物理の授業で物体が運動している時には必ず運動方程式を静止又は等速直線運動の時には釣合の式を立てろ、と習いました。 ところが、最近は仕事とエネルギーの分野に入ったのですが全く運動方程式を立てなくなりました。力学的エネルギー保存則しか使いません。僕はまだここを習ったばかりで問題にもあまり多くは触れていないのですが質問があります。
どの様な場合に運動方程式を用いどの様な場合に力学的エネルギー保存則を使うのでしょうか?
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No.7572 - 2009/08/22(Sat) 08:51:09
| ☆ Re: 物理についてです / angel | | | エネルギー保存則は、運動方程式を変形したものです。 そのため、どちらも運動方程式を使っているという意味では同じです。
ただ、運動方程式は加速度に着目した式ですから、速度および位置の時間的な変化を考えるのに向いた形であるのに対し、エネルギー保存則は、時間によらず総量が変化しない「エネルギー」に着目していますから、その時々の状態を抜き出して ( 時刻の経過を意識せずに ) 考えることができる、という利点があります。
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No.7575 - 2009/08/22(Sat) 10:23:50 |
| ☆ Re: 物理についてです / angel | | | > エネルギー保存則は、運動方程式を変形したものです。
について補足です。 高校の物理では、微分やベクトルを使わないのが建前ですが、そもそも運動方程式は、微分を含んだ式、つまり微分方程式です。それもベクトルの微分方程式です。 実際、「速度」は「位置」を「時刻」で微分したものですし、「加速度」は「速度」を「時刻」で微分したもの、つまり「位置」の2階微分ですから。
簡単に、1方向の運動で、運動方程式からエネルギー保存則を導いてみましょうか。
時刻 t が t0→t1 に変化する時、位置 x が x0→x1 に?凅だけ移動し、運動エネルギー E が?僞増加する、という状況を考えます。v は速度、a は加速度、F は力、m は質量(固定)を表すものとし、微分は全て t で行うものとします。
まず、x,v,a の関係として、 v = x'、a = v' ( a = x'' ) 運動方程式として ma = F 運動エネルギーは E = 1/2・mv^2 この式の両辺を微分すると、 E' = mvv' = ma・v これと運動方程式を比較すると、 E' = Fv 最後に、時刻 t0 から t1 への定積分をとると、 ∫[t0,t1] E'dt = ∫[t0,t1] Fvdt (左辺)=?僞 (右辺)=∫[t0,t1]Fx'dt = ∫[x0,x1] Fdx ( 置換積分 )
結局、運動エネルギーの変化?僞は、位置x0からx1へ移動するときに受け取った仕事 ∫[x0,x1] Fdx に等しい、となります。F が一定であれば、これは F?凅 と計算できます。
この仕事が、摩擦等のロス ( 熱エネルギー等への変換 ) なしに「位置エネルギー」として蓄えられるとすれば、総量としてのエネルギーは変わらない、というエネルギー保存則になります。
なお、大学であればベクトルの微分・積分 ( ベクトル解析 ) で習うでしょう。感覚としては上と同じです。 ※運動エネルギーが 1/2・mv^2 ではなく、内積 1/2・m(v・v)、仕事が ∫Fvdt=∫Fdx ではなく ∫(F・v)dt=∫F・dx という内積に変わりますが。
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No.7576 - 2009/08/22(Sat) 10:54:28 |
| ☆ エネルギー保存則が有効な問題 / angel | | | 例題として、エネルギー保存則が有効な問題を挙げてみます。 添付の図のように、質点が円状のループコースターを駆け上る条件を求めます。 ※もしループ半径が大きすぎると、質点は途中で失速してループから外れて宙を舞い落っこちるか、逆走するかしてしまい、ループを完全には回れません。
なお、前提知識として、
円運動を行う物体に働く力(合力)の内、円の中心方向の成分 ( 向心力 ) は、mv^2/r となる ( m は質量、v は速度、r は円の半径 ) ※円の接線方向への力については触れていないこと、等速かどうかの条件がないことに注意。等速円運動なら接線方向の成分は 0 ですが、そうでないなら、接線方向への成分も出てきます。
が必要です。 なお、答えは r≦2h/5 となります ( つまり、ループの頂上で、元の高さの8割までしか上れない ) が、これを運動方程式から速度・位置の時間的な推移で考えようとするのは無茶だと分かるでしょう。
※図を添付し忘れたので、改めて付け直しました
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No.7577 - 2009/08/22(Sat) 12:11:49 |
