことを想像するんだ。
ゴッホの風景画には、ひとがなにかしらの動作をしている姿が描写されていることが多い。

C.C.ライダーの演奏が始まった。
ライブ空間にはステージ側と客席側のふたつがあります。
「おまえらおれたちとひとつになろうぜ」つって、そのふたつを強引に統一しようとする演奏者と、なんにも言わない……別の言い方をするならば指図や命令をしない演奏者がいます。
C.C.ライダーの4人は後者だった。
彼らの楽曲や演奏スタイルだけではなく、そんなところにもぼくは「パンク」を感じるのです。
もうサイコー!

キャデラックの演奏が始まった。
実は初めて彼らのライブを観るんです。
や、違うか、確かぼくが20歳になるちょっと前の頃、ブラウン管の向こう側にいる彼らを見たことがある。
TBS系歌番組・ザ・ベストテンでの「今週のスポットライト」という注目アーティストを取り上げるコーナーにて。
この日、そこにあったのはラジオのDJではなく、テレビの司会者でもなく、楽しきライブハウス・ステーション。
そいつがぼくにサイコーのロックンロール・ミュージックを届けてくれたんだ。
もうサイコー!

マモル&ザ・デイヴィスの演奏が始まった。
「ロックンロールの魅力を3つあげなさい」そんな質問を受けたとしたら、ぼくはどう答えるのだろう。
・どんなにスピード・アップしたっておまわりさんからキップを切られない疾走感。
・たった3分間の楽曲なのに2時間越えの映画や300ページ越えの文庫本を楽しんだ後とおんなじ高揚感。
・映画や文庫本では監督、俳優、スタッフ、作家側の制作過程を共有できないのに対し、ロックンロールはライブという行為により演奏者と「共有できたような」気持ちになれる感。
そして、場合によってそれは音源より進化している場合もある感。
・気になるうなぎ屋やぎょうざ屋で友人に出会う確率よりも、気になるライブで友人に出会う確率の方が断然多い感。
・あるひとが「ロックンロール!」って叫んでも、そのひとにまーったくロックンロールを感じない場面があるのに対し、ロックンロールのロの字も発していないのにビンビンにロックンロールを感じることができる感。
あららら、設問に対しロックンロールの魅力を5つもあげてしまったぜ。
この日のマモデビは、やーっぱり、まぎれもないロックンロールそのものだったんだ。
もうサイコー!

B.G.M.「ベートーベン/ピアノ・ソナタ第14番《月光》」
クラシック音楽におけるマイブームがモーツァルトからベートーベンに移った。
なんか、すげーです、ベートーベンって。

No.1611 - 2021/10/17(Sun) 23:45:17
某日日記 / 淳吉郎
数年前、白内障の手術をした。
主治医は40代の女医。
数日間にわたる眼帯生活後の診察で彼女がわたしの眼帯を外した。
まだクッキリとは見えない世界なのだが、感動のあまりわたしはこう言った。
「先生、やっぱりお綺麗ですね」
「ありがとう。でもまだ見えてないでしょ(笑)」
先生は期待どおりの対応をしてくれた。

8月某日、とある病気の罹患が判明した。
睡眠時無呼吸症候群という病気。
幸運なことに病状は軽度だった。
治療は睡眠時にマウスピースを装着するというもの。
強制的に下あごを前に出させる形状のマウスピースを装着して、睡眠時の呼吸をスムーズにさせるのが目的らしく。

9月某日、完成したマウスピースを診察室にて装着したわたしは主治医にこう言った。
「先生、なんかアントニオ猪木になったみたいですね。なんだコノヤロー! とか言ったりして」
「はい、喉を広くして呼吸を妨げ(さまたげ)ないようにするんです」
あらららー「そうですよナカムラさん、いくぞー! 123ダァーっ。元気ですかー! なんつってねー」残念ながら彼はそう言わなかったんだ。

9月某日、浜松鴨江アートセンターにて友人のノイズ・グループ:庭のライブ観戦。
1928年建立のモダンな建物だけど、入館したのは実は今回が初めて。
その時のわたしの気持ちと甲子園初出場を決めた高校野球児の気持ち、それはおそらく、ちょっとだけ似ていたであろう。

庭のおもしろさは各メンバーが自由に音を出している中で、知らぬうちに「ノイズ」が「音」に変化し、それがグルグルとらせん階段を上昇および下降する瞬間が生まれることだと思っている。
この日の庭はライブハウスではない演奏場所ということも含め、いつもと違う状況下でのライブだった。
だがしかし、爆音ではないこの日も、庭はやっぱり上述したとおりのライブを演った。
すばらしい。

狭い空間で音が響いている瞬間を久しぶりに体感。
「イェイ! やっぱこれだよな! いくぞー! 123ダァーっ」
つって、特製マウスピースを装着していない時間帯のわたしは、心のなかで小さくちいさく両手を上げた。
庭のみなさん、おつかれさまでした。ありがとう。