| ☆ どちらの方法でも解ける問題 / angel | | | 更に補足です。 運動方程式を利用して解く方法でも、運動エネルギーに着目して解く方法でも、どちらでもいける問題もあります。 ※運動量保存も併用することも多いです
問: 水平な床の上に、十分に長い平らな板A ( 質量M )と、Aの上に物体B ( 質量m ) があり、A,B間の動摩擦係数はμとする。 今、Bに水平方向の初速Vを与えてAの上を滑らせ、しばらく置いた所、A,Bは一体となり同一速度で床の上を移動する状態となった。 この時、BがA上を動いた距離を求めよ。 なお、重力加速度はgであり、A,B間の摩擦以外の摩擦や空気抵抗等はないものとする。
答: MV^2/( 2μg(M+m) )
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No.7597 - 2009/08/23(Sun) 21:42:28 |
| ☆ 補足の補足 / BossF | | | もともと微分とは運動方程式を解くために作られたようなものなのです
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No.7602 - 2009/08/24(Mon) 04:07:15 |
| ☆ Re: 物理についてです / ハオ | | | 返事が遅くなって大変申し訳ありません。 僕の頭が足りないのか上記の問題がさっぱり分かりません。それで少し悩んでいました。 もし宜しければ解説をお願いしたいです。 数々の補足説明本当に感謝いたします。 これからの問題に接する際に問題へのぶつかり方を学ばせて頂きました。
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No.7676 - 2009/08/29(Sat) 12:26:56 |
| ☆ ループコースター問題解説 / angel | | | > 返事が遅くなって大変申し訳ありません。 いえいえ。私は回答を待っている側ではないので、特に気になさらずに。 後、ハオさんがどこまで習っているか、あまり考えずに書いていますので、やっていない範囲に踏み込んでいる可能性はありますが、ご容赦下さい。
では、ループコースターの問題について。
質点がループの頂点に達した状態を考えます。 (問題に添付していた図を参照してください)
半径rの円運動がまだ続いている、という条件から、円の中心方向の力 ( ちょうど下向きの力 ) を考えると、 mv^2/r = mg + F …(1) ※vは、頂点での質点の速度、F は床からの下向きの垂直抗力 ( F≧0 … 図ではF>0と書いていましたが、F≧0 の間違いです )
一方、エネルギー保存則より mgh = 1/2・mv^2 + mg・(2r) …(2) ※左辺は初期状態 ( 高さ h、速度 0 )、右辺は頂点での状態 ( 高さ 2r、速度 v )
(1)×r + (2)×2 より 2mgh = 5mgr + 2rF これとF≧0より 2mgh≧5mgr すなわち r≦2h/5
なお、今回の問題では、質点が床に束縛されていないので、元の高さまで登れない、という状況が発生しています。 モノレールのように床から離れない状況であれば、ちゃんと元の高さまで登れます。 ※その場合、頂点での F はマイナスになっている ( つまり、床が質点を引き上げている ) ことに注意
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No.7679 - 2009/08/29(Sat) 22:32:04 |
| ☆ ループコースターおまけ / angel | | | ループコースターの問題でおまけです。 > ※もしループ半径が大きすぎると、質点は途中で失速してループから外れて宙を舞い落っこちるか、逆走するかしてしまい、ループを完全には回れません。
これについても考えてみましょう。 つまり、「ループ半径が大きすぎる場合、質点はどこでループから外れるのか」裏を返せば、「どこまでループに沿って登るのか」です。 なお、前提として r<h とします。( でないと、宙返り部分まで登れないため )
質点の高さを x ( r≦x≦2r ) とし、上の解答のように方程式をたてると、 mv^2/r = mgcosθ + F mgh = 1/2・mv^2 + mgx x = r + rcosθ となります。( 図も参照のこと ) これを解いて、F≧0 を組み合わせると、 x≦(2h+r)/3 が解として求められます。 ※丁度 r=2h/5 つまり h=5r/2 であれば、x≦2r となるため、ぎりぎりループを登りきれることが分かります。つまり、上の解答と矛盾しない結果になっています。
なお、2h/5<r<h の状況であれば、高さ (2h+r)/3 でループから離れることになります。 しかしながら、まだ上向きの速度は持っているため、質点はループから離れつつも、放物線を描きながら、少しだけ空中を上昇してから落下していくことになります。
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No.7680 - 2009/08/29(Sat) 23:32:04 |
| ☆ 追加問題の解説 - 1/3 / angel | | | 追加問題についてです。 解き方は、主に4通り ( 運動方程式/エネルギーの2通り×床基準/板A基準の2通り ) 考えられます。
どの解き方でも共通するところから行きます。
水平方向の位置については、初速Vを与えた向きを正とし、 求める答 ( BがA上を移動した距離 ) を x BがA上を移動している間の時間を T その間、Aが移動した距離を L と置く。( L,T は解法によっては使いません )
BがA上を移動している間の、運動に関わる力を挙げると、 (1) 地球がBを引っ張る重力:下向き mg (2) AがBを支える(垂直)抗力:上向き mg (3) BがAを押す(垂直)抗力:下向き mg ( (2)の反作用 ) (4) AがBを引っ張る摩擦:水平方向 -μmg (5) BがAを押す摩擦:水平方向 μmg ( (4)の反作用 ) (6) 地球がAを引っ張る重力:下向き Mg (7) 床がAを押す(垂直)抗力:上向き mg+Mg (8) Aが床を押す(垂直)抗力:下向き mg+Mg ( (7)の反作用 ) となり、A,Bそれぞれに関して、鉛直方向の力は釣り合っている
それぞれの解法については、次以降で
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No.7687 - 2009/08/30(Sun) 09:02:42 |
| ☆ 追加問題の解説 - 2/3 / angel | | | 運動方程式を主とした解法を挙げます
1. 運動方程式-床基準 A,Bの加速度を a[A], a[B] と置くと、それぞれの水平方向の運動方程式は、 A:Ma[A]=μmg これより、a[A]=μmg/M B:ma[B]=-μmg これより、a[B]=-μg Aは初速0、加速度a[A]、Bは初速V、加速度a[B]の等加速度運動を行う。 Tだけ時間が経ったとき、A,Bの速度が等しくなるため、 a[A]T = V + a[B]T これより T=V/(a[A]-a[B]) その時の移動距離は、 A:L=1/2・a[A]T^2 B:L+x=VT+1/2・a[B]T^2 ゆえに、 x = VT + 1/2・a[B]T^2 - 1/2・a[A]T^2 = V^2/( 2(a[A]-a[B]) ) = MV^2/( 2μ(M+m)g )
2. 運動方程式-板基準 Aの床に対する加速度をa[A]と置くと、水平方向の運動方程式は、 A:Ma[A]=μmg これより、a[A]=μmg/M Aは加速度a[A]の等加速度運動を行う。 これより、板Aを基準とした場合、非慣性系でありBには -ma[A] の慣性力が働く。 BのAに対する加速度をa[B]と置くと、Bの水平方向の運動方程式は、 B(A基準):ma[B]=-μmg-ma[A] これより a[B]=-μg-a[A] Bは初速V、加速度 a[B] の等加速度運動を行う。 Tだけ時間が経った時、BのAに対する速度は0となるため、 V + a[B]T = 0 これより T = -V/a[B] その時の移動距離は、 x = VT + 1/2・a[B]T^2 = -1/2・V^2/a[B] = 1/2・V^2/(μg+a[A]) = MV^2/( 2μ(M+m)g )
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No.7688 - 2009/08/30(Sun) 09:04:02 |
| ☆ 追加問題の解説 - 3/3 / angel | | | 最後に運動エネルギーと仕事に着目した解法です
3. 運動エネルギー - 床基準 A,Bに関して、水平方向の外力はないため、運動量は保存される。 A,Bが一体となって動く時の速度を V' とすると、 mV = (M+m)V' これより、V'=mV/(M+m) これより、A,Bの運動エネルギー合計の変化?僞は、 ?僞 = 1/2・(M+m)V'^2 - 1/2・mV^2 = -MmV^2/( 2(M+m) ) 一方、A,Bが受けた仕事は、 A:μmgL B:-μmg(L+x) よって、 ?僞 = μmgL - μmg(L+x) -MmV^2/( 2(M+m) ) = -μmgx x = MV^2/( 2μ(M+m)g )
4. 運動エネルギー - 板基準 Aの床に対する加速度をa[A]と置くと、水平方向の運動方程式は、 A:Ma[A]=μmg これより、a[A]=μmg/M Aは加速度a[A]の等加速度運動を行う。 これより、板Aを基準とした場合、非慣性系でありBには -ma[A] の慣性力が働く。
A,Bが一体となって動く時、BのAに対する速度は0のため、Bの運動エネルギーの変化?僞は、 ?僞 = -1/2・mV^2 一方、Bが受けた仕事は、 B:m(-μmg-m[A])x よって、 ?僞 = m(-μmg-m[A])x -1/2・mV^2 = m(-μmg-μmg/M)x x = MV^2/(2μ(M+m)g)
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No.7689 - 2009/08/30(Sun) 09:07:12 |
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