B.G.M.「ザ・クロマニヨンズ/光の魔人」
うん、きたねー。
サイコーなシングル曲。
B面の「ここにある」もグー。

☆★☆★☆★☆★
ザ・スリックスは12月18日(土)に浜松某所にてライブ予定です。
詳細は後日発表にて。

No.1610 - 2021/10/03(Sun) 20:29:57
ねぇ、お父さん / 淳吉郎
「ねぇ、お父さん」
「なんだい」
「ぼくのクラスにね、おもしろいやつがいるんだよ」
「へぇ〜。どんなやつ」
「あのねぇ、やるべきことをしっかりやるんだけど、まーったく普通なんだよね」
「普通ってどーゆーこと」
「自慢げにしないというか、やってやったぜ感、みたいなのがないんだよ。だいたいの場合、多くのひとはドヤ顔みたいな顔するじゃん」
「ああ、俗に言う鬼の首を取ったような顔ってやつだよな」
「そうそう、それそれ。でもさ、やつは控え目なんだよ、いっつも。それがまた、くやしいぐらいわざとらしくないんだよねー」
「ははは、まあ性格だら。謙虚っつーかさ、きっと目立つのが得意じゃないんだよ」
「ふぅーん、信じられん。誰だって人気者になりたいと思うでしょ」
「たとえばさ、色鉛筆や絵の具の箱を開いてみな。派手な色もあれば地味な色もあるでしょ」
「あ、そうか。目立つ色ばっかりだったら絵画は成り立たなくなるってことか」
「そう、そのとおり。忘れちゃいけないのは、地味な色合いの鉛筆や絵の具の気持ちをぼくらが知る由もないけど、でも結果としてそこには地味な彼らの確固たる主張が生まれている、ってことさ」
「うわぁーなんかそれってカッコ良すぎじゃね」
「だよな、カッコいいよな」
「ねぇ、お父さん」
「なんだい」
「お父さんの知り合いにそんなカッコいい大人っているの」
「いるよ、もちろん」
「だーれ、教えて」
「チャーリー・ワッツっていうひとだよ」
「うわぁー、外人なんだ、すげぇー。いつか会えるかな、ぼくも」
「もちろんさ! だって俺たちにとってチャーリーは永遠の存在なんだから」

No.1608 - 2021/08/27(Fri) 01:02:15
某日日記 / 淳吉郎
ここ一年間における我が人生において、以前とちがう様相を呈している事柄がいくつかある。
たとえば、そのひとつは読書をする時間であります。
それまでは「会社本(カイシャボン)」「家本(イエボン)」「病院本(ビョーインボン)」という区分けがあったんだ。
まるでそれは、レコード屋における「JAZZ」「BLUES」「SOUL」「ROCK」なんちゅージャンル分けにちょっと似ている。
だがしかし、気づけばわたしは読書の時間を喪失していた。

職場の昼休みで読書をたのしみ、帰宅して数時間後の就寝前に昼間とは違う本をたしなみ、定期的に通う、多くの場合それは土曜日なのだが、病院の待合室でページをくくる。
そんな瞬間、おそらくわたしは「文字の大海を泳ぐハママツ産のちょっとだけギターが弾けるさかなくん」なのだろう、水泳は学生時代まーったく嫌いでしたが。
だがしかし、ナニモノかがわたしのこの手から平日における「その時間」を奪ってしまったのは上述のとおり、そして病院本はダイジョーブ、だって週末なんだから。

8月某日、主治医の病院にて、とある小説を読了(ドクリョ―)。
この「ドクリョ―」っていう語感、そこにニッポン語での表現の重みを感じます、すばらしい。
その日、わたしは半年近くにわたって読み続けていた大岡昇平さんの『野火』を読み終えた。
第二次世界大戦下におけるまぎれもない戦争小説なのだが、読み続けるうち、そこに哲学的なものを感じ始めたわたしはこの小説に夢中になった。

8月某日、『野火』を読み終えたわたしはともに夏休み中な女房と映画観賞にいそしんだ。
意見交換の後、セレクトしたのは『戦場のピアニスト』という映画。
ニッポンで呼ぶところの第二次世界大戦下におけるユダヤ人ピアノ弾きにまつわるストーリー。
感じ入るところがたくさんある素晴らしい映画だった。

そこそこの年月、自作自演のバンド活動をしています。
そりゃぁ、いろんなタイミングがあってね。
ギターを弾きながら曲のコード進行をまちがえたり、歌を唄いながら歌詞をまちがえたりとか。
そのたびに「ステージには魔物がいるから」っていいわけをするようなズルい男さ、ぼくは。
8月某日、「ヒロシマ」の日に某国の某首相が式典において発する言葉を読み飛ばしたそうな。
歌詞カードならぬ原稿そのものがあるのに、それがノリでくっ付いていて読み飛ばしたそうな。

はぁ〜、まーったくステージには魔物がいますからね、そうわたしは首肯した次第。

No.1607 - 2021/08/15(Sun) 23:59:34
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